アルキメデスの大戦のレビュー・感想・評価
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怒涛のラスト20分の展開は見事
正直序盤は展開が遅いと感じる部分もありましたが、ラストの展開が本当に素晴らしく、興奮が抑えられませんでした。「史実に基づくストーリー」というのは先の展開が読めてしまうため難しいようにも感じましたが、それを逆手に取ったストーリー構成で感動しました。
戦艦大和を扱った一級のエンタメ作品です。
戦争物の映画は終戦の季節に作られる事が多いけど、その中でも戦艦大和をテーマにした作品はなんとなく別格なイメージで、原作もある程度読んでる事もあり、鑑賞しました。
で、感想はと言うと、面白い!
重厚なストーリーに今までの戦争物とは一味違った切り込み口に楽しめ、第二次大戦の日本海軍の象徴たる戦艦大和の歴史は日本人なら誰でも知る所ですが、その悲劇的な結末を知っていても、鑑賞中にグイグイと引き込まれる。
正直、ここまで面白いとは思わなかっただけに嬉しい誤算です♪
ストーリーは数学の天才、櫂直が超巨大戦艦の建造費のからくりを暴き出すと言う、原作の約3巻までのお話が軸となっていて、原作は現在も連載中な為、何処まで描かれるのかと思ってたけど、4巻以降の話を描かず、大和建造のきっかけとなる決定会議迄を中心にしてますが、これが良いです。
話は戦艦建造に当たる以上に安価な建造費のからくりを暴くと言う点に焦点を当てているのでかなり明快なストーリー。
ですが、これが個人的には大正解で、どうしても難しくなる当時の状況と政治情勢にちんぷんかんぷんにならず、約1週間程の出来事ではありますが、非常に濃密な1週間の為、ここをじっくりと描き、細部までに緊迫感を出してます。
原作もこのエピソード以降は話が大きくなり過ぎている感が否めなく、櫂直が数学の天才から、戦争を回避する英雄的な描かれ方をしているので、ちょっと肩透かしな感じがしてるので、ここだけに焦点を当てた事で登場人物に深みがあります。
キャストもかなり良い配役で菅田将暉さん演じる櫂直は数学の天才としての1面を見せながらも、ヒステリックな1面が少し未成熟な面を醸し出して、逆にそこが魅力になってて良い。
個人的に良かったのは田中役の柄本佑さんと尾崎鏡子役の浜辺美波さんと嶋田海軍少将役の橋爪功さんと平山中将役の田中泯さん。
柄本佑さん演じる田中は軍の緊迫した空気に櫂の違和感を感じた際のユーモラスさが物語のメリハリを打ち出しているし、徐々に櫂の頼れる部下となっていくのも頼もしい。
また、櫂と田中に共通するのは台詞の間合いとテンポの緩急が上手いので、終始ダレる事なく鑑賞出来ました。
浜辺美波さん演じる尾崎鏡子は令嬢としての凛とした美しさを醸し出している。
橋爪功さん演じる嶋田海軍少将は階級を盾に自分の覇権だけを守ろうとする小物感がイヤらしくて良いw
櫂直との対比が面白くて、流石名俳優さんです。
田中泯さん演じる平山造船中将は櫂と敵対しながらも、終盤には毅然とした軍人の覚悟がとても素晴らしく、戦争を回避出来ない状況に大和が礎となる未来を見越しての覚悟はこの作品の肝に感じました。
漫画原作でありながら、非常に見応えのある作品の一端はこの田中泯さん演じる平山造船中将かと思います。
戦艦大和のモノクロ写真を見ると何処か絵空事の様に感じながらも、巨大の一言では片付けられない迫力に怖さを感じ、遠い昔の話にも畏敬の念と言うか、畏怖の念を抱く感じがします。日本人にはそれだけ戦艦大和と言う存在は特別な物だと思います。
戦争映画は数多く在れど、戦艦大和を扱った作品はそんなに多くなく、また殆どが大和の乗組員を描いた作品ばかりなので、戦艦大和の建造に纏わる作品は切り口としてやはり面白いです。
難を言えば…
巨大戦艦の安く見積もられた建造費のカラクリが鶴瓶さん演じる大里社長の所でアッサリとネタバレしても、その後の決定会議では特に捻りもないのに“大里社長の台詞、そのまま言っただけやないかい!”と突っ込んだのとw、ラストに平山が見せた約20分の1の大和の模型の他に造船中の大和の迫力が見たかったなぁ。
オープニングのVFXも迫力あるし、出演者の配役も良い。開戦間近となる緊迫感と、同じ海軍内であっても、それぞれの派閥の覇権争いも見応えがあり、ラストの大和が建造され、出向するシーンも胸に迫るものがあります。
流行りの俳優が出演していると言う色眼鏡で見ずに一級の戦争映画・一級のドラマチックなエンターテイメント作品かと思います。
作中にあった平山の「日本国民は負け方を知らない国民」と言う台詞は当時なら非常に重く、意味のある台詞に思えますし、今の何処か調子に乗った日本と言う国に対してと重い意味を持ち、この国の未来を案じての警告でもあると感じました。
終戦から70年以上が経ちますが、戦争の悲劇と多くの犠牲の上に今の平和があると言うのは忘れてはいけない出来事だと思います。
過去にこういった戦争があって、大和と言う悲劇の戦艦があった。またそれらを忘れてはならない切っ掛けの一つとしながらも、小難しく考える事以上に、映画作品としての面白さを堪能出来る作品かと思います。
かなり超お勧めです!
