劇場公開日 2020年12月11日

「ある意味で痛快な作品」#フォロー・ミー 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ある意味で痛快な作品

2020年12月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 ドッキリ番組があまり好きではない。かつては芸能人相手に過激なイタズラを仕掛ける「スタードッキリ㊙報告」というフジテレビの番組があって、現在ではTBSの「モニタリング」という素人を驚かせようとする番組がある。いずれの番組も見ていて不快である。
 どうして不快に思うのか。それはイタズラを仕掛ける側の心理がいじめっ子の心理とほぼ同じだからである。相手が反撃して来ないことを見越して、または反撃してきても簡単に撃退出来ると自負してイタズラを仕掛ける。ネタばらしにキョトンとした顔をするのを腹を抱えて笑う。
 ドッキリ番組がイタズラを仕掛ける相手が素人の場合は、どんな反応をするか予想がつかない。場合によっては手酷い暴力を振るうかもしれない。ヤクザや半グレの連中であれば、落とし前と称して多額の現金を要求してくるかもしれない。テレビ番組がそんなリスクを冒す筈もなく、いたずらを仕掛けるのは番組が期待する反応をしてくれる相手に限定しているのだろう。そこに製作者の傲慢さがあり、ドッキリ番組が好きではない理由もそこにある。

 本作品にも最後にキョトンとした顔をする登場人物がいる。呆然とすると言ってもいい。呆然としたのは誰か。世界的にSNS全盛の現在、思想も信条もなくて、ただ面白ければいい、いいね!やフォロワーが沢山つけばいいという動機で沢山の人が沢山の動画をアップしている。それで儲けている人間もやはり沢山いて、テレビマンのように徐々に仕掛けがエスカレートしていく。大掛かりなドッキリやイタズラ。その先に待っているものは何か。それが本作品のプロットの中心部分である。
 ネタバレ厳禁なのでわかりにくレビューになったが、殆どの観客は鑑賞途中で結末が見えてくると思う。そしてその通りの結末となる。どんな結末かは観てのお楽しみである。ある意味で痛快な作品と言っていいと思う。

耶馬英彦