グリーンブックのレビュー・感想・評価
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じわじわと心温まる
画用紙に水彩絵の具を垂らしたようにジワジワ幸福感が広がっていく映画。
教養ある黒人とがさつなイタリアの白人という組み合わせが面白い。
シャーリーはどこまで黒人が受け入れられる世界になったかを確かめるため、また、芸術の担い手は肌の色に関係ないと証明するように、南部を旅する。
黒人のピアニストの音楽を聴きにくるのに、その音楽家にはレストランもトイレもまともな楽屋も使わせない。個人的には差別していないと嘘をつき、地域の慣習だからと言い逃れする白人オーナーたちに、憤りを感じていくトニー。
最後の白人警官のくだりは権力者が登場するなかでも唯一ホッとする場面だが、結局、誰でも人を色眼鏡で観てしまう危険性があることを示唆している。
観客のほとんどは「またシャーリーが差別される!」と身構えたのではないだろうか。「人を見た目で判断してはいけない」というシャーリーの台詞を思い出し、思わず身がつまされる。
とはいえ、この映画は【それでも夜は明ける】のように差別を重苦しいトーンで描くものではなく、あくまでシャーリーとトニーの心温まるロードムービー。
ケンタッキーフライドチキンを初めて食べ、黒人専用バーで笑顔を見せるシャーリー。
黒人の才能を妬まず素直に誉め、ゲイへの理解を示すトニー。
放埒だけど根はいい彼と接することで、孤独なシャーリーの「城」が崩されていく様子が微笑ましい。
互いに理解できないことを無理して理解する必要もなければ、それを押し付ける必要もないんですよね。そういう対等であることの難しさと大切さを、この二人は教えてくれます。
トニーが戻すと見せかけてくすねたのか、シャーリーがわざわざ買い戻したのかわからない翡翠の石。
それを握りしめながら「寂しくなったら自分から動くんだ」というトニーの言葉を実行したシャーリーと、奥さんの最後の台詞に温かな涙が流れた。
それにしても、ヴィゴ・モーテンセンがもう60歳なことに驚いた。
【ロード・オブ・ザ・リング】のアラゴルンが未だ鮮烈に記憶に残っているので、この映画のおでぶっぷりは強烈(笑)役作りだろうけど。
今まで割とハードボイルドな役が多かった印象だが、ケンタッキーではしゃぐシーンなどコミカルな演技もイケますね。煙草を吸う仕草もかっこいい。
マハーシャラ・アリはドラマ「4400」を観ていたとき、その個性的な顔立ちから記憶に残る俳優でした。最近の活躍ぶりに感慨深いものがあります。
一粒で何度もおいしい映画
何度もクスっと笑えて最後はウルっとくる大変な良作
と同時に、1960年代米国における人種差別の在り方を肌で感じ考えさせられる実話でもある
鑑賞後に特に思いを馳せたのは、ドン・シャーリーの孤独がいかなるものだったかということ
ヨーロッパ系アメリカ人富裕層を相手に商売しているにも関わらず、決して同じ人間とは認められずいたる所で差別にあう
一方で、同じ立場であるはずのアフリカ系アメリカ人からも好奇と嫉妬の入り混じった目で見られる始末
人種差別意識が色濃く残る当時の米国において、ある程度の地位を得たアフリカ系アメリカ人が感じるであろう本当の意味での孤独に胸が苦しくなる
だからこそ、性格や気質が正反対であるトニー・リップとの掛け合いの可笑しさや旅を通し友情が深まっていく様子に心を救われ温かい気持ちにさせられる
素敵で微笑ましい凹凸コンビ
最後のシーンとエンドロールで涙がこぼれそうになるくらい(こぼれてはいない)にはのめり込んで観ていた
お薦めです
観たばかりだけどもう一度観たい
この映画に出てくるバディは、バディムービー史上かつてないほど凸凹の差が大きいコンビで、しかしそれを補いつつ、リスペクトしつつ関係を築いていく様子が、素直に良かった。
タイトルのわりに、この作品の中ではグリーンブックについて深く掘り下げたりしないが、そのようなガイドが存在し、必要だった、というだけで、充分ショッキングであった。
それと、ドクターの発した、「教養人ぶるために黒人の演奏を聴きにくる白人というセリフが、手厳しいけど、すごく良く分かりすぎてツラかった。
誰も本当に自分の演奏を聴きたくて聴きに来てるわけじゃない、そういうテイが欲しいだけ、というツラさにも共感したし、昨今のLGBTとかパラアスリートを取り巻く状況にも通じる所があって、ツラいです、、。
たとえ理解ある“フリ”だとしても、しないよりはマシなのか?