美の在処 ~ 理論は論理より先立つ ~
世界からしても類を見ないほどの
超弩級戦艦たる〈 大和 〉は
我らの誇りを具現化したものであり、我らの希望
そして我らの美の、精神の象徴…
互いに国力を削り合うのが戦争と言うのであれば
実際、余力がまだある内に敗戦を宣言したほうが
利口な判断、論理かも知れない…
でも日本の尊厳を損なわずそれを行うには
新しい日本の礎となる“ よりしろ ” が
理論を成り立たせるために
大和が必要だったのかも知れない…
そんな深いテーマをさらりと提示して
なおかつ、見ごたえのある作品として
山崎 貴 監督が世に送り出した
一種変わった切り口の反戦映画
本作『アルキメデスの大戦』
「論理とは、思考による法則性、
つまり筋の通った “ やり方 ” を意味する」
「理論とは、言葉による法則性、
つまり知識体系を意味する」
と、一般的な辞書に記されていました。
【数字は嘘をつかない】として
〈論理的〉な数式を用いて
粉飾見積りの不正を導きだし、併せて造船所との
癒着を暴いた池井戸 潤的な(笑)
爽快カタルシスのあとの
【大和の存在意義】を戦後を見据えた上で
〈理論的〉に語る
心情カタルシスの、ふたつのカタルシスが
わたしの感性と感情を同時に刺激しました!
また終盤に至るまでの、男の信頼関係や
美しいものを計測、からの図面に向かう姿勢
戦争を止めようとした信念
そして美に魅せられていく感情…
それらを周到に印を踏まえた流れでみせていて
とても好印象に思いました♪
菅田将暉さん、柄本佑さん共に若いのに叙情的で
色気のある演技ができる良い演者さんですね!
そしてなによりもベテラン俳優陣の厚み!
國村隼さん、舘ひろしさん、そして田中泯さんetc.
素敵なおじさま方を拝見できる作品でした♪
19年8月5日 劇場にて鑑賞
よかった
大阪まで行って社長の鶴瓶が会ってくれないとか、資料を見せてもらえないとか、つまらないところでドラマが展開されていてイライラする。もっと先の複雑で奇怪なところを見せてもらいたい。大和推進派の田中泯が、敢えて大和を沈ませることで国民や軍部を絶望させて終戦に持っていくと主張して、主人公も納得していたのだが、全然納得できない。もっと開戦を避ける方に全力を傾けろ。実際大和が沈んでも終戦しねえし。本気で言ってんのか。山本五十六が全然調査に協力しないし、主人公も協力を仰がないのもどうなんだ。
そうは言っても長い上映時間が割とすぐ終わったので楽しかった。戦闘場面のCGがよかった。
皮肉
戦争回避のために戦艦の建築費用の不正を暴こうとするお話。
数学の力で戦争回避できると信じて難題に挑むが、最終的にはある理由で戦艦が必要だと理解してしまい、結局は不正は暴くも建築は避けられなかった。
ただその難題に挑む過程で、主人公の数学者と軍隊に配属中の助手が成長していくのは面白かった。
敵側の思想もしっかり設定されていたし、ストーリーは面白いが、最後の戦争は避けられないくだり部分をもう少し説明があっても良かった。
演技派俳優陣が光る重厚なエンタメ作品
戦艦大和の設計を巡るエンタメ大作。
まぁ数学の天才って前提は良いのだけれど、あの帰納法的算出方法で必要なのは、数学よりも造船に関する知識・理論と統計学、それまでの金利や物価に関するデータ数でしょ。
などという無粋なツッコミはやめておきましょう。この映画の見所は、舘ひろしさんや田中泯さんらベテラン俳優陣の演技なのだから。軍上層部の権力闘争と秘められた真意。
結局、誰も戦争など望んでいなかったのに太平洋戦争に突っ込んでしまった。その無力感に襲われるラストも秀逸でした。
設計者たるもの
クライマックスの会議の場面が良かった!
