劇場公開日 2019年9月6日

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「黙示録のイナゴはBeatles?」チャーリー・セズ マンソンの女たち kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5黙示録のイナゴはBeatles?

2020年5月5日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 洗脳が解けない様子は、オウム真理教の地下鉄サリン事件にも共通するが、世界で何が起こっているかを理解しようとしないマンソン・ファミリーの信念が不気味。ルル=レスリー、ケイティ=パトリシア、セイディ=スーザンなどと、チャーリーにつけてもらった名前を名乗り、本来の家族とは絶縁状態だった彼女たち。序盤ではそうした洗脳が解けないほどの悪魔的存在だったチャーリーに興味を持ってしまった。

 『シャロン・テートの亡霊』でも気になっていた「ヘルター・スケルター」。ビートルズの通称ホワイト・アルバムが発表され、「ブラックバード」や「レボリューション」から触発された上に「ヘルター・スケルター」の歌詞を曲解していたチャールズ・マンソン。黒人が白人と戦争をして、その後ファミリーが地下に潜った後、自分たちに統治を頼むとかいう、わけのわからない解釈なのだ。現在でも密かに人気があったりするのが不思議なくらい。

 元々は原始コミュニティを作っていただけの、ヒッピー文化の派生みたいなグループのように思えた。ゴミ箱を漁る生活もひどいし、中でも牧場主のじいさんが笑えた。フリーセックスや所有を禁止するルールだけなら世間に害を与えなかったろうに、ミュージシャンとして売り出そうとしたことや、ビートルズを誤解したことにより、多くの殺人事件を起こすのだった。プロデューサーのテリー・メルチャーに逆恨みするというのも結局はただの人間であったことがわかる。

 カルト宗教は基本的にこんなものだということが良くわかるし、洗脳が解けないことも刑務所内教師カーリーンによって明かされる。びっくり描写としては3人が互いに洗脳し合っていたことだ。背筋が凍り付きそうになった・・・

 世間に背を向けて勝手な主張をしている様子は、現代日本におけるネトウヨにも通じている気がする。妄信することによって自分の存在を証明しているかのようでもあり、「エゴを捨てよ」というメッセージも、単に与党に「同調」する現代の構図に似ている気がしてならない。暴力、殺人は何も生み出さない。情報は多い世の中だけど、デマに騙されず、惑わされないようにしなければ・・・

kossy