RUN ランのレビュー・感想・評価
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極限状態の中に研ぎ澄まされたサスペンスの魅力が光る
チャガンティ監督の前作「search」で革命的なサスペンス構築力と新時代の映像文法に酔いしれた自分にとって、次なる「RUN」はことのほか意表をついた作品に思えた。きっと一般的な監督ならば最初に「RUN」のような作品で自らのシンプルながら強靭な感覚や才能を世に知らしめつつ、次の段階へ向かうのだろう。だがチャガンティの場合、第一歩で想像もつかない次元に足跡を残し、二歩目で極めてオーソドックスなところに着地した。よく言われるようにヒッチコックをはじめとする伝統的なサスペンスの語り口に則しつつ、それでいて主人公が受け身ではなく能動的に呪縛から解放されたいと願うとき、破格の意志の力が放出される。と同時に、行動の制約、視点の制限という意味では前作を踏襲する部分もあり、物語と状況がよりナチュラルに馴染んでいる進化ぶりが伺えたりも。できれば前情報をいっさい入れず、ニュートラルな視点で楽しみたい作品である。
ヒッチコック、スティーヴン・キングを継ぐサスペンスの語り手
2018年の「search サーチ」で鮮烈な長編監督デビューを果たしたアニーシュ・チャガンティによる第2作。前作はPCやスマホの画面上だけでドラマが進行するという映像スタイルが大いに注目を集めたが、ストーリー自体の面白さがあったからこそ映画もヒットした。そんなチャガンティ監督が、今回は映像的ギミックに頼らず、オーソドックスなストーリーテリングに徹して上質のサスペンスを楽しませてくれる。
冒頭、ダイアン(サラ・ポールソン)が病院で未熟児の娘を出産。画面が暗転して、テキストで不整脈、ぜんそく、糖尿病などの病状が順に説明される。最後の項目の麻痺では、「筋肉機能の不全により、体を動かせなくなる。走ることができない」と記される(英文のテキストでは文末の"run."だけが残って他が消え、これがタイトル表示にもなっている)。
これらの症例は、ダイアンの出産から17年後、現在のクロエ(キーラ・アレン)が抱える病状であることが、開始5分過ぎあたりでクロエの視点に切り替わってから明らかになる。クロエは車椅子生活を余儀なくされているが、ホームスクールの教師でもあるダイアンの指導により高校生レベルの学力を身につけ、受験した地元大学からの合格通知を心待ちにしている。
一見、生まれつき多くの病気と障害を抱えながらも明るく前向きに生きる十代の娘と、そんな娘の生活を献身的に支える愛情に満ちた母の美しい親子関係のようだ。だが、母親がキッチンに買い物袋を置いて離れたすきに、クロエが袋の中から見慣れない錠剤を見つけたことで、彼女の中にダイアンに対する疑念が芽生え、それが次第に大きくなっていく。
殺人犯や精神異常者といった映画の悪役に狙われる主人公に身体的なハンディキャップを持たせることは、サスペンスを盛り上げる手法としてたびたび使われてきた。ヒッチコックの「裏窓」(54)や英国の傑作サスペンス「恐怖」(61)などの主人公は本作同様車椅子を使っていたし、オードリー・ヘプバーン主演の「暗くなるまで待って」(67)以降は、盲目のヒロインが命を狙われるサスペンスも何本か作られた。
歪んだ愛情、監禁、身体的ダメージという要素でチャガンティ監督が手本にしたのは、スティーヴン・キング原作、ロブ・ライナー監督の「ミザリー」だ。クロエが緑のカプセル薬のことを尋ねた薬剤師の名前はキャシー・ベイツ。「ミザリー」の主演女優の名を拝借し、オマージュを表している。
さて、以降は本格的なネタバレになることをあらかじめ申し上げておく。