戦艦大和、、、
途中でフィクションやしマンガやな
思たけど見入りました。意外に面白かった!
後で原作漫画あること知り、読みたくなった。
菅田将暉と柄本佑
この二人だけで観てられるね!
史実を応用したスマートで、"もっともらしい"作品
"戦艦大和"を切り口としたエンターテイメント作品。
原作は、「ドラゴン桜」の三田紀房による同名漫画。史実ではなくフィクションで、1930年代の日本が軍拡路線に進む中、世界の政治背景や、当時の大日本帝国海軍の軍備や技術力に関する事実を、"もっともらしく"楽しませてくれる。
漫画からの切り抜き方は実にスマートだ。これは戦意高揚の象徴となる"戦艦大和の建造阻止ドラマ"である。
オープニングを飾る、戦艦大和の撃沈シーンは、「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005/2007/2012)や、「永遠の0」(2013)の山崎貴監督と白組によるVFXで、さすが安定の仕上がり。
菅田将暉が、主人公の天才数学者・櫂直(かい ただし)を演じる。"学生"で"頭脳明晰"な役柄という意味では、コメディだったが「帝一の國」(2017)を彷彿とさせる。
1930年代、急速に航空技術が進み、現代に通じるミサイル技術などの萌芽が見られていた。
海軍少将の山本五十六(舘ひろし)は、これからの戦争は航空機が主体になり、巨大戦艦は不要になると考え、"対航空機戦に優れた空母の時代が来る"と予見していた。
しかし、平山忠道造船中将らの計画している巨大戦艦大和の建造案は、不当に安価な見積もりで、決定会議を通そうとしていた。
山本五十六は、戦艦大和の莫大な建造コストを算出し、建造計画の不正を暴くべく、天才数学者・櫂直を海軍にスカウトする。
"西の湯川(秀樹)、東の櫂"と呼ばれるほどの櫂は、100年に1人の逸材と評され、また"測りマニア"である。
軍事最高機密である、戦艦大和の設計図や計画情報は厚いベールに包まれ、一切のデータを得られない。さらに海軍内で妨害工作も行われるなか、櫂は持ち前の"測りマニア"の資質と、天才的な発想力で、戦艦大和の真の姿を計算する。
原作では、戦艦大和だけでなく、新型戦闘機競争試作や潜水艦、和製ジェットエンジン開発のエピソードなど、天才・櫂直のキャラクターがもっと楽しめる。
なにごとも"測ること"で、その存在をとらえる櫂は、"数字は嘘をつかない。数字こそが真の正義"と言う。
しかし数字に明るくない人は、数字で騙しやすいことも、また"真理"だったりする。本作の"もっともらしさ"も、史実を応用したトリックプレイみたいなもの。誰も劇中に出てくる"数式"なんて見ていないだろうし。
まったく関係ないが、最近、政治アナリストの伊藤惇夫氏がテレビで発言した名言、"数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う"が頭をよぎったりして・・・。
(2019/7/26/TOHOシネマズ日本橋/シネスコ)
幅広い世代に見て欲しい映画
菅田将暉さんがTV番組で、戦争の実体験者から話を聞けるのはあと十数年だから僕たちが理解して伝えないと、と仰っていた事が伝わった。
冒頭の米軍パラシュート場面が物語の本質にあると感じた。
最後の櫂直の涙が絶妙のタイミングで、負け方を知らない日本人への切ない思いが伝わってグッときた。
菅田将暉君と田中泯さんのシーンが胸アツ。
フィクションだそうだが、櫂直の思いが込められているかのように思う。
エンターテイメントではあるけれど、戦艦でありながら闘うことなく沈没する運命を、今の時代に振り返る良い題材として、広まって欲しいと切に願う。
哀れなる天才
戦艦大和の誕生を巡る歴史フィクション
櫂直は素直な心で日本を守ろうとした青年
山本五十六は空母で米国攻め
平山造船技師は、最終的に大和を依り代に日本の
調子に乗った心を折ることで結果的に救いたいと
言いつつ、それは櫂から数式を引き出すための方便とも解釈できる
結局世の中怖いのは天才ではなく、執着ある
人心掌握に長けた連中なのがよくわかる映画
ほんと、みんなもっとピュアに生きれないか
櫂みたいに。
何度も驚かされた
冒頭の戦艦は大和なのに大和の製作を阻止する内容
では主人公の反戦はくじけたのか?
