「クロエ・ジャオ監督は荒野が好きなのだろうか」ザ・ライダー 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5クロエ・ジャオ監督は荒野が好きなのだろうか

2021年4月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

「ノマドランド」でオスカーを獲得したクロエ・ジャオ監督の前作だ。この映画を観たフランシス・マクドーマンドがクロエ・ジャオに白羽の矢を立てたらしいが、それも納得だ。荒野に生きる人を時代遅れの保守的な人間と切り捨てない視点を持っている。大怪我を負った若いカウボーイが人生をかけて挑んできたロデオの道を断念する。これからの人生をいかに生きていくべきか、主人公は逡巡する。やがて馬のトレーナーを頼まれ、広大な荒野を馬にまたがり駆けていく。
クロエ・ジャオ監督は中国出身のアジア人だが、この映画もノマドランドも、全くアジアと関係のない題材なのは興味深い。むしろ、古き良きアメリカを慈しむようなものを感じさせる。出自でその個人の資質を測れないのは当然のことで、アイデンティティ・ポリティクスには必ず限界があるのだが、彼女のような才能の出現はそれを如実に示していると思う。

杉本穂高