ハイゼ家 百年

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ハイゼ家 百年

解説

旧東ドイツ出身の映画作家トーマス・ハイゼが、自身の家族を通して激動のドイツ100年史に迫ったドキュメンタリー。ハイゼ家が19世紀後半から保管してきた日記、手紙、写真、音声記録などの遺品を紹介しながら、ハイゼ監督自らのモノローグで3時間38分かけて語る。2度の大戦、ナチスの台頭、ホロコーストの記憶、冷戦による東西分断、秘密警察シュタージによる支配、ベルリンの壁崩壊、そして冷戦後も続く国家による暴力に希望を打ち砕かれる人々。激動の時代に翻弄されたハイゼ家の壮絶な歴史を振り返る。第69回ベルリン国際映画祭でフォーラム部門の最高賞にあたるカリガリ賞を受賞した。

2019年製作/218分/ドイツ・オーストリア合作
原題:Heimat ist ein Raum aus Zeit
配給:サニーフィルム
劇場公開日:2021年4月24日

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(C)ma.ja.de filmproduktions / Thomas Heise

映画レビュー

3.5ドイツの葛藤

2021年10月2日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

旧東ドイツ出身のトーマス・ハイゼが、自身の家族を通してドイツの近年約100年の歴史について語る全5章で構成されるドキュメンタリー作品。
ハイゼ家で19世紀から保管されてた日記、手紙、作文、メモ、写真、などの遺品を紹介しながら、ハイゼ監督自らの視点で218分語るもの。第一次、第二次と2度の大戦の様子、ナチスの台頭、ホロコーストの記憶、冷戦による東西分断、秘密警察シュタージによる支配、ベルリンの壁崩壊、そして冷戦後も国家により希望を打ち砕かれる旧東ドイツの人々。移民排除の実体、など激動の100年をハイゼ家の歴史から振り返るものとなっている。
前半はトーマスの母、ロージーの恋愛物語などをメインに置き、後半は第二次世界大戦後の東ドイツの惨状に趣きを置いたように思った。ドキュメンタリーなので手紙や写真などを写す場面も多いが、現代ドイツの鉄道や道路などのあまり関係のない風景の動画をバックに字幕を読むスタイルで結構疲れた。
ドイツは東西冷戦後も統一ドイツに向けての大変な苦労を経験しているんだと改めて知ることが出来た。
原題は「家とは時間で構成された空間」って意味みたいだけど、確かにそうだなって思った。
長くてしんどいけど、鑑賞できて良かった。

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りあの

5.0映画に入り込みすぎて、ネガティブの尾を引かぬよう注意

2021年6月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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国立大学国際ビジネス研究會

4.5ドイツ史の抱える業を語る一家の歴史

2021年5月2日
iPhoneアプリから投稿

東独のインテリ階級で育った監督の三代のファミリー・ヒストリーだが、全編が家族や友人の手紙や日記、記事やシュタージの報告書などの朗読で、思い出写真や所縁の地の現況の他は現在の東独の鉄道風景が流れるだけ、朗読ドキュメンタリーとでもいうべき異色の作品だが、一家の歴史がドイツ史そのものだった。
祖母がユダヤ人だったため、祖父は教職を追われ、祖母の実家はみな強制収容所へ。戦後の東独で大学教授の父は反体制文化人の糾弾に加わらず、職を解かれ、家族はシュタージの監視下に置かれる。しかし、気骨ある知識人の意地を見せてくれるのは、この映画の朗読以外の唯一の音声である父とミュラーの対話の録音で、これが素晴らしく、東独の体制下で読むブレヒトのアクチュアリティを語っていて、これを聞くとブレヒトを読みたくなる。
ナチスと東独の体制に苦しんだ彼らが冷戦後の市場優先の世界を快く思っていない屈折は理解できる。東西の格差が埋まらぬまま失業者の若者がネオナチや極右に流れていくのを見ても彼らはそこにドイツの抱えた業を見る。冷戦終結直後に反体制作家として脚光を浴びたクリスタ・ヴォルフが後でシュタージへの協力を批判されても、非協力がいかに難しかったかを知る監督の母は優しく慰める手紙を書いていたのが印象的だった。

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Boncompagno da Tacaoca

3.0前半だけ観て帰っても差し支えなし

2021年4月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

分かりづらい映画だ。
基本的には、手紙や日記をはじめ、履歴書や作文など、一次資料をひたすら朗読することで進められる。
しかし、内容をフォローする解説は一切ない。
観客は、そこから歴史の反映を読み取ったり、ファミリーヒストリーを垣間見ることを強いられる。

スクリーンには、資料やその時々の写真が映されることもあるが、朗読内容とは全く関係ない映像も多い。
なぜだか電車に執着する。車窓からの眺めや、貨物列車が通過するだけの映像が多い。

前半の第1章から第2章の途中までは、興味深い。
・祖父ヴィルヘルムとユダヤ人の祖母エディトとの“混血婚”、および、祖父への迫害の話
・1941~1942年にかけての、祖母エディトのウィーンの実家のホロコーストの悲劇
・母ロージーの、1945年2月のドレスデン爆撃から5月の収容所にかけての話
は、見応えがある。

ファミリーヒストリーを語ることが、おのずと歴史の証言にもなっている、という理想的な展開だ。
特に、ホロコーストを訴えるたくさんの手紙は、早くも訪れる本作のクライマックスだと思う。
この前半で終わっても良かったのはないか?

第2章の終わりからは、全く個人的で、平凡な話の連続だ。特に第5章は、「ハイゼ家 百年」からも話が外れてくる。
登場人物が何者なのか分からないこともある。
公式HPの「モンタージュ」と言うのは褒めすぎで、「百年」にこだわったゆえの、断片の無理筋な“寄せ集め”と言うべきだろう。

きちんとした歴史の証言となっているのは、
・1960年代半ばの、ドイツ社会主義統一党からの父ウォルフガングへの弾圧の話
くらいだろう。
1948年から約5年にわたる、母ロージーの男関係の下りは退屈だ。監督としては、母の性愛は自分の出生を巡るスリリングな展開(ウドと結婚していれば、監督はこの世にいない)なのだろうが、いかんせん長すぎる。ウドの書く手紙の内容にも、特筆すべきものは何もない。

説明を入れないやり方は、ドキュメンタリーの一つの手法として尊重するが、「くどいほど説明的に物語る(公式HP)」方が、自分には好ましい。
ドイツ人なら分かるかもしれないし、“皮膚感覚”として共感できるところも多いだろう。しかし、一般にはドイツ通でなければ理解困難だ。
「共産主義の敗北を認められないロージー」など、どこで語られたのか、自分はつかめなかったところが多かった。

鑑賞時間が取れなければ、前半が終わった後の休憩時間中に帰っても、差し支えない気がする作品である。

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Imperator