劇場公開日 2023年9月22日

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「リチャード・リンクレイターの手腕」バーナデット ママは行方不明 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5リチャード・リンクレイターの手腕

2023年9月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

予告だけ観て少しナメていました。ミステリーな展開を絡ませ、ブラックユーモアもありだけど、結局はハートウォーミングなファミリーコメディかな、くらいな想像で「まぁ、ケイト・ブランシェットなら観ておかないと」というテンションで挑んだのですが、、、
シアターに着き、いつものルーティーンで取り敢えずアプリからチェックイン。チラっと解説に目をやると108分と観やすい尺。そして、見るともなしに目に付いたのが「リチャード・リンクレイター監督」の文字。あら、「ビフォア・トリロジー」の監督だわ。今週の私はジョン・ウィックに気を取られすぎていました。いかん、いかん。。で観終われば、やはりというか当然の人の心情に対する深い掘り下げをさりげなく表現していて、且つ、登場人物全員に何らかの共感を感じます。特に後半はちょっとの刺激でも心に刺さり、疲れ気味のオジサン(私)の涙腺を刺激します。
ケイト演じるバーナデットは相当にややこしい人物で、正直、生身の私ならあまりお近づきになりたくないお方。特に「敵対関係」にある隣人オードリー(クリステン・ウィグ)とのバチバチは、もし肉親だったらついつい目を覆いたくなる心境です。
しかし、中盤に発覚するある事件をきっかけに、バーナデットの過去、夫エルジー(ビリー・クラダップ)との結婚、さらに愛娘ビー(エマ・ネルソン)の誕生が語られ、これまで彼女が抑え込んでいた想い、そしてその抑圧にもがき苦しみどんどんと内向化しつつも、愛するビーに救われ、ビーのために「これじゃいけない」と奮起する彼女に胸が熱くなります。
そんなバーナデットの愛する娘ビーがまた素敵でスーパークール(超カッコいい)。自分を世界一愛してくれている母親をとても理解し、誰よりも愛し返していて、この母娘のシスターフット感が羨ましいほどに素晴らしい。
かく言う私は、正直「夫」としてのエルジーに共感する気持ちもあったのですが、後半「父」としてのエルジー目線で見るビーの言い分にはほとほと参り、またこんな娘に育てたのはまさにバーナデットなのだと頭の下がる思いにさせられます。
勿論、そんなエルジーやオードリーにだって過去や背景、そして思うところがあることをきちんと見せて切り捨てません。
いやはや、108分によくここまで詰め込み、且つ、完璧にまとまっている。やはりリチャード・リンクレイターの手腕は流石です。恐れ入りました。

TWDera