劇場公開日 2020年1月17日

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「心地良い透明感」ラストレター 白波さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0心地良い透明感

2020年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

キャストや手紙や一人二役など、「Love Letter」のピースが散りばめられた作品。
とてもわくわくするキャスティングですよね。
中山美穂と豊川悦司、二人をこんな形で再会させるのも何とも憎らしい。
そこに「四月物語」の松たか子、福山雅治、神木隆之介。
そして一人二役の広瀬すずと森七菜。
この二人の澄んだ感じが本当に素晴らしいんですね。
作品の透明感は、この二人から生まれてるんじゃないでしょうか。
本当、全編を通して心地良い風を入れてくれます。
二人の「普通な」芝居も良く、二役もとてもスムーズにできていたと思います。
それにしても監督は女性、特に少女の美しさを切る取るのが本当にうまいですね。
少し青みがかった映像もきれいで、田舎の自然美を見事に写しだしていました。
家の中のしっとりとした空気もとても良かったです。
作品はとてもゆっくりとした流れで、何だか水の流れのよう。
ただちゃんと緩急もついており、少女達のいたずらで流れは急に速くなります。
なので一辺倒な感じはありません。
間々に学生時代のカットを挟み込む構成も良かった。
思い出をとても大事にしている感じが伝わってきて、物語にスッと入り込みやすかったです。
脚本や設定などには所々「ん?」ってなったりもするんですが、そういったところも何だか「らしい」ですね。岩井監督ならでわって感じでしょう。
でもラストに近づくとそんな事はどうでも良くなってて、再びゆっくりとした流れになり静かに物語は終わります。
あえて泣かせようとする演出が無かったのも良かったですね。
鑑賞後にはふわっとした心地良さだけが残りました。
とても素敵な作品です。

また、岩井監督がメガホンを取ったもう一つの「ラストレター」、「チィファの手紙(2018)」も秋に日本公開だそうで、こちらも楽しみです。
それに劇中で出てくる小説も実際に監督が執筆しているようなので、こちらも出版される事を期待しています。

白波