劇場公開日 2019年2月1日

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「怒号の中を歩き抜ける八角」七つの会議 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0怒号の中を歩き抜ける八角

2024年3月7日
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鑑賞方法:DVD/BD

これは面白かったねえ。サラリーマンのってだけではなく大人のあるあるネタを少年マンガのノリで魅せるエンターテイメントだったね。

怒鳴りまくる大人たちの中を野村萬斎演じるぐうたら社員八角がのらりくらりと走り抜ける、ではなく歩き抜ける。
コメディのような乱れた風貌はシリアスにし過ぎないバランスを作品に生み出した。しゃべりが少々大袈裟なのも良かったよね。

それを見守るのは作品のナビゲーター担当の原島と浜本。
二人は私たちと共に八角の回りで起こる不可解な出来事を探っていくことになるが、同時にキャラクターたちのナレーションのような独白が次々と刺激的に紡がれていきハイスピードサスペンスのようだった。

作品冒頭の会議のシーンで怒鳴りまくる北川部長が居眠りをする八角に何も言わないというのは、まあ同期だからってのもあるだろうが、作品にこれから何が起こるのかわからない暗闇の状態ではなく、少し先に何が起こるのかを暗示しているので、北川はなぜ何も言わないのか?の一点だけでも序盤を面白く観る推進力には充分だったね。
しかもドラマが動き出すのはそのあとのパワハラ騒動からで、直接的には北川部長関係ないという、原島じゃないけど一体どうなってるんだ状態でワクワクしたよね。

不正とは正しくないこと。正しいというのが価値観や概念によって曖昧だから多数の人が正しいと判断すること。それに反する事が不正ならば、作品内で起こる不倫や会議中の居眠りだって不正だし、人のあとをつけて私生活を探るのだって不正だ。コロナ禍にマスクをせずに買い物の列に並んだりとかね。独り暮らしでないのなら服を脱ぎ散らかしたりだって不正だろ。
大小様々な不正があり、誰もが何かしら不正を働いている中で、事が大きくなり限界突破するのは力を持った一部の人間が「正しい」の基準をねじ曲げて押し付けてくることにある。
力が人を狂わせる作品は多いけど、これもそんな作品の一つかなと思った。

すごく面白かったんだけど難点をあげるなら、映画としての風格が足りなかったね。
演出とかお金のかけ方とか、とてもテレビドラマっぽい。
地上波放送があればもう一度観たいが、スクリーンでリバイバル上映してても観たいと思わないもの。

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つとみ