劇場公開日 2020年12月4日

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「素晴らしい脚本!!!」ミセス・ノイズィ バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5素晴らしい脚本!!!

2020年12月10日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

また素晴らしい作品に出会えました。
脚本が、素晴らしいです。
徐々に味が変わっていく、幾重にも重なるミルフィーユのような、チョコレート「紗々」のように味ある糸が織りなしているかのような。

個人が感じる「違和」「異」が一滴一滴コップに溜まっていき、溢れて川になり、氾濫しうねりながら海に取り込まれていき、波に揉まれもがく人間を現代への皮肉と警鐘を打ち出しながら見事な物語に作り上げてます。
素晴らしいストーリーテリング。

また、演出も良いです。
よくある手法ではあるものの、エピソードを見せるだけでなく、その「人」そのものや「価値観」を描いています。また、周りがどう見ているか?まで。
ですから、非常に説得力あるんですよね。
説明セリフに頼らないとこもよいっす。

さて、本作品観た後に僕はボブディランの好きな歌詞の一節を思い出しました。

=====
One Too Many Mornings / Bob Dylan

You're right from your side.
I'm right from mine.
(君の立場になれば君が正しい。僕の立場になれば僕が正しい)

「正しさ」「正義」(法以外)は相対的なものであって個人主観の絶対的なものではないのですが、最近はモンスターナントカは絶対的正義を叫ぶ方々ですよね。

相手の立場になって考えることがおざなりになり、直接コミュニケーションが少ない社会になってしまった結果なのかなー?なんて考えちゃいます。

話せば終わることを何故にしないのか?
何故想像(空気読むってこと?)に任せるのだろ?超能力なんてないのに。

そして本作はさらにアンチテーゼを打ち出します。社会を作る、経済をつくる不特定多数の匿名の人間達やマスコミ。
便利で簡単で面白く責任が伴わないことが人間は大好きです。遊び感覚で作り出されるうねり。ただ「いいね」してるだけ。悪気なし。けど、船頭が馬鹿だと狂気にも凶器にもなる。罪の意識なぞこれっぽちもない。

怖すぎるけど、これ現実なんだよなー。

これらをストーリーとして紡ぎ、映像で表現してる本作は傑出した出来だと思います。また、迎えるラストのおかげで良いエンタメ作品ともなったかな?って思います。
もし大ヒットしたら、Anotherエンディング版をつくってもらえないかなー。
色んなエンディングが考えられると思うんです。

傑作です!

バリカタ