おそらく他のレビューで“毒親”や「代理ミュンヒハウゼン症候群」(これに代わる「他者に負わせる作為症=FDIA」という症名が近年米国などで推奨されている)という用語を目にすることも多いだろうが、微妙にずれている気がする。鑑賞済みの方ならおわかりのように、クロエはダイアンの実の娘ではない。真の娘は出生後すぐに死亡し、ダイアンが同じ産院にいた他人の乳児を誘拐して育ててきた。幼少期は健常者だったクロエは、ダイアンが与えてきた薬物によって下肢の麻痺をはじめとするさまざまな障害を持つようになった。FDIAの主な動機は、他人からの注目や評価、経済的な利得だという。これらもダイアンには当てはまらない。
ダイアンとクロエの歪んだ危険な関係の本質は、端的に言えば、虐待の連鎖だ。他人の子を誘拐したこと自体は、出産直後に娘を亡くした悲しみと喪失感を埋める代償行動だったろう。しかし我が子として育てていくうち、クロエが健常のまま大きくなったら、いずれ自立して手の届かないところへ行ってしまうことに気づく。それを防ぐには、クロエの体を薬物で弱らせて、庇護する親と庇護される娘の関係を永続させればいい。
ダイアンがシャワーを浴びるシーンで、背中に古い切り傷があった。また、YouTubeで視聴可能な削除されたシーンでは、ダイアンが7歳の時に目の前で母親が自殺したこと、母親もまたダイアンを虐待していたことが新聞記事で明かされる。つまり、ダイアンの背中の傷は幼少期に母親からつけられたもの。ダイアンがクロエをいつまでも手元に置いておきたいのは、虐待する対象を欲しているからだ。
そう考えると、ラストの30秒は、クロエの単なる復讐ではない可能性が高くなる。クロエもまた、虐待する対象を欲しているのだとしたら。いつかダイアンに薬を飲ませることができなくなったとき、その矛先は我が子に向かうのではないか――そんな恐ろしい未来を予感させる。虐待の連鎖はどこまでも続く。
母の愛からは逃れられない。
原題
Run
感想
『search/サーチ』の監督・製作チームが新たに描くサイコ・スリラー!
母親に疑念を抱き出した車椅子の娘…
そして豹変毒母の狂気が暴走する。
さらに明らかになる恐ろしい真実とは──。
90分と観やすく、ハラハラドキドキ面白かったです。
母親がイカれてますね、娘は美人で部屋から脱出などは頑張れ頑張れと応援しちゃってました笑
屋根を這っていくのはヒヤヒヤしました。
母親の表情は怖かったし、娘の車椅子捌きは凄かったです。
ラストは娘の復讐ですね…怖いです…
※大好きなママ お薬の時間よ
サイコスリラーが苦手な人にも十分お勧めできるのでは
個人的にサイコスリラーはあまり得意ではないが、本作には一気に引き込まれた。
その理由としては、ストーリーや配役がとてもシンプルに構成されていてわかりやすいし、目を背けたくなるような残酷なシーンも最小限に抑えられているように思う。しかも、不謹慎に捉えられると困るが、ドラッグストアでのシーン等々ところどころで、これって笑わせようとしているのでは?と思えるほどコミカルに感じてしまうシーンすら結構盛り込まれていて、ハラハラドキドキしながらも深く落ち込むことなく観進められる。
とにかく、娘のネバー・ギブアップ的大奮闘もすごかったし、母親のサイコぶりとその表裏一体にある母性からの叫び「うちへ帰るの!」も場違いなだけに迫力あり、主演女優2人の鬼気迫る演技の攻防戦が本作の最大の観どころだろう。
「UNIVERSITY OF WASHINGTON BE BOUNDLESS 」これも個人的には名シーンに挙げたい。
少し疲れる。
物語が進むに連れて核が見えなくなる。
言いたい事、中心はどこなんだ?と迷う。
ヒステリックな演技に崩れ去るものを感じ
加えて脅かそうとする音のオンパレード!
