林檎とポラロイドのレビュー・感想・評価
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喪失と再生
突然記憶喪失になる病気が流行する世の中で、ある日突然記憶を無くした男の話。
昼間からお出かけし花を買い、夕刻バスに乗って居眠りしたら、ここはどこ?私はだ~れ?となり病院に連れて来られた男が、記憶回復をあきらめ新しい自分になる人生学習プログラムを受けることになり巻き起こるストーリー。
プログラムのミッションを繰り返しながら人生の再構築を始めるのか?と思いきや、一人暮らしを始めて早々の果物屋で、あれ!?そういうこと!?
なるほど、彼のメンタルはどこから来てどこを目指し、どうなっていくのかというのを観る作品ですね。
映画館で出会ったパイセンとの流れは何を期待したのか…トイレのヤツの真相を知ったとは言え、何で選ばれたのかまでは考えが及ばない主人公。
まさかのイジイジした恋愛物語?
そしてプログラムでも目の当たりにする人の死…。
これは最後は吹っ切れたと読むのでOK?諦めたのか悟ったのか?
淡々とした空気感ではあるもののちょっとコミカルで、欧州映画特有の面白さはあったけれど、最後はもう一声欲しかったかな。
大半の鑑賞者は見たことを後悔する映画だと私は思う。
高評価も多いが、私は鑑賞して観たことを後悔した。もう、二度と観ないだろう。テレビ放映で無料なら見るかも。聞き慣れない言語だと思ったが、ギリシャ語だった。
描かれるのは、孤独な中年男の身辺雑記である。突然、記憶喪失になる奇病が蔓延する。主人公にこの病気が発病し、病院で治療することになる。記憶を取り戻すことは困難で、人生を再教育するプログラムが始まる。
記憶喪失になれば、通常ならば自分が何者なのか必死に探し求めるだろう。ところがこの主人公、淡々と再教育プログラムをこなすだけである。感情をあらわにしない。昔、住んでいたアパートで飼われていた犬に偶然、街中で出会いその名を呼ぶのだ。全ての記憶を喪失したわけではないようだ。けれど、犬の飼い主を辿れば、自分の身元が判明するのにその場から逃げるのである。
同病の女性から好意を持たれて、誘われているのに応じようしない。どうやら、主人公は過去の出来事を受け入れることが出来ず、現実から逃避しているようだ。最後におそらく妻の墓を訪れたことから、妻の死を受け止められず、現実逃避する現代人の孤独な魂を描いた映画だとわかる。感情を喪失したのもそれが原因だろう。
オーブンリールのテープレコーダやカセットテープレコーダーが使われている。1970年代までは利用されていた。当時のギリシャは軍事独裁政権だっと思う。閉塞感から奇病が流行ったかもしれない。
とにかく、友人には勧めない映画だ。
結局あのプログラムは間違ったものではなかったということか。
おそらく(奥さんか恋人かわからないが)同居していた大切な人が亡くなり、その悲しみに耐えきれず、記憶喪失者用の治療である「新しい自分プログラム」なら記憶を消せないまでも上書きならできると考え、記憶喪失者のフリをしプログラムを体験することを思いつく。
だが与えられた課題でも人の死に触れることとなり、自ら途中でプログラムを中断し、元の生活へ戻るといったお話。
一見すると難しそうな映画だが、少し時間を置けば誰も皆同じような考えに行き着くという逆にわかりやすい話だと思う。
チラシの説明では、ある日バスの中で記憶を無くした・・・とあったような気がしたが、実際映画ではまだ記憶があった状態から始まるので、鑑賞後にその場面を振り返ってみても頭をぶつけたりなどうっすらとしたヒントのようなものが見て取れるが、林檎は物忘れを防ぐと聞いてオレンジを買ったり、女性と関係を持たなくてはならない課題を避けたことなどからも、本当は忘れたい過去があり、特定の女性への思いのようなものがまだ残っており、実際は記憶がしっかりとあるということがわかる。
自宅に戻り部屋に日差しを取り込み、改めて記憶に良いと言われる林檎を食べるシーンにはグッと来た。
生きている限り別れ(死別)というものは避けて通れないことを改めて知り、悲しい過去も全て受け止める覚悟を決めたことで、ほんの少しだけ前を向いて生きていこうとする意思が伝わったからだ。
そういった意味ではこの主人公にとって「新しい自分プログラム」を実践したことはよかったのだと思う。
多くを語らずに映像で思考に訴える大人の映画だと思う。
エモくて、可愛らしくて、重〜い…
人々が記憶を失ってしまう奇病が頻発する世界で、新しい自分を見つけるプログラムに参加する男の物語。
本当に記憶を失くしたのか、過去を忘れたいだけなのか…
何だか物悲しくて重い話のはずが、この「新しい自分プログラム」がシュールかつ馬鹿馬鹿しくて、とってもコミカル 笑
絶妙に丈の短いジーパンや、仮装パーティーに思いの外完成度の高い宇宙飛行士姿で登場する主人公などなど、敢えての外し方がとてもチャーミングだし面白い 笑
エモくて可愛らしくて重い。新感覚な良作!