それは誠実じゃないから悪なのか?
じゃあ、そうと分かってそれに乗っかっている本人は…?
…いつの時代も答えの出ない問いです。
ヴィゴ・モーテンセンが、誰これ??レベルのキャラチェンを果たしていて、そのレンジの広さに猛烈にファンになった。オスカー獲って欲しかった。(けど相手がボラプのラミ・マレックならどうしようもない…)
コメディー的な間も素晴らしく、編集の良さもあるとは思うが、ケンタッキー州でのくだりは最高だった。🍗
ヴィゴの今後は追っていくことに決定。
人種問題を扱った映画としては、笑いがふんだんに盛り込まれていて軽く見えたり、2人がうまく行きすぎのようにも見えるかも知れないが、実話なのだからしょうがない。
気づきもあり、考えさせられもするが、幸せな気持ちになれる作品だった。
残念に思った点としては、音楽が時々スタートが早すぎて、直後の展開が読め読めになってしまう所があった。ベタを狙っての手法としてはあるのかも知れないが、おかげで時々興ざめしてしまった。
後から知ったけどピーター・ファレリー監督は『メリーに首ったけ』の監督だった。あの作品では死ぬほど笑わせてもらった。
とはいえ、『グリーンブック』という人種問題を扱った作品を作るのに、ピーター・ファレリー監督が最適だったのか私にはよく分からない。もっと良く作れた監督もいたかも知れないし、いなかったかも知れない。
でも他の監督であれば、このように軽妙でキャッチーなものにはなってなかっただろうと思う。好みの分かれるところかも知れない。
余談だけど、グリーンブックを作った人(グリーンさん)の物語もきっと様々な山あり谷ありだったことが想像できるので、映画になったら良いのではないかと思った。
さらにどうでもいい余談だが、訳が戸田奈津子さんだったのだけど、油断したころにお約束の「〜なので?」が出てきて噴きそうになった。そんな戸田さんが好きです。
アラゴルンがステキな役者だった
扱ってる題材は重いのにとても観やすい映画だった。ここを見てくれぇーーー!的な演出が多い昨今。過剰な演出がなく役者の演技が光った。
アラゴルン大好きだった私ですが、ヴィゴモーテンセンの映画はあまり観たことなく、すごく良かった。トニーにしかみえない。
ピアノ弾いてるのでこういう作品には甘めですが単純に好きです。教養のないトニーが演奏を聴いて素直に感動するのも、心がある、て力説するのも。人間てハートなんだよな、て。
どうしようもない心の葛藤を吐き出した時に、かける言葉が見つからなくて何も言えないのは、リアルで良かった。お涙頂戴は冷める。
最後の公演最高だったと思う。ラストも涙と笑顔が出た。
6勤の最後の土曜日に見ても良かったと思える映画でした📽
最後だけ感動
途中はずっと普通でつまらなかったが、最後だけ感動して泣けた
最後の方の ⚪⚪が運転するところ、警察官が⚪⚪する行動、 家に⚪⚪が訪ねてくるところは想像できてしまった
すべてが完成された作品
物語は実話を基にしたもの。
まだ黒人差別が色濃く残る1960年代に、黒人の天才ピアニストとイタリア系白人の運転手が、アメリカ南部を旅しながら演奏していくという話。
最初は黒人を毛嫌いしていた運転手が、彼の才能と人柄に考え方を変え、ピアニストも自分にはない魅力を運転手から得て、心を通わせていく。
物語はシンプルだが、家族愛、ロードムービー、音楽など、エンターテイメント要素が多くあり、まったく飽きずに引き込まれる。脚本も秀逸で伏線も気持ち良く回収していってくれる。暴力を得意とする運転手に、どんな時でも暴力を振るうことは負けなんだと説くピアニスト、心に残るシーンやセリフがたくさんあり、鑑賞後の余韻が気持ち良い。
黒人だけが集うバーで、初めて楽しそうに弾くピアニストの演奏には心が震えて涙が出た。アカデミー賞作品賞は文句なしだと思います。
ほんの50年ほど前なのに
人種差別を題材にした問題作という前評判をちらほら聞いていたので,観ようかどうか迷っていましたが,観てよかった作品でした.
