劇場公開日 2019年9月6日

  • 予告編を見る

「【”高く飛んだら、落ちて死ぬだけ。”真に愛された事のない若者達の姿を苛烈に描く。】」タロウのバカ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”高く飛んだら、落ちて死ぬだけ。”真に愛された事のない若者達の姿を苛烈に描く。】

2019年12月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 20年前だったら、ファースト・シークエンスを観た時点で席を立っていただろう。(最近は自重しているが、席を蹴り上げたくなる場面である・・。)

 それ程、嫌悪感を覚えるシーンから物語は始まる。
 (私自身の時は流れ、映画内容を受け入れる訳ではないが、この後どうするのか?という興味を持って映画を観る事が出来るようになった。その行為の善し悪しは別にして・・。良いのか悪いのか・・。)

 場面はぶつ切りで、放り投げるように観客に提示されるが、徐々に映像に引き込まれていく。

 取り分け、母親のネグレクトにより学校に一度も通ったことが無いタロウ(YOSHI)(名前はあるが、無いのと同じという理由でタロウ・・)の言動が尋常ではない。

 タロウとつるむ、高校生エージ(菅田将暉:現在の彼のポジションを考えると、この役のオファーを受けた事に少し驚くが、彼自身の意思で受けたのならば、只物ではないなと思う。)とスギオ(太賀:2019年から仲野太賀に改名)も夫々の事情を抱えており、一般的な社会を拒絶した荒んだ生活を送っている。

 只、エージの高校中退の理由は何となく分かるが、一番理性を保っているスギオが彼らとつるむ理由が、ピアノの上手な同級生ヨーコ(植田紗々:全く知らず。とても魅力的な女優さんであった。)が援助交際を繰り返す(多分、彼女も愛を欲しているのだろう)状況への葛藤だけであるように観えてしまう所が弱く感じた。

 [心に残ったシーン幾つか]

 ・冒頭、小田(國村隼:瞬殺されてしまう・・、もっと絡んで欲しかった。)が遺体を運ぶ車中、吉岡(奥野瑛太)から請われ、静かに歌う”故郷”。”故郷”から見放された哀しい男性を悼むように聞こえた・・。

 ・スギオの父親がタロウとエージに”息子を抜けさてくれ”と頼むシーンからの息子が彼らに殴られる姿を車中で見ながら擦れた声で歌う”雪の降るまちを”
 息子との永訣の別れを口ずさんでいるようで、切なすぎた・・。

 ・スギオとヨーコのラブホテルでの遣り取りからのスギオの行動。壁に殴り書きされたスギオの言葉・・。

 ・タローが、公園で憩う中年の女性に絡むシーン。母親の愛に渇望している事が伺われ、観ていて辛い。(あの、中年の女性にも同情。狂犬に噛まれたのと同じである。)

<たった二人だけの友を失い、それまでの人間性がないような振る舞い、気味の悪い笑いは消え失せ、タローが慟哭する姿。
 彼はその後、人間性を取り戻すのか、それとも更に転落していくのか・・。複雑な思いが残った作品>

NOBU
2019年12月26日

NOBUさん🙇お疲れ様です✨

コメントありがとうございました。レビューに多大に共感し、喉のつかえも取れました🙏

NOBUさんの職場傍にミニシアターあるって良いですね。…私の近く(と言っても電車ひと駅ですが)には、塚口サンサン劇場って、ミニシアター+シネコンな昔からある劇場が良いんですよね…またレビュー読ませて下さい。

NIRVANA