劇場公開日 2020年7月17日

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「フランソワ・オゾン監督初の実話! 「スポットライト 世紀のスクープ」の社会問題が多面的に見えてくる」グレース・オブ・ゴッド 告発の時 細野真宏さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5フランソワ・オゾン監督初の実話! 「スポットライト 世紀のスクープ」の社会問題が多面的に見えてくる

2020年7月16日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

本作は、2019年のベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞したフランソワ・オゾン監督作。
フランス映画は日本人との相性がそこまで良いわけではないようで、公開本数も少ないのが現実。
そんな中、フランソワ・オゾン作品は、今回のように大きな賞を受賞していない場合でも日本で、ほぼ公開される稀有な監督。
本作は、「監督初の実話」ということで、どんな風な作品になっているのか興味を持っていました。
まず、本作と似たような題材に、2016年のアカデミー賞で作品賞と脚本賞を受賞したトム・マッカーシー監督の「スポットライト 世紀のスクープ」があります。
「スポットライト 世紀のスクープ」は、アメリカのキリスト教会で多発していた「カトリック司祭による性的虐待事件」という、一種のタブーに食い込んで独自に報道したボストン・グローブ紙の記者らの活躍に焦点を当てた作品です。
ボストン・グローブ紙は2002年から記事を公開し始めるのですが、それは「氷山の一角」に過ぎず、どんどん広がりを見せ、「スポットライト 世紀のスクープ」のエンディングでは世界中で蔓延していることが示されています。
本作は、まさに、それのフランス版で、記者ではなく、被害者が立ち上がっていく様を描いているのです。
私たちが押さえておきたいのは、これが今でも続いている現実です。
「スポットライト 世紀のスクープ」であぶり出されて終わりではなく、今回の「グレース・オブ・ゴッド 告発の時」で扱われている実話も、まだ裁判中で未だに世界で続いているのです。
このフランスでの「氷山の一角」の話は、改めて「カトリック司祭による性的虐待」の問題の根深さを痛感させられます。
被害者側からの視点なので、「スポットライト 世紀のスクープ」とは違った別の角度から多面的に問題の構造が見えてきます。
まだまだ、この問題から私たちは目を背けてはいけないのですね。
本作はハリウッド映画のようにどんどん引き込まれていくような作りではなく、割と淡々としていますが、見ておく価値のある作品だと思います。

細野真宏