色々な見方ができる映画かな。上映館は少ないけど、今週は対抗以上。
今年67本目(合計340本目/今月(2022年3月度)9本目)。
★ 「ポラロイド」とは、1930年代にできた、今のデジタルカメラの前身となるような非常に超初期のころのカメラ(インスタントカメラ一般)をさす名詞のことです。
記憶喪失になった男性が、記憶を取り戻すのをやめて、むしろ新しい人生経験をしていく中で色々な方と関わっていく、という趣旨の映画。
「ポラロイド」(カメラ)は映画内でも利用方法は指示され、確かに今の日本ではほぼほぼ見ることはないですが、デジタルカメラ自体はあるので、推測は十分きく範囲です。
むしろ難しいのは「リンゴ」のほうで、「なぜに林檎なのか」、また、映画内では色々な林檎(色のこと。いわゆるブラッド系の色から、緑色に近い林檎まで、色々出ます)が出ます。林檎「それ自体」は、映画からある程度推測ができますが(人体の中で、MRIややレントゲンを撮ったとき、林檎のように見える場所は、どこでしょう?)、「色が何を意味するのか」はこれはなかなか難しいかな…という印象です(パンフレット購入前提?)。
また、この映画、見ていただくとわかりますが、実は時代背景が不明です。時代背景を推測するには、今でいえばスマホだのパソコンだのがあることから推測ができますが、これが推測できるものが「一切」登場しないので、いつの時代の話かも難しいです。逆に言えば、こういう「実験」は実際には倫理上できないので、「時代背景をぼかした、架空の世界の架空の実験」という見方、それがおそらく正しいのではないか…と思えます。
今週(11日の週)はどうしても、バットマンが超本命枠できて、対抗がサメの映画(名前忘れた…)というところですが、本映画も対抗以上にはなると思います(不穏当な表現・描写などありません)。ただ、おそらく大人の方(文系理系問わない。そもそも文系理系がどうこうという分類にできない。あえていえば、両方同時に求められている印象)が見て、やっと「そういう趣旨か」とはわかっても、小さい子には難しいかな…という印象です。
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(加点2.0) なかなか、特にギリシャ映画といった作品は元が取りにくい(そもそも、放映される映画館自体が少ない)中で、作られたこと、放映されたこと、また、ツイッター公式アカウントなどの情報発信が非常に丁寧な点は好感が持てますし、映画は「7番目の芸術」と言われるように、この「わかりにくい」映画を通じて「何を言わんとしているのか」を当てに行くというのも、また一つの考え方かな、と思います。
(減点0.4) ただ、やはり「リンゴ」「リンゴの色」が指す意味は本当にわかりにくいです。「リンゴ」が指すものが何かはだいたい想定ができますが「色まで」になると、ギリシャ文化(慣習・一般常識等)が前提にあるのかもしれません。ここまで来ると日本では情報収集がしづらいので、ここは何らか補足があっても良かったのでは…とも思えます。
(減点なし/参考) リンゴ・ブドウなど、一部の果物では「パツリン」というカビ毒が発生します(日本では、果汁で毒性が増すとされるため、リンゴジュースでは規制があります)。一方、「オレンジ」では発生しません(マイコトキシンの性質による)。そして「オレンジ」もこの映画の中ではちらっとだけ登場します。
このことも何らかのことを示唆するのでしょうか…(詳細不明)?
タイトルなし
東京国際映画祭 7日目鑑賞
当初、鑑賞予定には無かったんですが、評判の良さで急遽鑑賞。座席取れてよかった😌
テーマが独特なだけあってか、展開も独特。
記憶喪失と新しい自分プログラム。
なるほどリンゴの芯ね。
静かに進むなかで、悪魔のいけにえやら、バットマンとかニヤリとする演出。キャットウーマンのとこはついつい笑っちゃったけど自分だけだったみたい、笑ってたのw
医者の告知とか、随所にシュールな演出が光る。
音楽と絵のところも面白かったけど、
ちょっと恐くなった。あの音楽にはあの絵図らと考えるのは固定概念なのかも。
そして主人公のダンスがあまりにも上手で見いってしまった。
これは公開したらもう一度観たいなぁ。
🍎🍊
台詞や仕草が残した点が線になる・・・深い余韻を残す不思議な世界の物語
東京国際映画祭で鑑賞。舞台は突然記憶喪失となってしまう病気が当たり前になった世界。ある夜バスの中で居眠りしている間に記憶を失った男が救急車で精神病院に搬送される。所持品に身元を示すものは何もなく捜索願も出ていないため名前すら不明の男は14842と呼ばれ、病院で様々な検査を受ける。政府は急増する記憶喪失者をサポートするため、記憶を取り戻すのではなく通称”新しい人生”プログラムを施行、医師は14842にプログラムへの参加を打診する。アパートと生活に必要な資金は支給され、自転車に乗る、釣りをする、郊外までドライブするといった課題をこなし、写真で成果を記録することが日課の日々を送る中で14842の心の中で何かが動き始める。
本作、なかなか奇妙な作り。まず映像サイズがチリ映画の『NO』やポーランド映画の『COLD WAR』でも用いられた4:3のスタンダードサイズ。出てくるガジェットもオープンリールのテープデッキやカセットテープレコーダーにポラロイドのインスタントカメラといったレトロなもの。それらが一見普通の街に奇妙な歪みを添えています。与えられる課題はカセットテープで与えられる。少しずつ難易度が高くなる課題を主人公が困惑しながらこなす様には思わずクスッとしてしまいますが、街の背景には記憶をなくす人々や同じプログラムの参加者らしき人が映り込み、滑稽さと悲哀が綯い交ぜになっています。そして物語の中にポツンポツンと放り込まれる仕草や台詞が遺した疑問符に対する回答が暗示されるクライマックスが残す深い余韻が湖面の波紋のように静かに胸の内に響きます。
主人公が観に行く映画の音声、さりげない会話の中で言及される映画のプロットがさりげなくクイズのような役割を果たしていたりして、どちらも未見なのに正解した自分がちょっとだけ誇らしくなったりする映画愛にも溢れた作品、これは是非とも広く公開されて多くの人の目に触れて欲しい素晴らしい傑作です。
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