55年ほど前のアメリカの物語で,その時代の米国の様子がわかって面白かったです.南に進むにつれて差別が激しくなって,北へ戻るとましになってくるという様子が描かれていました.旅中で,黒人であるゆえのトラブルが多く起こるのだけど,それぞれ,耐えたり,抵抗したり,回避したりとその解決策が色々で楽しめた.これこそが,バディムービーの王道なのかな.黒人やヨーロッパからの貧しい移民に対する人種差別を訴えることがこの映画の一つテーマであろうけれど,鑑賞後,心の中に優しさと温かさが残りニンマリとさせてくれる不思議な映画でした.
ドライビング・最強のふたり
祝!本年度アカデミー賞作品賞受賞!
…でなくとも見たいと思っていた。
『ヘルプ』『ドリーム』など、人種問題をユーモアとハートフルで包んだ作品が大好きだから。
当初地元の映画館では上映の予定は無かったが、アカデミー賞を受賞した事で急遽上映が決定、先日見た『ROMA ローマ』と共にこの春見れて嬉しい一本。
とにかくドストレートに、実話ベースながら王道とでも言うべきストーリーと、主演二人の好演が心地よい。
トニー・“リップ”・バレロンガ。
イタリア系の白人。
ゴミ収集、大食い競争、クラブやギャングの用心棒…稼ぎの為なら何でもやる。
妻子あり。
家族思いで陽気な大食漢だが、ガサツで時に荒々しく、口も悪い。手が出る事もしばしば…いや、しょっちゅう。
食って、飲んで、タバコを吹かして、びっくりのブヨブヨ体型ながら、ヴィゴ・モーテンセンにまた一つ、名演と代表作が。
ある日トニーに、運転手の仕事が舞い込む。
その雇い主が、ドクター・ドン・シャーリー。
ドクターと言っても、医者ではない。天才的な黒人ピアニスト。
その演奏は、ピアノとは無縁のトニーすら魅了するほど。
品行方正で、気位が高く、知性にも溢れている。
まるでお城の一室のような家は、高級装飾品や王様が座るような椅子、何処ぞの部族長が着るような服などでいっぱい。
麻薬のディーラーからカリスマ性たっぷりの天才ピアニストまで、マハーシャラ・アリは紛れもなく今随一の黒人スターだ。
吹替ナシのピアノ演奏シーンは、圧巻!
本当に人徳と魅力に溢れている。
何もかも正反対の二人。
白人と黒人。
非リッチとリッチ。
無教養と教養。
陽気と堅物。
粗野と真面目。
当然、最初は全くソリが合わない。
トニーはドンのいちいち細かい指摘が面倒臭い。
ドンはトニーのいい加減さが気に障る。
しかし次第に、お互い補っていく。
ドンはトニーに、自分とは違うものの見方、考えを教える。手紙の件はユーモラスであった。
トニーはドンに、もっと人生を楽しく生きる事を教える。ケンタッキー・フライドチキンが美味しそうであった。
ぎこちなくて、ぎくしゃくして、徐々に歩み寄って、時に衝突して、喧嘩して、やがて芽生え、育まれていく。
この旅の中で。
ドンのコンサート・ツアー。
ただのツアーではない。
この時代、訪れる地域が問題。
1960年代の米南部と言えば…。
言うまでもなく、ドンには差別が襲い掛かる。
チクッと刺さり、じわじわボディーブローのように効いてくるような偏見から、あからさまな差別、実際に受けた暴力まで。
苦境、苦難の連続。
この南部ツアーの3倍の契約金の北部ツアーの話もあった。
でも、それを断って、南部ツアーへ。
何故?…などと愚問。
信念と勇気。
トニーも当初は人種差別意識があった。
序盤、黒人工が使ったコップを捨てる。
その時の事を、ドンの面接時に、“もてなした”と平気でデタラメを言う。
この仕事を引き受けたのも、単に報酬が良かったから。
運転手兼用心棒ならまだしも、黒人の雑用その他諸々の召し使いみたいな真似なんてやってらんねぇ!
しかし、この目で、自ら差別に立ち向かっていく者の姿を見て…。
幾らぶっきらぼうでも、心境や意識が変わらない訳がない。
監督がピーター・ファレリーだとは驚かされる。
勿論彼らしく笑いもあるが、おバカ/お下品ではなく、ついニヤリ、クスリと顔が綻ぶ。
笑いと、人種問題と、感動のドラマを織り交ぜた新境地は、お見事!
実話ベース故、トニーもドンも実在の人物。ちょいと調べたら、トニーが役者もしていたのは驚きだが、脚本に、トニーの息子が携わっているのもこれまた驚き!
