劇場公開日 2021年4月2日

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「つまらなかった観客の雑感 + 日本のこと」サンドラの小さな家 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0つまらなかった観客の雑感 + 日本のこと

2021年4月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

真面目でハートウォーミングな作品ながらも、ビターな風味が入っているところは良かった。
しかし、「DVからの逃避者が自分で家を建てました」というのは、因果関係からしても、居場所を特定されるリスクからしても、リアリティに乏しい無理筋な展開に思われる。(だから映画になるのだが。)
また、DVそのものを扱った作品ではないし、DV男から逃げ出した後の話としても、映画「ジュリアン」ほど興味深い作品ではなかった。
不幸なDVと幸福なDIYという、全く無関係なテーマを、ショッキングなラストで結合して見せた着想がすべての映画だと思う。

他にも不自然なところがある。
司法の場で、顔のアザや末娘のパニックを、初めから訴えなかったのは、なぜなのか?
裁判官が、サンドラの告白で態度を変えた(ように見えた)ことも奇妙だ。そんな情緒的な場所なのか?
エンタメとして成立させるために、“逆転劇”を仕組んだとしか思えず、興ざめした。
エンタメにしたいのなら、初めはDVのフラッシュバック映像は出さず、次第に事実が明らかになっていくような法廷サスペンス形式にすべきではないか?

アイルランドは日本と異なり、とりあえず双方の言い分を公平に扱うシステムになっているようだ。
一方、日本では、将棋棋士の橋本八段が、妻が子供を連れて出て行ったことで、廃業に追い込まれた。
日本の裁判所は「母親かわいそう」という前提しかなく、母親の証言を鵜呑みにして、一方的な「連れ去り」を許容しているとのことである。
本作品では、観客は真実を知っているから良いが、一般的には、第三者の勝手な臆断は慎まなければならないだろう。

Imperator