劇場公開日 2019年6月7日

「他に類を見ない挑戦的で特異な作品」海獣の子供 BB猫(›´ω`‹ )さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0他に類を見ない挑戦的で特異な作品

2019年6月26日
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鑑賞方法:映画館

原作は未読、公開からある程度経ち、映画のレビューをざっくり見てからの鑑賞でした。

ストーリーが難解であることは覚悟していたので、鑑賞後、様々な考察や、原作の描かれていないところなどの補完をして、ややスッキリするかと言ったところです。そうでもしなければ初見では気づけないことが多すぎます。作中の散りばめられたメタファー、キャラの意味深なキーワードを照らし合わせ、場面の切り替えを整理し、抽象化された映像演出の意図を汲み取る。2時間ずっと集中して、スクリーンや音響からの膨大な情報を処理し、即座に解釈出来るぐらい、日頃からそういった作品を見なれてないと着いていけないのが普通だと思いました。
それに、物語の幅を持たせ、深淵さや"理解できない"をあえてやっているとしても少し、独りよがりを感じます。昨今では作家にも伝える側への説明責任が求められまよね。これが自分の作品だ!見聞きすれば分かるだろ!感じろ!はもう古い考えです。ただ、万人に100%伝わる作品もどうか、ありきたり、浅はか、中身のないとされることもあります。要はバランスだと思っていて、個人的にはもう少し、鑑賞者側に優しくあってもいいのではと思いました。大衆は基本阿呆ですので、最低限のストーリーラインと3人の行動をもう少し分かりやすく描いて欲しかったです。

また、主に日常シーンの靴紐や、玄関のビール缶、仲違いしている子との和解シーン、へその緒などなど、アニメーションの定番演出も含め、あからさま過ぎというか、雑に処理したという印象を受けてしまうところもあり、違和感でした。もっとさり気なく、詩的に丁寧に表現した方がこの作品にはあっているのではと思いました。

作画などはとても好みで素敵だと思いました。キャラも原作の絵柄を尊重しつつ、よりアニメーションで表情豊かに生き生きと描かれていたと思います。個人的には鼻や目、髪の描き方が繊細で温かみを感じていいなぁと。
それに、ストーリーが頭に入ってこない程の圧巻の壮大な画面と流れるような動きと描き込みの量。監督や美術監督の方をはじめとしたスタッフさんの妥協しない、こだわりと情熱を余すことなく感じられました。海、水の表現や、味のあるCGも瞬きするのも躊躇われるほどにふつくしかったです。

久石譲さんや米津さんの曲もよく作品にマッチしていて、不気味さ、壮大さ、深淵さ、切なさなどの表現が一層伝わってきて、作品の強度に繋がっていると思います。お二人ともいつもいい仕事をされるので名前だけで安心感があります。

観て面白い、カタルシスがある作品とは言い難いですが、視覚的快楽や、自分なりの解釈、言葉の余韻などを楽しむためにまた何度か見返したいなと個人的には思いました。

そしてStudio4℃の次回作があったら是非見に行きたいと思います。
スタッフの皆さん本当にお疲れ様でした。自分はこの作品に出逢えて幸せです。

日常U