なるほど、だからか。父と深い友情で結ばれた友の話を、こんなにも温かく、優しく描けたのは。
地位や住まいは恵まれたドン。
しかし、この旅で我が身で知った現実、そして本当は孤独な胸の内…。
「黒人でも白人でも人間でもない私は何者なんだ?」…悲痛な叫び。
そんな彼に、ぶっきらぼうながらも、好アドバイスするトニー。
「あんたにしか弾けない演奏がある」
ドンがクライマックス、ある場所で弾いた“自分の”演奏は、まるで解き放たれたかのような素晴らしさ!
視野の狭かったトニーに視野を広く受け入れる事、暴力では何も解決しない事を清く正しく教えたドンだが、実は彼の方こそが、人生に於いてもっと大事なもの、欠けがえのないものを影響受けた。
人種問題や人の尊厳が本作のテーマだが、本作がこれほど多くの人から支持される理由は、身近で普遍的な人の有り様が描かれているから。
一部では白人目線の理想、お綺麗事と批判されてるようだが、
ラストのアットホームでウェルカムなメリー・クリスマス、二人の旅路~終着点まで、心満たされた。
よく知ること。
観終わった後、優しい気持ちになる映画。だけど観客に、差別と偏見について考えさせてくれる映画だった。
とても丁寧に作られていて、印象に残るシーン、胸に残る言葉がいくつもある。主人公は、家族を大切にして、ずる賢いけれど、子供のようなところもあって、とても魅力的。二人が助け合い、本音で言い合ってお互いの心を知る過程に、羨ましくなる。
この映画を観ると、どうして人は差別をするんだろう、と考える。バーでお酒を飲んでいるだけで暴力を受け、夜に外出するだけで逮捕されることが、不合理なのは明らかなのに。ドクに会うまで偏見を持っていた主人公が、偏見をなくすこの物語の中の過程こそ、その問いに対する答えの一つだと思う。
差別は過去のものではなく、まだ世の中に存在する。この映画は、それに対しても声を上げているように思った。
流石のアカデミー作品賞
流石のクオリティ。人種差別を扱ったテーマ性といい、対照的な2人の旅路といい、つまらない筈がない。特に、最後のコンサートのキャンセルの後の流れは心地良い。実直な警察官がパンクを指摘して道路整理をしてくれたり、疲れ果てたトニーリップを家族とのクリスマスパーティーに送り届けるためにドクターが運転手を代わる場面、刺々しい南部の描写の後だったから、じんときたなぁ。
俺は嘘は言わない。デタラメを言うだけ
トニーにとっては嘘は騙すこと、デタラメは騙すわけではないらしい。
確かにトニーは誰も傷つけたりしない。暴力はたまにあるけど
一番好きなのは、『俺も知ってる、世の中は複雑だ』
黒人に対する差別、白人への逆差別、黒人の黒人に対する嫉妬などを、簡単な言葉で言ってのける。
愛するトニーの性格に、シャーリーも心を開いていく。
助け合ってツアーを乗り切る。
ツアー中、腹立たしいことがたくさんあるが、2人の友情は深まっていく。
途中、辞めないで欲しいと言えなくて、お金でトニーを引き止めようとするシャーリーの表情が子供のようで可愛らしい。
何故あそこまで肌の色で差別するのか、知識不足の私には理解できないが、きっとこの映画で馬鹿らしいと感じてくれる人がいると信じたい。
3月9日
『最強のふたり』も好きやし
この映画も好き!
ケンタッキーフライドチキン食べるシーンと
クライマックスゆうか レストランからの…
バーで即興演奏、雪で車のパンク、自宅帰っての…
ラストまで、シンプルに好き!
