劇場公開日 2019年3月9日

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「ネタバレ大&珍しく長文」イップ・マン外伝 マスターZ MAKOさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ネタバレ大&珍しく長文

2019年3月29日
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「イップ・マン3」が素晴らし過ぎたので、星4.5でも良かったのだがさすがに差を付けない訳にはいかず。

"アクション映画ではドラマ部分こそが大事なんだ"
なんて事を言う演出家を何処かで見た事あるでしょう。
しかし臆面もなくこういう事を言う監督の映画にかぎってアクションもドラマもつまらなかったりする。

が、やはりアクションの巨匠と言われる人が監督するとそんな心配は全くの杞憂だ。
たしかに王道であり悪く云えばステレオタイプのヒーローであり悪役だが、スカッとアクションを愉しむのであればそれがベストだと思う。

語弊が有るといけないが決してこの作品の脚本が雑な訳ではない。それどころか敗北を知った男のヒーロー再誕物語としてとてもよく錬られた脚本だ。まさか序盤のオルゴールがクライマックスの複線になっているとは。(「白粥と揚げパンが食べたい」には泣きそうでしたよ)
こういうお話しだと主人公がアクションするのをクライマックスまで溜めたりする作品も有るが、ウーピン監督は「それじゃツマランでしょ」とばかりに頭から最後迄これでもかとアクションを観せてくれます。
なのにアクションを無理矢理繋げた感は無く、主人公が闘うべくして闘っている様子が実に良い塩梅で配分されています。この辺もやはり脚本が旨いと云えるポイントですね。

マックス·チャンは「SPL2」、「イップ・マン3」と凄まじいアクションを披露して来て、本作で本格主演デビューとの事だがそれが正に代表作と言える出来栄え。
これ迄にも香港映画では素晴らしいアクションを魅せる俳優が何人も出て来ているし、ニコラス·ツェーやショーン·ユー、エディ·ポンと云った素晴らしい身体能力を持った俳優がいるが、彼等は飽くまでも運動神経を持った"俳優"であり、"アクションスター"と云う訳ではない。(なので次回作はアクション抜きのサスペンスドラマなんて事が普通にあってちょっとガッカリ。出来は別として)
しかしマックス·チャンは正に次世代の本格派アクションスター。「SPL2」ではウー·ジンとトニー·ジャーを同時に相手にして、二人掛かりでも敵わないなんて役を"説得力を"持って演じられる俳優が他にいるだろうか?
アクションを愛する自分としては次作が楽しみで仕方ない。

ミッシェル·ヨーは久々にアクションを披露したと思うが相変わらずのキレと美しさ。グラスの押し付け合いのシーンはクンフー映画らしい見せ場だったが、彼女だからこそ優美さを持った粋なシーンになったと思う。弟の腕ぶった斬って筋を通すシーンも痺れました。

シー·イェンネン(シン·ユーじゃなかった?)は正にアクションの先輩として余裕を持って演じていたように見えました。バウティスタ戦も実に格好良かった。
この方も本格派。本物の少林寺の出家層!
やはり次作が楽しみです。

今作で実は一番の驚きだったのがデイブ·バウティスタの演技の上手さ。前半のジェントルな演技と後半のラスボス然とした演技。お見事でした。「G·o·t·G」シリーズしか知らなかったので、アクションシーンよりも演技力に眼が行ってしまった。失礼ながらWWE時代の事は全く知らないのだが、きっといいレスラーだったんだろうなぁ。
この方の他の映画も観てみたいですね。

そしてユエン·ウーピン監督。ジャッキー様と同じく常々「アクションはやり尽くした」と仰るがそれでも毎回素晴らしいアクションシーンを観せてくれてる。
ジャッキー·チェンを世に送り出し、ドニー·イェンを育て、今作のマックス·チャンを育てた。
この方がいなければ「マトリックス」も無かったかも知れない訳で、只のアクション監督と云うより最早映画界の偉人ですね。

今作で「イップ・マン4完結編」のハードルを自ら上げた様に思えるが、きっとそんなもんどこ吹く風でまた素晴らしいアクションを観せてくれる事でしょう。

きっと自分がジジイになっても香港映画界には"本格派アクションスター"が生まれ続ける事だろう。
クンフー映画万歳!

MAKO