劇場公開日 2022年2月11日

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「同じ時代を生きる者として」国境の夜想曲 機動戦士・チャングムさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0同じ時代を生きる者として

2022年2月25日
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 先日「風に舞い上がるビニールシート」読んだのですが、紛争地域では、ヒトの生活も命も、すぐに吹き飛ばされる。しかも、安全な処に着地できる保証はない。そう、ヒトの生活基盤なんて、ビニールシートより軽いんですね。
 チラシによると、この映画は光だそうです。ただ、その光を受け入れるまでの闇が、余りに深い。ストーリー仕立てではないので、映画としてのインパクトは弱い。でも私達の日常は、そもそもドラマ仕立てではない。それに、国境の日常は、私達の非日常だと、思い知らされます。残虐なシーンも皆無なのですが、ヒトに刻まれた残虐な記憶が無くなることも、皆無のようです。
 哀しみは、時間をかけて小さくできるそうです。でもゼロになることはない。小さくなってポケットに収まっている。そしてある日、ふと、甦る。そんな時、誰に何を伝えたらいい?。実は、何も伝わらない。ただ伝えたい人と、何とか受け止めようとする人が、いるだけなのかも…。
 別の国境で、新たなる哀しみが、産声あげたようです。昨日までのお隣さんが、良く分からないイデオロギーの違いの為に、殺戮し合うとすれば、本作は一体何の為にあると思いますか?。ヒトにとって、どんな意味があると思いますか?。あるいは…。
 映画はあくまで、お金を払うエンタメコンテンツです。ただ、何かを伝えたいと願う人と、勘違いでもいいから、受け入れようとする人がいる限り、続いてほしいものです。それが、拡張主義のクニに対する、私なりの、ささやかな抵抗だから。

機動戦士・チャングム