劇場公開日 2020年6月26日

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「まずは映画化できたことを祝おう」ソニック・ザ・ムービー バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0まずは映画化できたことを祝おう

2020年7月25日
PCから投稿

映画化企画が発表されてから完成までの道のりが、なかなかスムーズに行かないのがゲームの映画化企画ではあるが、それは「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」の映画化も同様である。

近年になって、ゲームの映画化だけではないが、映像技術の発達によって、限りなく表現の幅が増えたことで、棚上げされていた企画がもう一度表に引きずり出されてくることも多くなってきた。

ディズニーの『ジャングル・ブック』からはじまり、人間と擬人化されたキャラクターとの共存する世界観という点で成功した『名探偵ピカチュウ』が大きな役割を果たしたといってもいいだろう

『鬼武者』や『クレイジー・タクシー』などのように消滅してしまった映画化企画が数多く存在している中で、企画発表から長年のブランクがあったといっても、ようやく完成にこぎつけたことをまず評価したい。

セガを代表するゲームの「ソニック」シリーズには、たくさんの動物を擬人化したキャラクター達が登場しており、そんなキャラクターたちと人間との共存や対決が描かれてきたが、今作では、あくまでソニック単体に焦点を合わせている。

正直言って、これはなかなか冒険的である。今まで何度かアニメ化されてきた「ソニック」ではあるが、どの作品でもテイルズやナックルズといった、仲間たちの掛け合いがベースとなって、物語が展開されていくスタイルのものばかりだからだ。

やろうと思えば『名探偵ピカチュウ』のようにメインキャラクターのピカチュウの他にも、ゲームでお馴染みのキャラクターを大量投入して、ユーモラスな世界観の映画を作り、ゲームの世界観を知っていること前提で映画化することも可能だったと思うのだが、それよりもソニック単体に焦点を合わせて、映画版の世界観や、ソニックのルーツを描くことで、今後の展開への誘導的映画となっている。

つまり、アメコミ映画などでもよくみられる、シリーズ化を想定した1作目の典型的な構造となっているのだ。

「ソニック」というビッグネームだからこそできたのかもしれないが、1作目で世界観やキャラクターのルーツを描くと、どうしても説明的になってしまったり、その部分で尺がとられてしまって、こじんまりとした作品になってしまうことが多く、今作でもその傾向が多くみられる。

ビッグネームといっても、ゲームの映画化ではないが、同じく続編ありきの構成で映画化された『ドラゴンボール エヴォリーション』という失敗例もある。本来、4部作構成の予定であったハリウッド版「ドラゴンボール」ではあるが、1作目で原作とは違う独自の世界観の紹介に時間の尺を使い過ぎて、物語として非常にコンパクトに収まりすぎてしまったことで、アクション娯楽という印象付けをすることに失敗し、説明を終えた後に本格アクション映画として本気を出すはずであった、続編企画自体が消滅してしまった。実はこの様なケースは少なくない。

しかし、今作では、確かにこじんまりとはしてしまっているのだが、今後の展開を期待させるネタの散りばめ方が絶妙であり、90年代や2000年代前半の頃にみられたノリのジム・キャリーによる、やり過ぎと思えるほどの演技によって、単調な物語にもメリハリを付けることにも成功しており、今作でジム・キャリーがもたらした化学変化は絶大である。

おそらくジム・キャリー自身も今後の自分の映画俳優としてのベースとなるような作品と思っていて、ドクター・ロボトニック(のちにドクター・エッグマン)というキャラクターに全力投入しているものと思われる。

とりあえず2作目の制作には、ゴーサインが出たことから、ひとつの大きなハードルは乗り越えられたといえるだろう。

次回ではゲームでお馴染みのキャラクターが数体登場することも暗示されていることから、壮大なスケールの作品になることを期待したい。

バフィー吉川(Buffys Movie)