劇場公開日 2019年6月7日

「絵画のようなアニメ映画」海獣の子供 さうすぽー。さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0絵画のようなアニメ映画

2019年6月8日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

知的

難しい

圧倒された。
何故かわからないが、とてつもない感動が込み上げた。
抽象的かつ難解な話であるのに。

映画が終わった後、すぐには席を発てなかった。
あまりに映画の世界の深淵にまで潜ってしまったせいかもしれない。

出口に向かって歩いてる時、ふとスクリーンに目が入った。
そこにはまだ海獣の子供の世界があるかのようだった。
そこには何も映ってないのに。

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と言ったポエムのような文章は以上とします(笑)

ですが、言葉にならない感動が込み上げたのは紛れもない事実です。
それくらい素晴らしい映画でした!

ただ先に言っておくと、この作品はストーリー内容が非常に抽象的かつ哲学的なので、分かりやすい明確な内容を重視してる方にはオススメはしづらいです。
それくらい賛否分かれるであろう作品ですが、それでも自分はかなり好きな映画でした。

また、話の冒頭は主人公がルカという(一応)普通の日本人中学生であり、そこに「海」や「空」といった不思議な男の子達と出会うというボーイミーツガール系にも感じますが、決してティーン向けでは無いです。
ちゃんとしたストーリーはありますが、設定に明確な答えは無く、観た自分達に疑問を投げ掛ける難解なものです。

どれくらい難解かと言いますと、
恐らくドゥニ・ヴィルヌーヴの「複製された男」や去年の「アナイアレイション」に次ぐと思います(笑)

まず映像関してですが、
漫画のタッチを重視している独特な作画ですが、非常に美しい作画でした!
陸の情景は絵画のようなタッチでオリジナリティがあります。
そして何よりも、映画の象徴と言っても過言ではない海中の描写は圧巻の一言です!
予告の段階から綺麗でしたが、大画面でみるとそれ以上に美しいです。
魚達の群れやプランクトンが天の川のように繊細で、非常に神秘的に描かれています。
劇中に出てくる星空の情景も観ていてうっとりさせられました!
ペンタッチの作画でこんなにも綺麗な映像を観たのは本当に久しぶりです!
映像面だったらもう100点満点クラスなので、今のところ今年これに並ぶ映像を期待出来るのは新海誠の「天気の子」しか無いです。

キャラクターのボイスは殆どが俳優で、特に子供の演技はお世辞にも上手いとは言い難いですが、この独特な世界に上手く溶け込んでいた気がしたので後半の方から気にならなくなりました。

肝心のストーリーに関してはまだ完全に理解仕切れていない部分もありますが、描かれていたことを話しますと、
「星々と海の誕生」
「生命の生と死」
「自然の摂理と哲学」
そういったスピリチュアルな話であり、最大のテーマは「生命」です。

ですが、描かれている事は非常に壮大であり、神話のようなストーリーです。
タイトルからすると海底の中だけの話にも感じますが、実際は宇宙規模なのであまりにも大きいです。
ですが「海獣の子供」というタイトルにもちゃんと意味を持つ内容になっているので、製作者と原作者の意図がきちんと現れている作品でした!

原作は漫画だそうなのですが、この作品は読んだことが無いです。
どうやら内容の全編を2時間弱に落とし込んでいるそうなので、アニメ版「AKIRA」のように明確にされてない部分もあると思います。
そこは原作を読んで補完するか、はたまた映画の余韻に浸るために頭で考察するだけに留めるかは、これから考えていこうと思います。

この映画を一言で表すなら「1枚の絵画」です。

さうすぽー。