劇場公開日 2019年7月26日

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「王道物語と迫力に満ちたラストシーン」アルキメデスの大戦 サブレさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0王道物語と迫力に満ちたラストシーン

2019年8月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

軍人嫌いの天才数学者が軍人に協力して、時代に不釣り合いな巨大戦艦の製造を食い止めるお話。
全体の流れは王道中の王道。軍人嫌いの主人公と誇りを抱える軍人が、互いにそりが合わないながらも徐々に距離を詰めていき、対抗者の嫌がらせを根性で解決、協力者と心を通わせて最後の難関もどうにか乗り越える…。これ以上ないほどの圧倒的な王道ストーリーである。
なんか帝一の國に似ているような気もする。主演がどちらも菅田将暉だし。

帝一の國と言えば、「マリオネット…君たちのことさ」と野心にあふれた表情で微笑む帝一のラストシーンに圧倒された。あのシーンが好きだった。そして、この映画にも同じような迫力があった。
なぜ対抗者は時代に不釣り合いな巨大戦艦の建造を主張したのか、なぜ不正や不当な圧力を行使してまで主人公たちを妨害したのか、なぜ不正を糺されても開き直ってそれでも頑としていられたのか。その答えがすべてラストシーンで明らかになる。
このラストシーンがたまらない。対抗者の信じる正義は決して狂気ではなく、むしろ巨大な狂気を止めるための苦渋の理性であったことがわかる。この理性もまた狂気ではあるが、それでも田中泯さんの怪演によって理性とプライド、そして信念の混沌として表現されている。この田中さんの迫力ある演技がたまらない!
一方で菅田さんの演技もよかった。翻弄されつつも同様の理性とプライドを持ち、それでも信念までは持ち合わせていなかったがゆえに圧倒されてしまう。そうして狼狽え、弱弱しく崩れる菅田さんの儚さよ。本当に素晴らしい。

サブレ