何度もひっくり返されるストーリーだった。
主人公が勝ち取った『正しさ(数字)』は『戦争』という思惑には太刀打ちでき無いのかと思わせた。
技術屋経験者はちょっとグッとくる(戦艦等詳しい方は萎えるかもしれないが)心意気が後半出てきたり
『日本がこれから進む戦争に引導を渡す為』の戦艦なのだ
と分かったときは震えた。
ぜひ映画館で観てほしいと思う。
引き込まれた‼️
冒頭部分に戦争のシーンがありましたが、ほぼ戦争のシーンはなし。
それでも、その中に渦巻くそれぞれの思惑と、純粋にミッションを果たそうとするなかで、ただの数学バカではなくなっていく主人公に単純に引き込まれました。
純粋なものや本当の力(権力ではなく)には、だまっていても人はついてくるなぁなんて思ったり…。
海外ドラマのナンバーズをちょっと思い出したり(笑)
最終会議で、ただ決定を覆しただけでは終わらず、そこに新たな読みがあったり。
でもいつの時代もああいう人が多く国を動かすんだろうなと思いながら、戦争が起きない世の中を切望した作品でした
ラストに心震えた
久々に戦争に関連した映画を見ました。プロローグでは、言葉にできる心持ちがありません。戦争の痛々しいさを痛感しました。
この映画は、端的にまとめると戦艦製造費の虚偽の不正を暴き、次の戦争やその先の将来の日本のために大和を造るストーリーでした。
ラストちょい前で平山が「日本は負け方を知らない」から一人だけになっても戦い、そして滅びる。そうならないために、日本人を目覚めさせるために、これまでにない母艦に日本の象徴や雅称である「大和」を背負わせ、大和が大海に沈むことで、日本が負けたことを理解させようとした。という旨のセリフを放った時、心が震えた。平山がこの映画すべてを掻っ攫ったといっても過言ではないだろう。
もっと言いたいことがあるが私の表現ではペラッペラな映画に捉えられてしまうのでこれまでにしたい。言葉ではとてもわかりづらいと思うので、是非見てほしい。
終戦記念日のまえに、、、
終戦記念日前ということと、菅田将暉さんが好きなので鑑賞してきました。
鑑賞後思ったのはやっぱり戦争は良くないということ。
でもこういう人達が居てくれたらからこそ今の日本があるということも事実で、複雑な気持ちになりました。
あとは映画後半の、平山の戦艦大和を設計した思いに感動しました。
日本の象徴となる戦艦大和を作り、その戦艦が沈没すれば日本は暗い戦争から目覚めれる。負けを認めれる。
その時の平山は櫂に言っているようで、鑑賞している僕らに伝えてると思いました。
戦争は2度としてはいけないと思えました。
菅田将暉さんと演技も相変わらず上手で数学大好きな
変態ぶりを見事に表現していました!!
