配信開始日 2021年11月25日

「編集で楽曲がズタズタ。音楽作品というよりはドキュメンタリー。」ザ・ビートルズ Get Back vongoleさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5編集で楽曲がズタズタ。音楽作品というよりはドキュメンタリー。

2022年1月19日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

大いに期待した映画で、映像がこんなにクリアに!!、こんなシーンが!!の連続で見入った一方で、音楽的に楽曲を"聴かせる"という意図が殆ど感じられない作品だった。

ドキュメンタリーとして事の詳細が分かり、それらは通説を覆すというより実際の映像で詳細を確認出来たという面もあったが、こうだったのかと思わせるシーンが多くあり大変興味深かった(尤もマニアックなファンでないとそれを延々観るのは厳しいのでは?とも感じるが)。実に行き当たりばったり度が凄い企画で、今の売れ線バンドならありえないだろうって感じで最終的にどうなるかは知ってるのにハラハラの連続であった。こんな状況で極めて短期間に数々の名曲を作り、ルーフトップコンサート並び最終日にLet it BeとLong Winding Roadをびしっと決めた4人の才能に改めて敬服する。エンジニア(というよりここではプロデューサーに近い)のグリン・ジョンズの活躍など基の70年の映画"Let It Be"では削除されていた周辺の人たちの仕事ぶり、バンド内外の交流、ミキシングルームの中などが見れた事、名曲がまさに生まれ発展してゆく様や、後に"アビーロード"やソロ作などで仕上がる曲が生まれる瞬間を見れた事も非常に良かった。

だがこんなに長時間なのにほぼ全編に渡り楽曲がズタズタに編集されてて楽曲を落ち着いて観れず実にイライラさせられた。楽曲の発展過程ならこの感じの編集でよいが、楽曲の完成形は確り見せて欲しかったのと、リハやウォームアップで演奏された様々な曲もある程度完奏してる場合は確り見せてほしかった。山場のRoof Top Concertも、周辺の状況を挿入しまくった事で演奏とそのシーンがズタズタで、かつ3アングルを1画面に入れてしまいそれぞれのシーンは小さくしか見れいなど大いに不満が残った。その点、基の映画"Let it Be"は確り曲を聴かせる構成を取っており、Roof Top Concertの周囲反応の様子も必要最低限だが十分伝わってきていた。またあちらの映画ではBesame Mucho、You Really Got a Hold On Meなんて興味深い曲の演奏を完奏で見せてくれてたりもするのである(これらの演奏シーンはこの"Get Back"では全くなし)。また極めて重要なシーンと楽曲の筈である最終日のTwo of Us、Let it BeとLong Winding Roadの扱いもなんとも酷いものだった。評判悪い面もある映画"Let it Be"だが私は当時のマイケル・リンゼイ・ホッグ監督はいい仕事をしたのだとも改めて感じてしまった。

彼らのグレイトさを知っているマニアックなビートルズファンとして、今回のは"ドキュメンタリー"としては非常に楽しめた。マニアックなビートルズファンは非常に多くいるのでこれもありかもしれない。しかし、まぁまぁビートルズを知ってるファン、ないしそれ以下の人たちには恐らく全編付き合うのは厳しいのではないかと感じる。この作品がビートルズの残された映像作品の最後の決定版になるだろうと思っていたのだが、結局、映画Let it Beのレストアと、それに完奏している楽曲を中心にした映像を追加したものを今後に期待する形となった。果たして将来それはあるのだろうか・・・。

以上、本作を2度観ての感想である。

vongole