劇場公開日 2019年10月11日

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「奇抜さのわりに突き抜け感がない」ボーダー 二つの世界 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5奇抜さのわりに突き抜け感がない

2023年11月15日
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鑑賞方法:VOD

独特な世界観と設定で比喩的にマイノリティを中心にそこから派生するコミュニケーションなどを描いたアリ・アッバシ監督。
似ているものに惹かれていく感情。その対極にある違うものを拒絶する感情。行き着く先は自分と違うものを排除しようとする強い負の感情。

少し前にアリ・アッバシ監督の「マザーズ」を観た。公開は「マザーズ」が後だが作られたのは「マザーズ」が先。
これと本作を観るに子どもに対して何か訴えたいことがあるように思う。
子どもは未来を象徴する存在だ。人間にとって社会にとって子どもなくして未来はない。
つまり子どもにこだわるアッバシ監督は未来に憂いを感じ警鐘を鳴らそうとしているのかもしれない。
もしくはただ怖い感じにしたいだけかもしれないけれど。

それなりに面白く観た。いわゆるストーリーが分からないこともない。
しかし、楽しさを追求しただけの単純な娯楽作ではないだろう本作に、もし何か伝えたいメッセージが存在しているのであれば、イマイチ見えてこないのはちょっと残念だ。
映画なので頭で分からなくとも感じることができればいい。その感覚の部分でも刺さって来ない。

全く違うストーリーだが似たような内容の「心と体と」という映画が頭をよぎった。ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞したハンガリー映画だ。これはいい作品だった。
「心と体と」と比べてしまうと「子ども」という余計に思える要素の分だけ見えてくるものを感じない。

答えを教えてほしいわけではないが、観ている最中に感じる興味が興味のまま最後までいってしまう起伏のなさ。つまりちょっと淡々としている。
物語の起伏というよりはキャラクターのエモーションによる起伏がない。
この辺はヨルゴス・ランティモス監督なんかに似てる感じがする。作品のテンションが低いんだな。それが悪いことはないけれど、観る側の嗜好に左右されやすい。

そんなわけで、個人的には星4つは無理かなくらい。
刺さる人には刺さる、好みの分かれる作品に思えた。

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つとみ