劇場公開日 2019年10月18日

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「【インド社会の様々な格差、虚無をライムの効いたラップで露に歌い、自らの未来を切り開いた男の物語】」ガリーボーイ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【インド社会の様々な格差、虚無をライムの効いたラップで露に歌い、自らの未来を切り開いた男の物語】

2019年10月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

幸せ

 ムラド(ランヴィール・シン)を囲む、友人達のキャラクターがとても良い。

 13歳から付き合っている気の強いサフィナは町医者の娘で、ムラドとは身分差がある。

 ムラドの綴ったリリックの素晴らしさに気付き、後押しするMCシェールと、アメリカの音楽学校を卒業したスカイ(お金持ちの素敵な女性)。

 車泥棒や子供にハッパ売りをさせる悪友モイン。

 自らの境遇に諦めている父親は貧しいのに、第二夫人を囲い、母親と諍いが絶えない。
 ムラド自身も自らの将来が見えず閉塞感に悩む中、思わず綴ったリリックをひょんな事からラップで歌う事に。

 身近な問題を鋭く抉ったムラドのラップは貧しき若者達の心を捉え、”ガリーボーイ”(路地裏の少年)としてSNSで名を挙げて行く。

 そして、物語は感動的で圧倒的なラストに一気に雪崩れ込む。

 <印象的だったシーン>
 ・悪友イモンが鉄格子越しにムラドと交わす会話。貧しさから犯罪に手を染めてしまったが、根は良い奴なのである。
 ・スカイにムラドを取られたと思い、サフィアが取った数々の行動。(女の嫉妬の怖さや可愛らしさをアーリアー・パットが好演している)
 ・父親が”現実を見ろ”と言いながら、虚無的な表情を浮かべるシーン。
 ・ムラドが富裕層の家族の運転手として無表情に働く姿。

 〈ゾーヤー・アクタル監督とリーマー・カーグティ(脚本)の女性タッグがインドの格差社会、女性の人権などの現実にラップミュージックを軸にしながら、果敢に斬り込んだ感動的な作品〉

 ■今年、「あなたの名前が呼べたなら」という素晴らしいインド映画が公開されたが、この作品も同様のテーマを題材にしている。
  旧弊を見直す機運が、インド映画界にも広まって来ている事を心から喜びたい。

NOBU
kossyさんのコメント
2019年10月21日

いつもありがとうございます。
ちょっとわからなかったのが、伯父さんと父親が兄弟なのに身分が違うという点です。
職業的なものなのかな…インドの格差社会は相当根深いものなのでしょうね。

kossy