「乃木坂という魔法の、祝福と呪い」いつのまにか、ここにいる Documentary of 乃木坂46 タイシさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0乃木坂という魔法の、祝福と呪い

2019年7月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

 魔法の剣「乃木坂」は強い力を持つマジックアイテムですが、剣自体が意志を持っていて時に使い手を裏切り傷つけます。使い手自身が力を持つようになると自由にコントロールできないその意志が、戦いの枷になっていきます。そして一度「乃木坂」を手にした者は、たとえそれを手放したとしてもその呪いから完全に解き放たれることはないのです。

 前作は、少女たちが「乃木坂」という強力な魔法の剣を得て、アイドル業界で戦い傷つきながら高みへと上っていき、スキャンダルによって一旦はどん底に落ちながらも、再び這い上がり勇者(スター)になっていく姿を映し出した、かなりベタな成長物語でありました。全員がスターになるという目標を目指して坂を上っていく往路(往き道)を描いた作品です。

 そして今作。

坂の上にたどり着いた後、次の目標をみつけて旅立つまでの復路(帰り道)を行く者と、新たにスターになるべく坂を上っていく者の姿の両方に焦点を当てています。

 いつのまにか勇者(スター)になっていた少女が《力》に執着せずに魔法の剣を捨てる強さを身につけて独り立ちする姿と、魔法の剣の呪いに苦しみながらもそれでも勇者として剣を振るって戦い続ける者たちの姿と、新たに魔法の剣を得てアイドル業界で高みに上り勇者になろうとする少女たちの姿、それぞれを映し出しています。

 今作も《成長》がテーマですが、前作のようにストレートではなくかなりの変化球になっているので、エンターテイメントとしてシンプルに楽しめるものではなくなっているとは思います。

 エースの齋藤飛鳥については、アイドルとしてではなく人間的に成長する姿も描かれています。

 前作では同郷の仲間(一般人)と一緒に成人式に出ている西野の姿がありましたが、今作ではパニックをさけるため一般のみんなとは別席を設けられて成人式に出る齋藤の姿が映されており、乃木坂というグループがスターになった(なってしまった)ということを如実にあらわしています。

 全体の感想としては、一つの作品としてファン向けだがファン向けじゃない中途半端な感じが気になります。

 おおよそ観客は普段映画を観ない乃木坂ファンで、ファンたちは自分の推しがでてくるのを楽しみにして観に来るだろうに、ドキュメントとして一定のテーマを設けてテーマに沿った配役で、《映画》としてわざわざつくりあげているのは、いささか不親切だろうと思います。

「なんで○○の出番が少ないの?」っていう、アイドルファン的な意見が出てくるのは当然だと思います。

 飛ぶ鳥のイメージが多用されていて、高みに上る・飛び立つの象徴となっていますが、エンディング間近で質問という形で監督がイメージを言葉にしているのには、ちょっとゲンナリしました。そこはマイナスポイントです。

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タイシ