劇場公開日 2019年7月5日

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「絶対に観てほしい映画 (一部怖かったけれど…)」Girl ガール CBさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5絶対に観てほしい映画 (一部怖かったけれど…)

2019年9月29日
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鑑賞方法:映画館

一人の思春期のトランスジェンダー(身体は男性だが心は女性の)の一年?を描いたベルギー映画。

トランスジェンダー。俺は、わかったような顔をして、実は何もわかってなかった。そう痛感されられる映画。
いや、だからこそ、俺は映画を観る、そう言う気持ちを新たにさせてくれる。

バレエのレッスンのシーンもラストに近いシーンも、いたる所に痛みが。それも、身体的な直接想像できる痛みや、心理的な痛みが、ほぼ全編を覆っていた印象。
皆さまに観てもらいたい映画だけれど、心して観てくださいね。

まず、ベルギーという国がいかにLGBT先進国かがわかり、つぎにその国の中でさえ、Tとして生きていくことがどんなに困難に満ちているかを思い知る。だからこの映画はベルギー製作でなくては意味がないのだと思う。

家族も、周囲の理解も、医療的な措置も日本とはかけ離れて進んだこの国でさえ、いかに苦しいことなのか。衝撃だ。しかし幸い俺たちは、ベルギーに追いつく程度、LGBTを理解しようという低い目標があるから、まだ救われるのではないか。(おっと、自虐的なレビューになってしまった)

映画では、主人公は自分の思いを全く発言しない。観客としては、父親が言う「話してくれれば、何かできるのに」に同感し「話してくれればもっと感情移入できるのに」と感じるだろう。

しかし観ているうちに、主人公の思いは伝わってくるはずだ。 希望はいつもたった一つしかない。「今すぐ女の子の身体になりたい」

それはもちろん無理とわかっているから、今できることは、全てやっている。男性としての二次性徴を抑える治療はしているし、ホルモン治療も始めた。18歳になったら手術も受ける。

でも、女性なのに、身体は男性なのだ。

「『身体の調子はどうだ?』と毎朝聞く父親は治療中の自分を気遣っていると知っている。ホルモン治療がなかなか効いてこないが、健康のためには量は増やせないという理屈ももちろんわかる。ホルモン治療のせいで食欲がなく体調が良くないので、いったん治療を見直してみるというのが、私の健康を考えてのことだということももちろん頭ではわかっている。でも、女性の身体になりたいんだ、だって私は女性なんだから! それよりも健康が先ということだって、もちろん頭ではわかる。でも心では、今すぐ、少しでも早く女性になりたい が何よりも先なんだー!」
口に出せば、そんな悲痛な叫びになるのだろうが、それを言ったからといって、何か起きるだろうか ?

「急いでもいいことはない」という医師や父親の声はわかる、その優しさもわかる。それに上のようなことを言って、何かいいことがあるか?
「身体の変化を急ぐよりも、今 青春を楽しみなさい」という声だってありがたい。父親の「好きな男の子はできたかい」の暖かさももちろんわかる。だけど、だけど…
家族も親戚も皆理解してくれている。やれることは全てやれている、この理想的な環境下での彼女のフラストレーションは、決してセリフにはできない。

先の「だけど、だけど…」の中の…は、映画を観て体験してください。悪い人や悪意は、全く出てこない映画です。だからこその、もどかしさを観て体験すべきだと思う。

自分はLGBTの理解には、まだまだと自覚するが、それだからこそ、この映画を観られて、本当によかった。

CB