劇場公開日 2019年9月20日

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「宇宙への旅と見せかけて、自分探しの旅」アド・アストラ andhyphenさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0宇宙への旅と見せかけて、自分探しの旅

2019年10月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

哀愁やで...。
「アド・アストラ」は前評判通り痛快SF冒険活劇ではなく、ひたすら平静を装いながら孤独と闘うブラッド・ピットが救いを求めて海王星を目指す話であった。...と書くとざっくりし過ぎではあるが、もうそうとしか...。
執拗に登場する「心理検査」を難なくパスするブラッド・ピットだがその内面は矛盾に満ちており、生きているらしい父を追うことで徐々に感情が表出する。
宇宙SFモノとしては「月にあんな軽い感じで行けちゃうのかー」とか月の現状に対するブラッド・ピットの不快とか、まさに西部劇なカーチェイスとかは中々面白い。
前半はそう、随所にハラハラエンタメを仕込んであるのだが、後半はもう完全に自分との闘いというか、葛藤である。その果てに再会した父(トミー・リー・ジョーンズが大変よい)は主人公の「あり得た可能性の姿」である。父親を追って生きてきたのだから当然なのだが、その「成れの果て」はブラッド・ピットを孤独から引き戻すには十分なインパクトである。
ひたすら苦悩のブラッド・ピットは見応えがあった。あの孤独に対する思いはおそらく万人に共通するので、舞台が宇宙でも刺さるのだろう。そしてトミー・リー・ジョーンズの「成れの果て」の説得力。明らかに嘘っぽくなりそうな役が、彼だからこそ締まる。
全体的には内面ばかりのストーリーなので退屈感をもたらすかもしれないが、それを宇宙規模でやれてしまうというのは凄いとしかいいようがない。私は割とブラッド・ピットに共感して観ていた。普遍的な葛藤を描いていると思う。
SF的には帰還はあんなやり方でいけるのかよ?! とかお父さんどうやって生きてたの?! とかまあ、色々あるわけですが、まあ内面がメインなので...。しかし月が近未来にあんなんなってたらやだな...。

andhyphen