終戦記念日前に見れて本当に良かったです
考えさせられる話
原作未読です。
予告では菅田将暉の演技が帝一の國を彷彿とさせてコメディ感強いのかなあと感じていましたが最初から最後まで真面目で一人一人の台詞に考えさせられる話でした。勿論予告通りクスッと笑えるシーンは度々ありますからメリハリついて良かったと思います。
最初のシーンから迫力が凄くて当事者や遺族のことを思うと胸が痛みました。そこから過去を遡るようにして話が始まり、主人公が巨大戦艦の製造を阻止しようと展開されるストーリーが面白ければ面白いほど、結果製造され沈没する事を知っている私たちはどんなどんでん返しが待ってるのか期待半分不安半分で展開を見守ることになります。
予想を上回るどんでん返しのさらにどんでん返しがあり後半も飽きさせませんでした。
とくに平山中将の台詞には色々考えさせられたし「負け方を知らない」という言葉は刺さりました。平山中将の考え方や結果選んだ方法に賛否あるにせよ、一理あると思わされたし、山本五十六側にも裏がある演出がそうだよなあ、そういう一面もあるよなあと考えさせられました。
呉の大和ミュージアムに大和の模型目当てに行ったことがありますが特に戦艦好きなわけではない私でも大和には惹かれる何かがあります。とくに理由を考えたことはなかったのですがこの映画を見て惹かれる理由が分かった気がしました。
戦争映画を見るといつも感じますが一方の意見だけ聞いててもダメだしいろんな意見を聞いて考え続けなきゃいけない問題だなあ、と。先人たちが残した偉業にせよ負の遺産にせよ、そこから学んでいかないとなあ。
戦艦 大和
大和と日本を重ねて涙する主人公。日本を愛しているが故に時代のどうしょうもない絶望へと突き進む流れにあがなえない虚無感。既に過ぎ去った歴史ではあるが目を背けることができない現実。しかも誰も日本を愛するが故に間違いに気ずかずに突き進む崩壊への道。現在の日本の状況と似てるように感じたのは私だけでしょうか?
奥野氏
面白かった!!菅田将暉が流石だったし、柄本佑も可愛くていいバディになってたー。
戦艦の本当の狙いを知った時、鳥肌が立ちました。結局戦争は止められないけど、数学で日本を救おうとしたということだね。。戦争ものは全く見ないし知識もあんまりなかったけど人があまり死なない(死ぬけど)から見やすいかも。
しゃべくりとannを見ていた身としては、奥野氏!!えもたすーー!!!ってなって、何度か笑いそうになった。ギャップすごいです。
数学も彼らの負け戦も、嘘偽り無く美しい
戦艦大和は悲劇の戦艦だ。
しかしその偉容は惚れ惚れするほどカッコいい。幾度となく映画などの題材になり、アニメになって宇宙へ飛び立ったり、今も尚日本人の心を魅了し続けているのも分かる。
間違いなく、世界最大、世界最高峰の戦艦だ。
だが、戦艦大和が建造された頃、戦争は艦隊戦から航空戦へ。図体ばかりデカイ大和は格好の標的。
劇中でも言われていた通り、無知な国民と好戦的な軍部に戦争に勝てると妄想を抱かせ、それと共に海の藻屑へ…。
果たして、戦艦大和は何の為に造られたのか…?
建造を巡って、軍上層部も意見が真っ二つに対立。
が、どうも賛成派に分がある。
空母より巨大戦艦の方が低い予算で造られるなんておかしい。
これには何かある。何かが…。
山本五十六の命により、一人の男がその隠された疑惑に迫る…。
建造の合否を決める最終会議までの2週間で、疑惑の予算の本当の予算を算出せよーーー。
今のようなスーパーコンピュータも無い時代、普通の人間の計算力では到底無理。普通の人間には。
帝大の数学科にかつて籍を置き、100年に一人と言われた数学の天才。
美しいものを見たら、計りたくてうずうずしてしょうがない、本人曰く“普通”の男。
櫂直(かい・ただし)。
山本五十六など周囲の登場人物が実在なので、彼も実在の人物と思いがちだが、完全なるフィクションの人物(と物語)。ちょいと調べてみたが、特にモデルとなった人物も居ないとか。
話も実話級にリアルで、櫂自身も本当は実在なんじゃないかと思うくらい面白味のある人物。
天才と変人は紙一重と言うが、まさに彼の事。
数学の事に関しては、本当に大天才。