今年 大学卒業の姪っ子と観て来ました。
感想聞いたら
「最初の方 眠たけど、最後まで観て 良かった」
やて
『卒業おめでとう』
ご機嫌なリズム
映画そのものが音楽となりリズムとテンポが心地よく奏でる多幸感溢れる作品。『バディ』モノとして完璧に近い関係性が出来上がっていく幾重の問題を上手く取り込みながら知恵を絞りクリアしていく様を痛快に鑑賞できた。
実話を元に描かれているとのことだが、正に差別問題を真っ向から取り組みながらもアメリカならではの多層な人種故の応酬の切り返しが或る意味羨ましくも感じる。
と、ここまでは手放しで今作品を楽しめたのだが、鑑賞後にネットで深掘りしていくと、どうも当事者であるアフロ‐アメリカンの人達はこの作品を快く思っていないらしい。というのも制作に主人公の子息が加わっていて、いわゆる白人目線での『なんちゃって差別撲滅』作品だという評価らしいからだ。こちら側から寄り添ったのだから有難く思え的発想なのだろうが、それ程屈折した捉え方をする程までこの問題は根深いと言うことなのだろう。只、少なくてもこの二人の友情には嘘は無いように感じるさせる作りである。それに、そもそもお互い移民なのだからその根っこは理解し合えるだろうし、だからこそ共通部分を認め合えば、心の深いところで結ばれることを証明できる作品であることは間違いない。例えばそれが人種差別だろうが、性的差別だろうがである。
そして今作の最大のオチは、妻の感謝の言葉であることは紛うことがない。妻は夫からの手紙の劇的な表現の進歩により、夫の成長を喜んだ筈だ。そしてその手助けをしてくれたアーティストに対しても最大の敬意と感謝を伝える。これ程迄の補完な関係を映画に落とし込めたスタッフ・キャストへの惜しみない賛辞を贈りたい。小ネタの全ては理解出来なかったが、細かいフリとオチもアメリカの小気味よいスタンドアップコメディを彷彿させるようで、改めてそのリズム感の真髄を体現できたことに感謝である。クリスマスショーを蹴っ飛ばして、黒人バーでのクラシック曲、そしてロックンロールへの流れは、自然と自分の体も共鳴してきて気が付くと体を揺らしていたことに我ながら驚いてしまった。堅いこと抜きで、人情話として大変愉しめる良作である。
文句なし。
テンポ、展開、テーマ、キャスト全部良かった。
トニーとドクの関係が絶妙でした。
ぶっきら棒で黒人に偏見のあるトニー
天才ピアニストだが黒人への差別に悩むドク
二人でコンサートツアーを回るに連れてトニーは偏見がなくなっていき、ドクはそんなトニーに救われたのだと思います。
偏見がある割に仕事はしっかりするし。
人間味があり、濃すぎない良い作品でした。
ドクは畑を耕す人達を見て何を思ったのでしょうか?
心に残ったのは
やっぱり、中年の友情っていいよね。ベタベタ過ぎず、遠過ぎず、だけど多くは語らずとも通じ合うみたいな。
見終わった後は、爽やかな余韻が残る、そんな映画だった。
心に残ったのは、トニーがシャーリーに放つ「寂しい時は自分から先に手を打たなくちゃ」という言葉。
誰かが構ってくれる、救ってくれるまで待つ悲劇のヒロインになるのではなく、自分からアプローチする。
正直、自分の胸に刺さる。
だけど、最後シャーリーがクリスマスパーティーに自ら赴き、自分の殻を破れたのを見て、勇気をもらった。
余談だけど、ヴィゴ・モーテンセンめちゃくちゃカッコよかったなあ。
おっさんには、オスカーの凋落と打算しか本作には見いだせなかったよ。
去年のアカデミー賞はマイノリティ、ダイバーシティヨイショの極端な過敏反応のせいで、クソみたいな同人誌映画「シェイプ・オブ・ウォーター」が受賞した。
もちろん前向きに見ると、「初の怪獣映画のオスカー受賞、イエイ」といえなくもないが、ただ単に、オタクが会員層の大部分を締め、「難しい」映画を理解できなくなったとも言えなくない。
そんなこんなのアカデミー賞の今年の結果はどうかと言うと、案の定の、会員があたかも全員一斉に集まって、消去法で決めたかのような、各部門の受賞結果。
もはや映画の内容、映画のデキには目を向けず、マイノリティ、ダイバーシティヨイショだけが選考理由。
結果、あげるべき人にあげてないくせに「ダイバーシティ」だとほざきやがる。
アカデミー賞は、業界人による、内輪の賞だが、もはやこんなももらって嬉しいか?というほどに、権威は失墜したと思う。
そんなことがはっきり見えたのが、この
「グリーンブック」
・
・
・
「既視感」というには、あまりにも退屈すぎる。ここで繰り広げられる物語は、表面上で起こったことしか見えない。というより、見せていない。想像力の欠如とでも言おうか、登場するキャラクターの背景が全くと言っていいほど、表面的だ。
ああ、脚本家の一人に、主人公の息子がいるからか。
もちろん、彼にとって父親である主人公は「ヒーロー」である。だがあまりにも物分りが良すぎる。まるで、事の流れに逆らわないように。
ドクに、「自分にしかデキないことをしろ」、というが、そんなキャラだったか?
