劇場公開日 2019年4月5日

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「クリスチャン・ベールって変身しないとダメね」バイス うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5クリスチャン・ベールって変身しないとダメね

2023年4月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ゲイリー・オールドマンが『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』で、オスカーを獲得したことには、何となく違うものを感じていた。簡単に言うと「原型がない」特殊メイクで演技をすることに価値を感じないから。

アンディ・サーキスが素顔で出演して演技をしても評価されずに、『スターウォーズ』とか『ロード・オブ・ザ・リング』あたりが絶賛されるのとは対極で、クリスチャン・ベールは「太って」「髪をそって」変わり果てた姿で演技をしたということらしい。あえて不摂生した姿が、チェビー・チェイスそっくりなのは何という皮肉か。だったら彼をキャスティングすりゃいいじゃん。とにかく、この映画でゴールデングローブ賞を獲得し、オスカーにノミネートされたことは、一定の評価ととれるだろう。

私としては「原型がない」。以外の何物でもない。ちょっと乱暴な例えだが、フレンチの達人が和食を作ってもおいしい。遊んでても結果が伴うみたいな評価のされ方はおかしいと思う。

この映画は、政治を皮肉って笑える映画を目指したらしい。権力者を茶化して笑いを取るのはチャップリンが捨て身の演技でやってのけた。それに比べれば、クリスの演技は大したことない。一本調子で、薄ら笑いを浮かべ、アメリカというシステムが生み出したモンスターを演じても、ひとつも面白くない。それとも怖がってほしかったのかな?

クリント・イーストウッド作品『アメリカン・スナイパー』は、静かに胸の内に語り掛けてくる。見終わった後の、何とも言えない感動は、しばらく波のように押し寄せる。この映画は、対極だ。何の感動も押し寄せてこない。

おまけの映像は、「権力者がこんな横暴を尽くしても、民衆は『ワイルド・スピード』の新作ほどには興味を持たない」という皮肉たっぷりのメッセージ。

みんな分からないの?王様は裸なんだよ。って言いたいんだろう。

2019.4.9

うそつきカモメ