人間コンピュータ並みの計算の早さ、難しい数式もスラスラ書き、説く。『イミテーション・ゲーム』でも思ったが、天才の考える事はよう分からん…。
その一方、先にも述べた通り、美しいものを無性に計りたがり、何でもかんでもすぐ計算しようとする。
奇人、変人、変わり者、或いは“数学バカ”か“数学キチ○イ”。
でも、ただの変人×天才ではない。
元々軍人ではない。ある理由から、軍人や戦争を心底嫌っている。
故に、軍規などに縛られない。
度胸があり、物怖じしない性格。
なかなか心に響く台詞も多い。
世の中に一人くらい、彼のような人物が居て然るべきと思わせる不思議な人間力。
数学で戦争を止めようとした男。
戦艦大和建造に反対した男。
それらと対しながらも、戦艦という“美しい怪物”には魅せられた男。
真っ当さとアンバランスのユニーク過ぎる人物像。
そんな人物を見事に演じ切れるのは、今の日本映画界の若手の中で、ただ一人しか居ない。
熱演の中にもユーモア滲ませ、難解な数学用語や計算式も披露、菅田将暉の演技力と存在感はもはや若手ではなくベテランの域だ。
他キャストでは、
最近コミカルな役所が多かった舘ひろしが、山本五十六役で久々に渋い魅力を発揮。
笑福亭鶴瓶、小林克也、國村隼、橋爪功、田中泯ら豪華ベテラン勢がそれぞれ好助演や憎々しい役回り。中でも田中泯は、ラストで一気に場をさらう。
助演キャストで特に良かったのは、柄本佑。
海軍少尉で、櫂のサポート役。
当初は軍を嫌う櫂に反発していたが、櫂の熱さ、直向きな真面目さに打たれ、彼に尽力する美味しい役所。我々観客目線でもある。
実生活でも親交あるという菅田と柄本のやり取りも絶妙。
どんなに周囲から怪訝の目で見られようとも、バカにされ笑われようとも、何かに没頭する人間の姿は美しい。
櫂の真剣な姿には胸熱くさせるものがあった。
それと対比して描かれるのが、軍部の醜さ。
圧力を掛け、妨害。
全ては軍の保身。
愚かで、古い考え方にがんじがらめに縛られた体制。
こんなだから、戦争に負けたのだ。
軍上層部のほんの一部の傲慢のせいで…。
主人公たちが対しているのが、同じ日本人、同じ軍内部というのが皮肉でならない。
本作は“机上の大戦”。
戦争映画でありながら、戦争シーンは冒頭だけ。(しかしこの戦艦大和沈没の冒頭シーン、本編・CG・セット・特撮を駆使し、山崎貴監督の手腕が光り、この冒頭シーンだけでも日本の技術の向上ぶりを改めて思わせてくれるほど迫力満点!)
話はずっと軍や数学用語含む会話劇で、ドンパチの戦争映画が見たい人には不満かもしれないが、
何の何の!
確かに専門用語は小難しいが、圧力に屈せず、突破口を見出だしていく主人公たちの闘いには、戦闘シーンを見ているよりずっとスリリングで興奮!
グイグイ引き込まれ、非常に面白かった。
クライマックスの最終会議は、ちょっと大袈裟な演出&熱演でもあるが、圧巻と白熱の一言に尽きる。
もはやここまで…と思いきや、
さながら『半沢直樹』のような、土壇場の大逆転!
こういうスカッとする勧善懲悪モノが好きな人には大満足の見応えだろう。
…しかし、最後の最後で思わぬ展開に。
絶対不利な負け戦に挑み、見事覆した!…筈だった。
戦艦大和の虚偽予算の理由。
ある人物の口から発せられた○○湾の言葉に、胸が苦しく…。
そして、戦艦大和建造の本当の狙い…。
かくして大和は建造され、日本は戦争に突入。
この“机上の大戦”は、端から負け戦にしか過ぎなかったのだ。
彼らの闘いは無駄だったのか…?
本当に数学には、世界を動かし、世界を変える力があるのだろうか…?
日本は負けた。戦争にも、各々抱いた偶像にも…。
が、信じ、抗い、変えようとした。
数学は正しく嘘偽りが無いように、彼らの闘いも。
日本の夏映画と言えば、ここ何年も主流となっているアニメーションと、かつて東宝で多く作られた戦記モノ。
夏に敗戦し、より一層戦争について考えさせされる時期でもある。
そんなメッセージ性を含みつつ、エンタメ性も充分。
毎度毎度、技術とレベルとクオリティーの高い作品を贈り続け、ヒット作や話題作が途切れない山崎貴監督とそのチームには、ちょっぴりジェラシーすら感じてしまうほど。
今夏も大ヒット作話題作続くが、現時点で今夏のベストだ。
全110件中、61~80件目を表示