そもそもドクが天才なのは誰でもわかるかもしれないが、彼がそこまでドクに「仕事以上」に心を通わせるのがわからない。
手紙?手紙の反応がトニーに戻ってきた描写はない。
plainとplaneのしょうもない話はともかく、主人公の「美しい平原広がる南部ツアー」の結果が黒人と仲良くなっただけなのも、ロードムービーの体をとってるくせに、つまらなすぎ。
ドクのほうも、全くと言っていいほど、ペラペラのキャラクター。
ちょっとだけホモネタ入れちゃう?とか、どうせ、そんなノリだろ?
南部に行く理由も、「勇気ある行動」で片付けられる。
勇気を示す理由は何よ?そして、そもそも散々引っ張った兄貴の件はどうなったんだよ?
つまり、こういう設定だったら、オスカー取れんじゃね?こういうシーン入れときゃオスカー取れんじゃね?ということしか考えていない映画。
グリーンブックというタイトルも、止まった場所に何かあるわけでもなく、地域性だって、ケンタッキー・フライド・チキンだあ?子供の映画か。(当時のクソ不味いアメリカのKFCをニコニコ食べる二人をギャグにしているのかもしれないが)
「グリーンブック」ってタイトルつけときゃ、アイロニックな感じが出るでしょうみたいなのりだったんだろうが、全く機能していない。
クライマックスに、黒人で溢れるBARでドクの演奏するシーンが有る。トニーが黒人限定BARに入るところこそが、本当は一番ドラマなはずなのだが、そこはお前ら、スルーかよ。
トニーが黒人限定なBARに入る、これこそまさに「『逆』グリーンブック」。
これで評価されるならまだ分かる。
追記
唯一の笑いどころは、銃を実際に持っていたところだけ。だが、これだって相当やばい「ネタ」なのに、もっと高いレベルの笑いにまで昇華できたはずだ。
結果、黒人をダシにして、主人公がお金を稼いで、物分かりのいい性格になり、手紙を書くのが上手になりました、っていうだけの映画。
鹿、ドロレス。
性格も見た目も真逆な二人のロードムービー。
笑いとシリアスが交互にやってくるけど、案外あっさりと安心して観られた。
計算も含め、人付き合いやコネ作りの上手い運転手トニー・リップ。
ドーンと腹の出た姿に粗野な振る舞いが下品に感じる部分も多く、最初はあまり好きになれなかった。
彼自身の持つ差別意識を序盤で見せられて少し沈む。
どこまでもエレガントなドクター・シャーリー。
創作物や実際の知り合いからなんとなくイメージしている黒人像とは全く異なる彼の言動がすごく綺麗で魅入っていた。
登場シーンのゴスペル衣装みたいな服に教祖様的な要素を感じて笑ってしまった。
というかまずカーネギーホールに人の住まいがあったことに驚き。しかも管理人部屋なんかではなく、あんな豪勢な。知らなかった。
始まる二人の道中はとにかくチグハグで、噛み合わない会話とギャップにハラハラしつつ何回も笑った。
決してトニーほどではないが私もガサツな方なので、ドクがちょいちょい姿勢を崩し始めるのがなんだか嬉しかった。
初めてケンタッキーフライドチキン、恐る恐る食すドクの仕草が可愛い。
骨なんて窓からポイじゃ!とノリ始めたにもかかわらず、ドリンクのカップは絶対に許さない。わかる。
急に真顔に戻るのやめてほんと笑うから。
初めてドクの演奏を聴いたトニーがめちゃくちゃ感激しているのがまた嬉しい。
相手の技を尊敬することから打ち解けが始まる。
結構マメに妻に宛てた手紙の内容からも、粗野だと思っていた彼の内面の感性豊かな部分が見えてくる。
平和なシーンに挟まれる、色濃く残る黒人差別の描写は胸が痛んだ。
上流階級の人がどれだけ振舞っても拭いきれない空気と全然納得のいかないしきたり。
グリーンブックなんて無ければいい。
しかし、毅然とした態度をあまり崩さないドクの姿によって重々しくなりすぎていなかった。
正直もっとズンと地に押し付けられるような表現が出てくるかと予想していたけど、今までの雰囲気の中に急に苦しすぎることが起きても困ってしまうので良かった。
それより小さなことからもチクチク刺してくる差別の痛みの方が大きい。
この扱いを慢性的に受けることがどれだけ辛いかなんて容易く想像できる。肌の色が違うだけなのに。
更にドクの中途半端な立ち位置が追い打ちをかける。
黒人からは異端児と疎まれ白人からは差別され家族のいない孤独な人。
