劇場公開日 2020年7月17日

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劇場のレビュー・感想・評価

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4.0山崎賢人史上間違いなく最高の演技

2020年7月17日
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《創作》という魅力に取り憑かれた者、とりわけ若く尖った頃のあの感じ、そのもやもやをうまく捉えている。すごく身につまされるテーマ。だけど貧乏でもヒモでも愛される、モテる夢追い人の功罪。"っぽくない"役柄の山崎賢人 × "っぽい"役柄を突き詰めた松岡茉優 = 双方キャリアトップレベルの演技を披露している。人間性屈折しまくり永田は池松壮亮(か菅田将暉)辺りが演じそうな役どころでひたすら内なる表現欲と向き合っては葛藤する。傍から見るとクズ男、夢追いかけるにしても自分で自分の生活くらい立てろって言いたくなるような。そんな主人公・永田を際立たせるように、一種非現実的なほど天真爛漫純粋無垢で何でも受け入れ、包み込んでくれる天使のような沙希。そのおおらかさと、その一方で息苦しさ・窮屈さ。沙希という存在そのキャラクター像は男の理想が投影されているようにも感じられて、その点がファンタジー的でもありながら、上述したようにしっかりと永田のキャラクターを際立たせ葛藤させることに大いに役立っていたから、その対照さが上手いなと思った。幾分鼻につく点もあったけど、テーマや作品を形作る要素・雰囲気的にどうしても嫌いにはなれないし、やっぱり刺さった。
嫉妬した。例えば、沙希が大学の男友達から貰ってきたスクーターで永田が同じ場所をぐるぐると何度も回るシーンや、自転車を二人乗りするシーンは名シーン。と、やりたいことやられた感じもあった。そして、こんなこと言うとファンの人から怒られるかもしれないけど、山崎賢人を初めて本当の"俳優"だなと感じた。間違いなく彼の現時点でのキャリア史上最高の演技であることは疑う余地なし。インパクトのある主人公の初登場シーンからキャラクターが貫徹されていたかは若干疑問だが、例えばアイデアオチだとしてもやましいことがあるとブロックを持ち帰るという小物使いや、ディズニーやクリント・イーストウッドにすら嫉妬する永田が猿のお面を被るという一種文字通りの"猿真似"をしてでも彼女のことだけは笑わせたいという心情風景の表象が胸を打つ。行定勲監督への苦手意識はどこへやら、その繊細なタッチと俗に言う恋愛映画の名手としての確かな手腕と経験値、それも本作では遺憾なく発揮されていて、その演出は心を掴むものがある。小説原作だけあって語り部が多いのは一見矛盾した心情まで分かりやすい一方で、ネックとなる人もいるかも。あらゆる夢が集っては破れ消えていく大都会『火花』の精神的兄弟分。僕らの生きる界隈・下北沢映画なら今泉力哉監督作品『街の上で』が複雑な心境で楽しみだけど、本作は恐らくそれよりもお金をかけ規模大きく下北沢を描いたらという感じ。最後に感じた余韻と心の充足感はきっと嘘じゃない。

沙希は徹底して僕に甘かった「ここが一番安全」「人から才能が無いって思われてることには気づいてる?」沙希ちゃんには思われたくない、壊れそうで、だから逆に沙希ちゃんを壊すわけ?「俺は人の意見を聞きたくなさすぎ病なんだと思う」

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