劇場公開日 2020年9月11日

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「岩井俊二監督作のテイストが、中国映画のフォーマットに驚くほど馴染む」チィファの手紙 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5岩井俊二監督作のテイストが、中国映画のフォーマットに驚くほど馴染む

2020年9月14日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

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幸せ

自筆の1篇の小説から、2本の映画を撮ることができる幸運な監督などそうはいない。1本目は邦画の「ラストレター」、そして2本目はこの「チィファの手紙」だ(ただし中国での製作・公開が早く、日本での公開順が逆になった)。舞台となる現代と1988年の旅順、特に後者の時代設定を丁寧にローカライズしたおかげで、中学時代の妹チィファと姉チィナンが暮らす町の風情が良い意味で田舎っぽく、郷愁を誘う映像になった。

岩井監督らしい手紙のモチーフ(「ラストレター」が「Love Letter」へのある種のアンサーになっている)に加え、「花とアリス」を思い出させる少女2人の絆(昔は姉妹、現代では従姉妹)など、中国の舞台、中国のキャストにしっとりと馴染んでいて、これは嬉しい驚きだ。それぞれ二役をこなした若き女優、チャン・ツィフォンとダン・アンシーの演技や佇まいも素晴らしく、今後も出演作が日本で観られることを願う。

高森 郁哉