劇場公開日 2019年10月11日

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「種の保存」ボーダー 二つの世界 bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5種の保存

2023年5月21日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

第71回カンヌ映画祭でも話題を呼んだ、スウェーデン作品。性別、人種、宗教など多様性の文化を容認しようとする現代だからこそ、意味ある作品とも言える。通常の人間とは違う醜い容姿に生まれ、世間から孤独や疎外感を受けてきた人の生き様を描く中で、それを北欧に伝わるトロール伝説と絡めた、大人のためのファンタジー・ミステリーとして仕上げている。

異形な容姿によって、自分への肯定感が持てず、排除をしてきた人間への恨みだけが積み重なっていく主人公・ティーナ。そして、ようやく巡り合えた同種族のヴォーレによって、切なくも、露骨な恋愛ドラマが描かれていく。その中で、自分がトロールの種族であることと共に、出生の秘密も明らかになっていく。そこに更に、幼児ポルノや人身売買といった、醜悪な罪の要素も盛り込んで、サスペンスとしての色彩も濃くしていく。

特に、ティーナとヴォーレの生殖構造が、人間とは全く違った形で描かれていて、やや理解にし難いシーンもあったが、本来の人のラブ・シーンとは異なり、純粋に種族の継承の為に行う獣同士の性交のように、荒々しく描かれていたのは、観てはいけないグロテスクなものを目の当たりにした感じがした。

ストーリーは、醜い容姿ながら、その鋭い臭覚によって、税関職員として密輸を取り締まる仕事をしていたティーナが、ある日、自分と同じ匂いを持つ旅人のヴォーレと出会う。ティーナは、ヴォーレを自分の家の離れに住まわせ、次第に2人の間には恋愛感情が芽生えていく。ティーナは、これまで自分に引け目を感じていたものが、ヴォーレとの出会いで、晴れていったのもつかの間、ヴォーレの真の目的を知り、再び奈落の底に突き落とされる。

ティーナを演じていたエバ・メランデルとヴォーレ役のエーロ・ミノフについては、初めて知る俳優さんだったが、顔は特殊メイクながらも、裸体をさらけ出し、体当たりの迫真の演技は、なかなか印象深いものがあった。

bunmei21