劇場公開日 2020年2月28日

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「隠れた名画を探し当てた老画商の奮闘を描くヒューマンな佳作」ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像 徒然草枕さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5隠れた名画を探し当てた老画商の奮闘を描くヒューマンな佳作

2023年10月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

NHKがずいぶん前に放送したドキュメンタリー『スリーパー・眠れる名画を探せ~イギリス美術界のシャーロック・ホームズ~』の紹介文によると、「行方不明の名画、巨匠のタッチに上塗りされた名画、継ぎ足され正体不明になった名画・・・。これらスリーパーと呼ばれる名画を探し出す天才的な画商たちがいる」という。

本作の主人公の画商は市中のささやかな画商だが、それでもスリーパーを発掘することは生涯の夢なのだろう。店を畳む寸前の年老いた画商に、そんな夢を掴む機会が訪れたらどうするか――本作はそうした老年の夢の実現と障害、縁遠くなっていたのにそれに巻き込まれた家族との関係を描いた作品である。

老画商がオークションで絵画を仕入れたり、同業の友人と情報交換したり、絵画購入代金の支払いを滞らせて相手に侮られたり、インターンで仕事の手伝いをさせる羽目になった孫に手を焼いたり…ごく普通の日常が、丹念にいい質感といい色彩で描かれている。
そして、運命のスリーパーとの出会いがあるわけだが、それが果たして本当の名画なのか、単なる勘違いなのか主人公にもなかなかわからず、オークションで半分ギャンブルのように高値を付けて手に入れる。
そして、それを莫大な金額で転売しようとしたら、断られてしまうではないか。やはりアレは贋作か何かなのか…と観客がハラハラしていると、そこに1本の電話が…。

話の内容も飽きさせず、最後まで引っ張り、お定まりのヒューマンな結末へ。佳作である。

徒然草枕