雨の中車を降りて叫んだ彼に積み重なったものを思うとまた辛くなる。
最後の演奏をキャンセルすることで貫いた己の尊厳と人権。
そしてその後の「私だけのショパン」とジャズのシーンの圧巻さ、楽しさ。
あんなに朗らかに笑うドクが見られて心底良かったと思う。
演奏会後の笑顔とは全く違う表情に見える。
そして立場を代わってでも、友人をクリスマスの家族の元に届けられて良かった。ありがとう。
クリスマスの夜に友人の元に訪れることができて良かった。ありがとう。
ドロレスの「手紙をありがとう」のセリフでなぜか急激に込み上げ決壊した。涙腺崩壊。
良い話だと思いつつ「まあ普通だな、」なんて考えていたけど、この言葉で急激に。
文面の主などお見通し。そりゃそうか。
手紙を通してドロレスはドクと対面していた。
もしかしたらドクは自分の元妻への想いを文章に込めていたのかもしれない。
トニーの意外にも思える愛妻っぷりにももちろん感心だけど、ドクとドロレスの繋がりに非常に胸打たれていた。
この後お兄さんに手紙書けるといいな。
間違いなく良作。
ただ、期待していたよりずっと大味に感じた。
最初はウマの合わなかった二人がお互いを尊重し仲良くなる過程として良かったものの、特にインパクトの無いものに思えてしまう。
実話にケチつけるわけではないけど、なんとなくただの美談のような。まあ全然良いけども。
トリオメンバーの存在感の薄さも気になる。
ドクを理解しているとは思うけど静観が強いし、彼らが何を思っているのかよく伝わってこなかった。
最後取り残されてどうしたんだろうか。
テンポは良かったけどわかりにくい点も。
戻したはずの「お守り」こと翡翠石が戻っていたのは何なのか、ドクが一人で出歩いた理由は何なのか。
予想はつくけど確信が持てない。私が集中できていなかっただけかな。見入っていたはずなんだけど。
何にせよ、ドロレスの言葉だけで全てチャラだしまんまと次の日のディナーにケンタッキーフライドチキンとボンゴレビアンコ食べたしティッツバーグ州に巨乳がいなかったことにがっかりしてるし、心に残る良い作品だった。
入れ替える→元に戻す
「黒人運転手」+「白人客」という組み合わせは50-60年代のアメリカにおいては当然のように見かけられる光景だったろう。
だが「白人運転手」+「黒人客」という逆の組み合わせをやってから、元に戻してみる。最後だけ、黒人に運転手をさせてみる。
するとどうだろう。周りの人々からしてみれば当たり前の光景に、当人たちにしか分からない特別な何かが育まれていると感じられる。
当たり前の光景がいかに特別なものであるか、それは長い旅路を経た2人の主人公(そして観客の我々)にしか分からない。
奴隷として強要されたのでもなく、生活のため仕方がなかったのでもなく、親愛の情から、運転手という役割を買って出る。
それは一切の差別のない世界においてかくあるべしとでも言うかのような、「自ら望み、喜んでやる」という自己決定に従った行いであった。
「黒人運転手+白人」という構図はいかなる事情を抜きにしても差別的である、と決めつけるのではない。
「黒人は貧しく粗野」「白人は豊かで教養がある」と一般化するのでもない。
「超富裕層の黒人」「貧困層の白人」という例外的な存在、個別の事例を踏まえ、よくある光景の背後にある物語を読み取ろうとする。
「黒人は皆等しく貧しく、困窮しており、救済が必要である」と考えることもまた差別である。
黒人だから、白人だから、といったフィルターを取り払って、個人の事情をよく知ろうとすること。
それが差別的ではないということの本質ではないか。
個々人の抱える事情=ドラマを経由してみる。
すると、「反差別的なようでいて差別的な人」からみれば差別的にも思える光景の背後に、こわれないよう守りたくなるほどの親愛の情があるのではないか、という可能性に気づかされる。
そのような可能性を見落とさないよう、個々人の事情に耳を傾けようという気にさせられる。
(もちろん、ドクター・シャーリーの金持ちぶりは映画向けに誇張されているだろう。それを差し引いても、当時の黒人として彼は例外的にリッチだったろう。だから黒人運転手と白人の乗客を見るたびに「その背後にドラマがあるかもしれない」などと考えるのも愚かに思える。ポイントはあくまで、黒人(に限らないが)=被差別対象あるいは社会的弱者、のような認識がむしろ弱者を弱者のままに据え置いてしまうこと、への警句にあると思う)
