劇場公開日 2019年4月19日

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「本当の望みの理由に「愛」を使う」愛がなんだ つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0本当の望みの理由に「愛」を使う

2024年4月14日
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鑑賞方法:VOD

もちろん全ての男性、全ての女性がというわけではないが、男性と女性の心理傾向を探ることは出来る。

例えば「白馬に乗った王子様が迎えに来てくれる」という言葉は女性が発するものであるが、今の自分の現状を劇的に変えてくれる出来事を望んでいるといえる。
これが男性の場合だと「突然目の前に良い人が現れて自分と一緒になってくれる」にでもなるだろうか。もし良い人が現れたとしても自分の現状は、その人が現れた以外に変化がないのだ。
つまり、男性は今を維持したままさらなるものを求めるのに対して、女性は全く違う状況、違う自分になりたいと願うということだ。

もう一度書くが、もちろん全ての人が当てはまるわけではない。本作でも葉子やすみれはこれに該当しないだろう。

しかし、ドンピシャこれにハマりこんで、こじらせているのが主人公テルコだ。
自分の劇的な変化の究極形が「マモルになりたい」なのである。
テルコの望むものに自分が入ってないと指摘されるのだが、入っていないようで実は究極のところで入っているのだ。

一見「愛」について語り合う物語のようでありながら、「愛」は本当の望みに対する「言い訳」でしかない。
言い訳が都合よく機能するようにそれぞれ登場人物が「愛」について語り行動するわけだから、どこかチグハグでそれぞれ自分勝手に見えてしまうところが面白い。

そもそも「愛」の解釈などは人それぞれなわけである。
にもかかわらず実際は「愛」についてなど語っていないわけだから、行き詰まり辻褄が合わなくなれば「愛がなんだ」となるのも頷ける。

テルコ、マモル、葉子、ナカハラ、すみれ、主要な登場人物たちは誰かと誰かがどこかで半分似ていて、似ていることと恋愛感情の矢印がバラバラなことから関係性の複雑さを生み面白い。
矢印が、よくある恋愛もののように三角や四角にならないのも興味深い。矢印は常に一つの方向にしか向かないのだ。

いびつで極端な恋愛ものといえるかもしれないが「大人の恋愛の始まり方」から始まる物語は、大人ならではの面倒臭さをはらんで単なる人間関係構築の話と、「愛」を言い訳にした変身願望についてだったようにも思える。

キャストも良く、今泉力哉監督作は「街の上で」から二本目だが、本作も中々良かった。

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つとみ