劇場公開日 2019年11月22日

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決算!忠臣蔵 : インタビュー

2019年11月21日更新

岡村隆史が映画に出演する理由 謙虚な姿勢が生み出す唯一無二の俳優像

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ナインティナインの岡村隆史が、11月22日公開の「決算!忠臣蔵」で時代劇に初挑戦。大石内蔵助役の堤真一とのダブル主演で、赤穂藩の勘定方・矢頭長助を演じた。歴史の表舞台には登場しない人物だが、だからこそ独特のポジションで個性をいかんなく発揮。身分が上の内蔵助に苦言を呈するやり取りなど、随所でしっかりと笑いも取る。それでも、「お笑いをやっているから映画に呼んでもらえる」という姿勢を崩さない。その謙虚さが、唯一無二の俳優像を生み出している。(取材・文・写真/鈴木元)

「僕自身は俳優やと思っていなくて、皆さんに迷惑をかけないよう自分のできる範囲でやれることをやろうと思っているだけです。でも、呼んでもらえる以上はいろいろ勉強もしたいですし、バラエティでは会えない人に会えておしゃべりできるのも新鮮です」

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岡村は、映画に出演する意図をこう説明する。たが時代劇、しかもテレビ、映画、検証番組などこれまで幾度となく映像化されてきた年末の風物詩である忠臣蔵作品への主演は全くの想定外だった。

「全く時代劇にふれてこなくて、ただただビックリしたというか、でかいなあという感じは受けました。忠臣蔵は大石内蔵助の話なんで油断していたら、お金の話で矢頭長助というずっとお金の計算をしている人ってなって、そうしたらそろばんもやらなあかん。どんどんやらないかんことが増えて、不安も大きくなっていきました」

お家取りつぶしとなった赤穂藩士たちが、吉良邸討ち入りにかかる莫大な費用をめぐり、金に無頓着な“戦担当”の番方と勘定方がせめぎ合う“あだ討ちシミュレーション活劇”。もちろん、伝統ある松竹の京都撮影所での撮影は初体験だ。

「京都のカツラさんは厳しいから、差し入れ持っていかんときつめに作られるぞって聞いていたので、ちょっとビビっていたんです。それ言うたんは東野幸治さんなんですけれど、皆優しかったですよ。似合うなと思いましたし、自分のカツラがずっと残んねやと思ってうれしかったですね」

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堤とは2014年「土竜の唄 潜入捜査官REIJI」に続く共演。共に関西人ということもあり、既にコミュニケーションが取れていたことも奏功したという。

「当たり前なんですけれど、すごいなあと思って見ていましたね。『開城しよう』っていうセリフひとつでも、こんなにパターンがあるかっていうくらいやりはるんですよね。今のめちゃくちゃおもろかったやんって思うても、監督がちょっとってなる。役者の方は当たり前なんでしょうけれど、僕なんか一個しかないんで。撮影の合間も普通におしゃべりしてくれはるし、それが大きかったですね。笑いの部分も引っ張っていただいたし、堤さんじゃなかったらもっとぶっ飛んでいたかもわからない」

その「開城しよう」が放たれる、赤穂藩の面々が勢ぞろいする評定会議のシーンがクランクインから3日かけて撮影された。その数約90人。しかも男ばかりとあれば、壮観な景色になることは想像に難くない。

「こんないっぱいおるんやって圧倒されました。そうそうたる感じで妻夫木(聡)くんもいましたし、役者だけやのうて吉本の超ベテランの(西川)きよし師匠やキム兄(木村祐一)もいる中でしたから、とにかくセリフをちゃんと覚えて失敗しないようにということでした」

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だが、次席家老の大野九郎兵衛役で「小さなことからコツコツと」のセリフもあるきよしの存在によって、落ち着きを取り戻したというエピソードが笑える。

「きよし師匠が、意外とフワフワした状態だったんで助かりましたね。監督の言うことを全然聞かれへんし、皆に向けて(セリフを)言わなあかんところを、僕にグワーッと言うてきはったので、師匠僕じゃないですよってなる。知っている顔に言った方がって思われたんでしょうけれど、師匠こっちじゃないですって言うて、チラッと(横にいた)濱田岳くんを見たら、下向いてめっちゃ笑っていました。そういう意味で緊張がほぐれた部分もけっこうありましたね」

寒さが厳しい冬の京都でも「ちょっと熱かった現場」と振り返るように、共演者と苦楽を共にして徐々に絆を深めていった。そんな手応えをつかんだ矢先に迎えたクランクアップ。中村義洋監督の「いい感じになってきて、もうちょっとでしたね」という言葉が強く印象に残っている。

「監督とよく仕事をする人は、監督をいじったりしておもろいなあと思って見ていたんですけれど、僕もちょっとコントができるくらいの関係性ができ始めた時やったんでね。もうちょっとがお芝居のことか皆との関係性かは分からないですけれど、映画って皆と腹を割って話ができるようになったら『お疲れさま』ってなるんで、ただただ寂しくなる。スタッフさんも含め、もう会われへんのやって思っちゃうんですけれど、役者さんはそういうのが当たり前で次の作品に向かわないといけないから、意外とさらっとしていてドライやなと思います」

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それだけ映画に心を込めていることの証左だろう。その原点は、ナイナイとしての初主演「岸和田少年愚連隊」(1996)にある。

「井筒(和幸)さんが殴り合いのシーンを撮りながら『おらあ~』言うて体動かしているのを見て、なんか面白いなと思い始めたんです。映画ってプロの集団というか、職人が集まってそれぞれの仕事をしてひとつの作品を作っていく。そういうのが好きなんですよね」

さらに、2000年の日本アカデミー賞授賞式で高倉健さんと出会い「一緒にお仕事しましょう」と言われたことが大きな転機に。10年に体調を崩した休養していた時も、激励の手紙が届いた。そして12年、健さんの遺作となった「あなたへ」での共演が糧となっている。

「健さんみたいなお芝居はできないですけれど、映画に出ていたら健さんが見てくれるんちゃうかなという思いはあります。忠臣蔵も見てくださいって言えたかも分からないですね」

健さんは、94年「四十七人の刺客」で大石内蔵助を演じている。その内蔵助に物申す矢頭長助の姿を、天国で見て目を細めているかもしれない。

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