劇場公開日 2019年3月29日

「事なかれ主義と警察不信と韓国不動産事情?」目撃者 レントさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5事なかれ主義と警察不信と韓国不動産事情?

2023年5月7日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

単純

犯行を目撃されたことからその目撃者を殺すためさらなる犯行を繰り返す犯人。当然更なる目撃者を増やすリスクがあるため賢いとは言えない。
スタローンのおバカ映画「コブラ」は目撃者を殺すため警察と全面戦争になるような展開でもはや目撃者を殺す意味なんてなかった。まあ、カルト集団だからしょうがないかということ。本作の犯人もサイコパスだからと片づけられる。ラストはまんま「チェイサー」だったしね。

韓国映画といえばとにかく警察の無能ぶりを描いた作品が多い。実際の事情はわからないが映画でここまで描かれるということはやはり警察に対する国民の不信感は根強いものがあるのだろうか。
保険会社に勤める主人公も冒頭で警察に対する不信感から交通事故の被害者に示談を勧めている。
そんな主人公が自宅マンション敷地内での殺人を目撃し犯人にも見られてしまう。犯人は自分の部屋を知っている。このままでは自分と家族が狙われるのではとおびえる日々が続く。

普通ならここで警察に通報して家族の保護を求めるだろうし、実際そうせざるを得ないだろう。いくら警察不信といえども自分でこの事態をどうにかできるわけがないのだから。
マンションの組合では不動産価格の下落を心配して事なかれ主義を貫こうとする住民たちも描かれるが、主人公の場合はそうも言ってられないだろう。

殺人犯からも狙われ、警察にも助けを求められない追い詰められた状況はサスペンスとして定番のよくあるネタだが、本作はその状況を作り出す前提条件が弱すぎて説得力に欠ける。

自分の妻子と犯人が鉢合わせしそうになり何とかやり過ごそうとするシーンは本作では唯一スリリングで良かったが。

本作は最初からシャツの第一ボタンを掛け違えたような作品で最後まで良くなりようがなかった。ラストの主人公がマンション敷地内で助けを呼ぶシーンも作品のメッセージとして他人同士の無関心を痛烈に皮肉りたかったんだろうがそれもなんだかずれている。ちなみにああいう場合は火事だと叫ぶべきだ。

韓国映画はいろんな要素を詰め込んでも破綻せずうまくまとめ上げるのがうまい。本作もいろんな要素を入れ込んでるがまとまりがなくメインのサスペンススリラーとしても成功してるとは言えない。

主演のイ・ソンミンは「黒金星」や「KCIA」などで名演技を見せてきた役者さんなだけに期待したが彼の演技力に脚本、演出が釣り合ってなかった。ちなみに「はちどり」のパク・ジフがちょい役で出てたのはうれしいサプライズだった。

レント