怖いのはその音の方だったりする。
演出にも撮影にも工夫は無い。
後半になって真実が明らかになるが
そこまでの散漫な展開に疲れ果てていた。
丁寧さに欠ける作り方の問題かと思う。
最悪では無いが、上は遠い。
※
ハラハラする
何も知らずに見たけど面白かった
何回逃げても追ってくる母親が怖い
最後あんなことした母親に笑顔で会いに行くのすごいと思ったけどやっぱそうなるよね〜(^^;;
途中で出てくる女性の医者がsearchの主人公の亡くなった奥さん役やってた?って思ったらやっぱりsearchの監督の作品だった。
そう言われると話の展開とか雰囲気とか音楽とかが似てる気もする。
あんた何こうて来たん?わかるやろ!
だいたい一人で買い物行かしたら
なにしでかすかわからんやろうが
だいたい虐待親は自分が悪もんにならんよう
変に慎重になるが
ま、アメの親はこんなもんかしらんが。
ありきたりだが面白い作品です。
60点
アレックスシネマ大津 20210623
最後の展開に不満
鑑賞後の気持ち
愛という感情の持つ狂気を表現したホラー映画。という風にしたかったのだろうが、愛は相手を思う気持ちからくる感情なので、この映画で表現されているのは愛ではない。親が子に対して持つ「勝手な希望、勝手な夢、勝手な理想」の化け物をこの母親で表現したのならとてもよくできた作品だったと思う。最後の展開以外は。
ホラー映画は怖いものと怖がるものがあって初めて成立すると思う。この映画のほとんどのシーンではその関係性が成り立っているが、最後の「お薬の時間よ」という娘の狂気じみたセリフのせいでよくわからなくなってしまった。憎い母親擬きに心が囚われてしまい依存してしまった悲しい娘を演出するなら、最後のセリフはいらなかった。
鑑賞後の心の変化
愛は相手を想う気持ち。そこに一切の自分の感情を含めてはいけない。
無償の愛という言葉はおかしな言葉。愛ははなから見返りを求めるものではない。
鑑賞後の行動の変化
愛するという言葉を軽々しく使わない。
好きなシーン
家から脱出して逃げてるシーンのハラハラ感は好き
嫌いなシーン
娘の「お薬の時間よ」
最後までハラハラした
本当のご両親には会えたのか…?
あの母親が、あんな毒親になってしまった理由は…?背中の傷は…?
描ききれておらず気になる部分はあったけど、なかなかスリルがありハラハラさせられました。
娘に障害はあれど仲睦まじく暮らす母子。進学を夢見る娘だが待ち望む大...
娘に障害はあれど仲睦まじく暮らす母子。進学を夢見る娘だが待ち望む大学からの通知がなかなか来ない。母に疑問を持つ娘。
あの優しい母がなぜ?観客も主人公の気持ちを追体験しながら見ることに。
なるほどねー。ラスト、なんだその下手くそな射撃は。7年後のオチのためでした(笑)
まずまず楽しめる。尺が丁度いい(笑笑)
色々と突っ込み所の多い作品。
アメリカで実際に起こった事件を元ネタにしたサイコサスペンス。前知識なしに見ましたが、はっきり言って期待ハズレ。
「障碍を持った娘の世話をしている母親」+「サイコサスペンス」という設定から、「まさか"代理ミュンヒハウゼン症候群"ネタじゃそのまんま過ぎるから、どうその辺を覆して来るかな〜」と期待していたら、そのまんまで逆にビックリしました(笑)。
この手の「何が真実か」に焦点を当てたサスペンスやミステリーは、ラスト付近まで真相が分からないように脚本構成に工夫が必要なはずですが、中盤を過ぎた辺りで(近所の知り合いの男を〇した時から)、やっぱり母親が狂っている事があっさり確定してしまい、そのまま何の工夫もドンデン返しも無いまま終了。
とにかくメイン登場人物が二人しかいないため、展開やオチの予想が容易についてしまうのがマイナス要素。脱出するシーンとかにしても、クロエの電気工学?の知識が「窓を割る」くらいしか活かされておらず、車椅子のハンデを知識で覆すような"知的"な抵抗シーンが少ないのが物足りない。
