劇場公開日 2019年7月5日

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「通過儀礼」Girl ガール KinAさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5通過儀礼

2019年7月22日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

それは通過儀礼の儀式。
客観的に見て根本的な解決にはならないことも、ララにとっては必要不可欠で緊急性の強いもの。

朝起きて、ミロを学校に送って、地下鉄に乗って、バレエの練習をして、居残り練習もして、医者に行って、寝て。
ルーティン的に繰り返す彼女の日々を覗いているような気分になる映画。
手持ちのカメラは常に彼女を追っていて、ドキュメンタリーみたいだなとも思った。

くちびるをキュッと締めて口角を上げることの多いララ。
果たして本当に笑っていたのは、あの内のどれくらいだろう。だいぶ少ないと思う。
容易に想像できる辛い場面でも彼女は微笑むことが多くて、それが少し痛々しく、彼女からしたらウザいであろう心配の言葉をついかけたくなってしまう。

でも、「ミロのお姉さん?」と聞かれた時の笑顔の可愛らしさと言ったら。
何気ない言葉が一番の喜び。
零れる彼女の感情に嬉しくなった。
しんどいシーンも多かったけど、陽の面も細かく拾ってくれるところが好き。

言葉も表情も少なく激情を吐露することもなく「大丈夫」と繰り返してきたララの、「大丈夫じゃないから」の言葉に胸が引き締められた。
まだ16歳、ナイーヴな心の内を父親にそのまま伝えられるわけもなく。
イライラしながらも少しでも彼女に寄り添おうとする父の気持ちもわかっているんだろうけど。

そして彼女が起こしたアクション。
「追い詰められた」と言うとちょっとしっくり来ない気もする。とはいえなんと表現するのが適切なのかわからないが。
身体が一番重要なのではないし焦る必要はない、と医者たちは言っていた。私もそう思う。
でもララにはそこが最重要で、どんな悩みもまずそこで解消するものだった。
すごくすごく怖かったけど、最後の表情に少しホッとした。
正しいとか正しくないとかではなく、彼女にはこれが正解だったんだなと。
開けておいた玄関の意味。用意周到。

バレエ学校の女子生徒たちの身体とララの身体を比べるように映すカメラが憎たらしい。
きっとそれはララの目線だったんだろうな。
レオタードや水着になると強調される、生まれ持った肉体の差。
苦肉の策のテーピングは見ているだけで苦しい。
お手洗いに行けないから、激しいレッスンを全て終えた後じゃないと水も飲めない。

文字通り血の滲むレッスンの日々。
バレエシーンが妙に緊張感に溢れていて、なんだかちょっと怖かった。
足指のダメージの大きさは心にも負担が大きくのしかかるのが身て取れて、いいから早く休んでくれ~と思ってしまう。
さりげなく気遣ってくれる男子生徒が好き。

肉体と精神の性別が一致していても、たぶんどんな人にもコンプレックスはある。
それとこれを単純に一緒にする気はないけれど、心身の性の不一致の苦しみを心の底から理解できないとき、巨大なコンプレックスに近いのかなと思った。
身体の一部ではなく、身体全体が忌々しいものに感じてしまう、その感覚は相当なストレスだと思う。

この映画を通してそのストレスを自分に叩き込まれた気がする。鑑賞後、結構沈んだ気持ちになった。
ただ、ララの周りの人たちについてももう少し振って欲しい気も。
父親のプライベートとか、ミロの感情の行方とか。途中でミロが全然映らなくなって、何かあったのかとハラハラしてしまった。

KinA