劇場公開日 2019年8月24日

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「いやー、夢中になった。だけど、」ディリリとパリの時間旅行 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0いやー、夢中になった。だけど、

2020年9月14日
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鑑賞方法:DVD/BD

作品の作りについて感想を述べたい、

①【ジェンダー】
ジブリ社が「ディリリ」を“隠れパートナー”にして彼女に語らせたのは、やはり理由があるだろう。

ジブリはまだここまではストレートに男女差別や人種問題・環境問題にタッチ出来ずにいるから。
だからフランスのミシェル・オスロ監督と提携したのはジブリ側の“様子見”なのだと僕は見た。
恐らく“地雷”ともなるだろう新しい分野への手探りとして。

思い出したのは国民的人気アニメ「ちびまる子ちゃん」シリーズだ。白人の男の子とまる子たちのほのぼの交流&涙の別れというものがあったが、外タレもののアニメがヒットするためには、ゲストで登場する外人の子は日本語のあまり出来ない孤独で可哀想な存在である必要があった。
日本は今そこ。

もしも、
ジブリが国内版で、白人女性や帰国子女に人権・環境問題を語らせるアニメを作れば日本では総すかんな筈。

いつも思うのだが、何ゆえ日本人は白人女性に物を言われたり、年少者に非を指摘されたり、帰国子女や在日が発言している姿にあそこまで拒否反応を示すのだろう。
怖いのだろうか?

ヤフコメの炎上・叩きは本当に凄まじい
―「ディリリ」の名がもし「グルダ」なら?(笑)
そして彼女ディリリが可哀想な植民地出身の混血児ではなくて白人やSEALDsなら?そこに引き起こされる反応は想像に難くない。どうなってしまうことやら。
ジブリが“グルダ映画”を作れば・・(そんなチャレンジは時期尚早だろう)襲撃を受けてジブリ社は消えてしまうだろう。
だから様子見のオスロ監督頼みの試験興業だったのだと僕は見た。

女に説教されたり、女たちを四つん這いにさせて上に座る男をアニメで見て、顔をしかめこそすれ 笑える日本人男性はいないはずだ。

②【エンターテイメント性】
本作には著名な故人が大量に“友情出演”している。
それはそれで画面の隅々にまでアールヌーボーや当時のフランス文化に夢中にさせてもらえる演出。「ミッドナイトインパリ」以上に彼らが動き出してくれる脚本は、僕としては非常に面白かったが、台本が本人たちの許諾を得ていない以上出演者は別にヒットラーや東條英機でも勝手に使えるわけで。
ある意味反則だよね。

( ⇒ロダンは女弟子のカミーユ・クローデルの体と才能を食い物にしたきらいがあるので監督が“友情出演”させたロダンは「男性支配団」の先鋒そのものなんだがなぁ)。

そんなこんなで、
ディリリが希求するテーマ(=①女性の地位獲得や植民地問題)と娯楽映画としてのベルエポックの紹介と語らせ方=②は、この二大要素のドッキングがちょっとすり合わせが不自然で消化不良だ。
俯瞰すればわかる。

③【それでもやる意義】
でもそれでもなお
監督はフランスの子どもたち若者たちに読み聞かせる“絵本”のようにこの映画を作り、祖父のように道徳訓を教え諭して現代の自国の課題に答えようとしたのだろう。
批判やこじつけへの反感をおしてでも監督はお話の中に共生への願いを込めたに違いない。

・・そんな事をぼーっと考えながらディリリの冒険を眺めた。

(冒険者大坂なおみの優勝の日に鑑賞)

きりん
kossyさんのコメント
2020年9月14日

きりんさん、おはようございます。
見世物小屋といえば、最近観た映画でいえば『エレファントマン』!
江戸川乱歩もそんな世界を描いてますよね・・・
あぁ、早く人間になりたい!!!

kossy