"新生児の誘拐オチ"も子供なら誰でも良いという感覚にはまったく感情移入も出来ません(母親が新生児の取り違いを知らなかった、とかならまだアリだけど)。母親のダイアンの過去についてもちょっと背中の傷を思わせ振りに見せただけで、視聴者の想像に100%丸投げ。そのためこちらも「ダイアンも精神を病んでいたのだろう」という、何ともありきたりな動機を想像するしかなく、虐待に至った過程に感情移入が出来なくなるのです。
あとやはり他の人のツッコミにも多いように、私も終盤に監禁された地下室に過去の「誘拐事件の新聞記事」や「クロエの死亡診断書」などの書類がご丁寧に保管してあったのはさすがに呆れた(笑)。あの母親にとっては絶対に思い出したくない(認めたくない)記憶であり、致命的な証拠でもあるはずなのに、どうしてあんなものを保管してあるのか?あれほどサイコパスなら過去に纏わる書類などはすべて処分したり、自分の記憶すら改ざんしていそうなものなのに、わざわざ「クロエに見つけられやすい場所」+「資料に名前まで書いて保管してある」という、ご都合主義的な展開に失笑してしまった。
そもそも病院から新生児を誘拐して自分の子供として育てるのも無理があるだろ。病院ならあちこち監視カメラもあるでしょうし、しかも同じ日に子供を亡くした母親まで消えたら、「ひょっとしてあの人が誘拐したのかも…」と真っ先に容疑者候補でしょう。当然、出産日のダイアンの個人情報もあるでしょうから(入院した地点ではまだ子供を亡くしていないのだから嘘の情報を書く必然性がない)、よく今まで警察に怪しまれずに育てられたなと気になってしまいます。
ラストにしても、結局、歩けるようにもなってないし、せっかく自由の身になったんだから、何年も陰湿な仕返しなんかしてないで、もっと前向きに生きるハッピーエンドを見せて欲しかった。オマケにクロエ自身が子供に虐待をしているような発言をする事で、安っぽいホラーみたいなエンディングになっていて、返って「虐待はいけない」というメッセージ性が伝わりにくくなっている気がしました。クロエ役の女優さんの頑張りに★1つ追加です。
秀逸なサスペンス
オチも綺麗で良かったけれど「お薬の時間よ」復讐を匂わせるのよりも、満身創痍ヨレヨレになった悪役には蛇足だったかなと。
地下室で毒物で殺害しようとしてたのに、いざクロエが服毒自殺したら救急に運びこぶのがハテナでした。
怖い、怖い映画ですね!
クロエ役のキーラ・アレン、車いす操作がうますぎるなー
と思っていたら、実生活でも車いす生活と別記事で読んだ。
さすが、リアリティが強め!
どこかで観たような映画、うーん、「ミザリー」か!
スティーブン・キング好きとしては、ホラーの王道テンプレート
(話の通じない人 VS 真面目な人・優しい人)の構造が
気持ちいいんだろうなと。
とはいえ、パクリモノではなく、構造的には似ているけれど
別物映画。☆4.5ですよ!。90分程度なので、サクッと観られるのですが
後半、ここで終わったな、ハイ!エンドロール、と思いきゃ、なんか続く、まだ続く。
目が離せないって、こういう映画なのですね。
「怖い、怖い映画ですね!」とあの方がご存命なら紹介冒頭でおっしゃっているでしょう。
高評価の先入観があるとガッカリ。
確かにサクッと観れるが、スリラーものの典型パターンをなぞり過ぎて既視感。
展開は読めているので、せめて背景や過去を丁寧に作り込んでほしかった。
目先のハラハラと、勢いに任せて終了。
細かいことを突っ込むどころか考えることすら野暮と思わせるチープさ。
そういうものだと思えば暇つぶしに★3ってとこだが…
Netflixでラチェッドを怪演するサラ・ポールソンだったから観たし見応えはあったけど…
あるある過ぎるベタベタなもどかしい演出が好みなら楽しめる映画。
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