劇場公開日 2019年3月30日

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「【偏見の向こう側にあった別れ/年上の女性と年下の男性の恋愛④】」リヴァプール、最後の恋 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【偏見の向こう側にあった別れ/年上の女性と年下の男性の恋愛④】

2021年12月19日
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過去に観た、年上の女性と年下の男性の恋愛映画をもう一度鑑賞しようとチェックしていたら、見逃していた、この作品を見つけた。

この作品の結末は、とても悲しいが、結論から言うと、昨今のノン・バイナリーの恋愛を描いた映画と同様、男女の年齢構成や、年齢差に関係なく、人を好きになるということは情熱的であり、別れは悲しいということだと感じる。

結末のせいもあるが、ここ数日に観た作品のなかでも、それを強く感じさせるものだった。

この作品は、実話をベースにしたものだ。

往年の名女優グロリア・グレアムと、晩年を支えた若く駆け出しの俳優ピーター・ターナーの愛の物語だ。

原作は、ピーターの回想録によるものだ。

(以下ネタバレ)

物語は、グロリアのガンが悪化し、実の息子の元に帰るまでを描いているが、グロリアの母親や姉が、ピーターとは再婚しないように強く促したことから、正式なパートナーとしてピーターはグロリアの最後を自分の手元で看取ることは出来なかった。

グロリアは、ガンの再発が発覚して余命短いと知り、ピーターに依存しがちで、ピーターの俳優としてのチャンスを奪ってきたと苦悩する。

その為に、公演舞台であるリヴァプール劇場の近くで過ごそうと考えたのだ。

これが、映画の原題「Film Stars don't die in Liverpool」につながっている。

ひた隠しにしてきたガンが悪化、ピーターの家族も献身的な看病をするが、余命幾ばくも無いと分かってしまう。

この物語は実話だが、このピーターの家族が、相当年長のグロリアとの恋愛関係に否定的なことを一切言わないことに驚くというか感動してしまう。
グロリアの母や姉は、過去の恋愛遍歴もあって、否定的なことを言うのとは対照的だ。

しかし、ピーターやピーターの家族への負担を考え、息子の世話になることを決めるグロリア。
その決断を尊重しなくてはならないとピーターを諭す家族。

ピーターは公演への出演を続け、ピーターの家族は、キャンセルの予定だった旅行をグロリアに促された通りに行こうとする。

それまで奔放で、恋愛を自らの演技のエネルギーに変えてきたようなグロリアが見せた最後のピーターへの愛と”節度のようなもの”と、ピーターの家族が見せた理解力と献身、そして節度が、逆に、悲しさに深みをもたらすように感じられた。

ピーターと家族の会話を通じて、改めて、恋愛の多様性には人々の理解が重要で、偏見の向こう側にも深い愛があると思わせられるのだ。

栄光と挫折を経たグロリアは、ピーターやピーターの家族との交流を通して、本当の家族を得たと感じたのではないかと思う。

泣ける映画だった。

ワンコ