劇場公開日 2020年1月17日

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「「ラストレター」のメッセージは伝わったか。」ラストレター ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5「ラストレター」のメッセージは伝わったか。

2020年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

美しい余韻を残す作品である。恋心の描き方が巧みである。物語は高校時代と現在との二元で進行していく。高校時代の初恋はピュアで切なく瑞々しいものに、時を隔てて現在に蘇った初恋はピュアだけどおかしみがある。二つの時代の恋心を若い広瀬すずと森七菜と、ベテランの松たか子が魅力的に演じる。広瀬の安定感は相変わらず抜群だが、森の瑞々しい演技には心奪われる。手紙のやり取りが物語の中心にあるが、その行き違いで発生する気持ちのズレみたいなものが面白く描かれている。そのズレがラストで感動的なシーンにつながっていく所がとてもいい。「ラストレター」のメッセージも納得できる。
作品全体の雰囲気はとてもいいが、話の内容は疑問点満載で、少し気になるため若干評価は辛めになった。具体的に挙げると・・・
・乙坂は同窓会で会ったのが、未咲ではなく裕里だと知っててなぜ分からないふりをしたのか。
・乙坂が未咲と学生時代に交際することになったのは、いかなるいきさつがあったのか。
・乙坂に告白した裕里との関係はその後どうなったのか、裕里の気持ちを後押ししたかに見えた未咲はその後どうしたのか。
・未咲はなぜクズ男の阿藤と結婚したのか、母娘で暴力を受けながらなぜ別れなかったのか。
・裕里が未咲と疎遠になったのはなぜか、お互いに相手を思いやる姉妹だったはずなのに。
・未咲の自殺がそもそも疑問。可愛い一人娘を残して死ねるはずがないのでは。
・別れた後に、乙坂が送り付けてきた小説「未咲」の原稿を、大切そうに何度も読む未咲の心情が理解不能。

細かいことは気にせずに、監督の描きたかった美しさだけを鑑賞すれば、とてもいい作品なのかもしれない。

ガバチョ