劇場公開日 2019年10月11日

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「ベトナムの恥部と美をともに描く」第三夫人と髪飾り ローチさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ベトナムの恥部と美をともに描く

2019年12月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

これが長編デビュー作というアッシュ・メイフェア監督だが、素晴らしい才能の持ち主だ。19世紀の女性の苦難と男性の不自由さをともに描き、安易な男女対立として描かない。女性は男を産むことだけが価値とされ、男性には自由な恋愛は許されない。一方の不自由がもう一方の不自由を生み出し、不自由が循環していることが描かれている。
美術にトラン・アン・ユンが参加していることもあって、セットとロケーションが美しい。ベトナムの歴史の恥部を描くと同時にベトナムの美しさも同時に描いているのが印象的だ。14歳の第三夫人が主人公だが、第一夫人、第二夫人の苦労も描かれており、3人が協力しあって困難を乗り越えようとしているのも本作の特徴で、大奥のような愛憎劇ではない。それは監督の祖母から聞いた話を基にしているそうだが、監督の家族とベトナム文化への深い愛が感じられる素晴らしい作品だ。今後、アジアを代表する監督に成長してほしい。

杉本穂高