劇場公開日 2019年3月8日

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「これぞ哲学」運び屋 pipiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5これぞ哲学

2021年2月3日
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鑑賞方法:VOD

泣ける

笑える

知的

人に歴史あり。誰しもそれぞれが生きた時代に翻弄されながら、その中で様々な葛藤と成功と挫折を繰り返し味わうものだ。日常の何気ない習慣はその人物を形作ってきた過去のエッセンスを物語る。カーオーディオから流れる音楽、女性にもギャングにも自然体で放つ軽妙な軽口。そんなところからも、この老人の若かりし頃を察する事が出来る。

昨今の技術革新速度は目覚ましい。電子ガジェットは10年も待たず陳腐化するし、差別用語認定された言葉も差別の意図なく用いられていた時代もあった。
自分の生涯、半分以上を占めてきた常識を否定してまで、たかだか10年20年ぽっちの最近台頭してきた「新常識」に迎合する必要はあるのか?
ガンコ爺ィにはガンコ爺ィなりの気概があるのである。

昔はもっと縦の関係であらゆる世代と親しく話す機会があった。
かつて歳の離れた友人や先輩であった彼らは、今や60代、70代のガンコ爺ィになった。けれど、若い頃に彼らから伝え聞いたバックボーンの時代背景を知っているから、彼らの言動を奇異だとは思わない。今の若者の目にどう映るかは知らないが、老境の悟りに到達すれば、周囲のまなざしに臆する必要もないだろう。

しかして、齢80、90に達しても葛藤の選択を迫られ続けるのが人生というものらしい。主人公は壊れた(壊した)家族関係の修復を選んだ。犯罪に手を染める事になっても。
クライムサスペンスだが、非常に「静か」である。興奮もアクションも不要なのだ。もはや、そんなものは主人公の心を波立たせはしない。彼の心を揺らすのは家族達の想い、ただそれだけなのだから

アプローチはまるで違うが東京物語がよぎった。これは「イーストウッド流東京物語」である。
切なく哀しく、そしてハートフルでもある。喜びも悲しみも、すべてが穏やかだ。

それにしても、子供時代のヒーローは幾つになろうとヨイヨイになろうとカッコいいもんはカッコいいのである。
視聴後、数十年ぶりに44マグナムの刑事に会いに行った。どうやら映画というものはタイムトラベル機でもあるらしい。

pipi
NOBUさんのコメント
2021年6月12日

おはようございます。
  家人は、私には過ぎた聡明な女性だと思っています。
  「狼をさがして」期待感が増しました。
  有難うございます。

NOBU
NOBUさんのコメント
2021年6月11日

重ねて重ねて。
 素敵なレビューですね。
 今サイトのレビュアーに”W”と言う方がいらっしゃいますが、知的レベルの高さ、読み応えのあるレビュー内容ともに近しいものを感じます。
 そして、自分のレビューを書き直したくなります・・。
 閑話休題、明後日、「狼をさがして」を映画館にて、鑑賞予定です。
 年齢的にこの映画で扱った事件はリアル体験ではないのですが、楽しみです。

NOBU
NOBUさんのコメント
2021年6月11日

重ねて。
 お心遣い有難うございます。
 薄ーくしたお酒なので何ともないのですが(伊集院静の”γ-GTP”の値に比べれば、可愛いものです・・。)
 枕頭には毎晩優しき家人が用意してくれている”聖水”があるので、大丈夫です。(十二分に、おバカ・・。)
 愚かしきトランプと同じ、ショートスリーパー体質なので、今から読書タイムです。では、又。

NOBU
NOBUさんのコメント
2021年6月11日

今晩は。
 共感有難うございます・・。
 けれど・・、私のレビュー・・”これ、今サイトを【映画鑑賞履歴】で使っていた時のモノじゃない!”
 穴があったら覗きたい・・、じゃなくって入りたい・・。
 本日、現場に半日出ていて、1L程汗を出したので、1Lキッチリ酒で水分補給した毎週金曜日はAM5:00からエレカシを口ずさみながら働くNOBUでした。
 ちなみに、汗が染みた服装で観た映画は、面白かったですよ。では、又。

NOBU