劇場公開日 2019年10月18日

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「配役は良い、脚本はもうひとひねり」楽園(2019) erimakiさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5配役は良い、脚本はもうひとひねり

2019年10月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

原作は未読。他の吉田修一原作の映画も「悪人」「怒り」の二作しか観たことがありません。しかし、そのダークでディープな人間模様を描きながらもほのかに切ないテイストが両作とも好きで、監督が違うとはいえ、今作も楽しみにしていました。

しかし、観終えてみて、ストーリーを理解するのがやや難解に感じた。というのも、各登場人物の心情の掘り下げ方がやや曖昧・抽象的で、「この時このキャラクターはこう感じている」とはっきり表現しているような描写は少ない。ストーリーを深く理解するには、キャラクターのセリフのみならず、表情や演出、あらすじ全体像から自分でイメージすることが要求されるのではないか、というハードルを感じた。もちろん、原作を読めばはっきりわかる部分もおそらく多いものと思われます。

ただ、キャスティングは素晴らしい。イケメンキャラな印象が強い綾野剛は、情緒不安定な在日外国人というなかなかイメージが難しそうな役でもハマっていて、不器用さ、暗鬱さといったものが内から滲み出るようであったし、彼の母親役の黒澤あすかのやや狂気をはらんだような演技も相変わらず圧巻、佐藤浩市はさすがベテランの味が出ていてもはやどんな役でも安定して馴染んでいますね。

役者の素晴らしい演技によって、個人的にはもう一歩工夫が欲しいと思ったストーリー構成が何割増も魅力的なものに昇華されているのは間違いないと思いました。

erimaki