人種差別がここまで…
この映画を見てはじめて、人種差別がここまでひどいと言うことかわかった。
日本に住んでるから、全く感じたことない衝撃だった。
映画の中の二人は乗り越えて、お互いいい方向に進んだけど、この映画がきっかけで人種差別が減ったらいいな。
人生を前を向いて運転出来る。素敵な作品♪
今年のアカデミー作品賞を受賞した作品と言う冠だけでなく、好きな要素が盛り込まれた作品だけに観る前から期待してました。
ただアカデミー作品賞受賞作は賞狙いの意図とお堅い感じがしなくもないので、その辺りに一抹の不安を覚えながらも鑑賞しました。
で、感想はと言うと、素晴らしく素敵な作品♪
始まって直ぐに“これは素敵な映画が始まる”と言う予感に胸の高鳴りがしました。
カラフルで色彩豊かな60年代のアメリカの街並みとポップなアメリカン・オールディーズナンバー。
美味そうなファーストフード。
少し背伸びをしたくなる素敵なジャズ。
普段は合間見える事の無い人物同士が8週間の時間の中で知り合うだけの十分な“何か”が起こるであろう旅。
最初から最後までワクワクしました。
様々な人が書かれてる通り、「最強のふたり」に共通する部分も多々ありますが、より複雑で様々な要素があります。
上流階級で上品。ピアニストとしての名声も得ていて、金持ちで雇い主の黒人のドク。独身。
どちらかと言うと下流階級で粗暴で下品w。仕事に溢れて雇われている、黒人が嫌いなトニー。既婚で幸せな家庭があって、奥さん気立てが良くて綺麗。
合わない筈の2人なのに、互いが徐々に通じ合っていくのが染み入る様な感じで、旅先で起こり事件や出来事も旅先なら起こりうる事なので納得。
事実を元にしているだけに過剰な脚色が無いのも良いですね。
「最強のふたり」よりも少し複雑なのは互いの立場の設定と、人種差別が色濃く残る地域の事と「LGBT」問題なんですが、それぞれの問題が作品の本質を加味していても邪魔をしていない事が素晴らしいです。
終盤に差し掛かってドクの心情の告白は切ないものがあります。
黒人である事から白人に強いたげられ、同じ黒人からも軽蔑される。
自分がとちらからも孤立する疎外感と孤独。
ドクの叫びがキリキリと突き刺さります。
また、ラストで行うコンサートで古くからのしきたりとばかりにレストランでのドクの食事を認めないのに、契約を盾に自身の正論を発する支配人にはムカムカ。
他にも人種差別に対してムカムカする所も多々ありますが、その都度頼りになるトニーだったり、ドクの凄い人脈だったりで事件解決。
ラストの黒人御用達のダイナーでのライブではスカッとしながらも同じ黒人達に受け入れられた様な時間に少し優しい気持ちになって、長時間の運転に疲れたトニーの代わりにトニーのクリスマスに間に合わせ様と運転をするドクの優しさにじんわり。
トニーの家族とのクリスマスパーティに自ら出向いたドクを暖かく出迎えたファミリーに胸熱になって、ドロレスとドクが互いに伝えた言葉に涙腺崩壊。
ツッコミがあるとすれば、ドクとトリオを組んでいた二人は嫌な奴の様に見えてもそうではないが、だからと言って理解はあっても実は良い人だったと言う訳でもなく、もう少しキーパーソンになるかと思いきや、そうでもなかった事。
ドクとトニーが最後のコンサートをキャンセルして、出ていったけど2人の事は触れられてなかった事かなw
ドクがトニーに運転中に何度も言っていた“前を向いて運転しろ”の言葉はただ単に安全運転だけの言葉では無い様に感じます。
人生に対してもそうだし、むしろ自分自身に向けて、発した言葉ではないのかな?と感じました。
「最強のふたり」「ターミナル」「ジャージーボーイズ」が大好きで、これらの作品に通じる面白さがありつつも、面白くて、クスッと笑えて、何処か爽快で、少し人生や社会に悩んで、良い涙が流せる。とても素敵で素晴らしく、いつまでも余韻が残る作品です。
アカデミー作品賞を受賞するだけの素晴らしい作品です。
未鑑賞の方は是非!絶対にお勧めです♪
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