劇場公開日 2019年7月20日

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「少年の強い瞳」存在のない子供たち ローチさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0少年の強い瞳

2019年8月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

主人公の少年の瞳が観客を射抜く。この映画を観ているあなたは、世界の残酷さについて何を知っているのかと終始問いかけてくる。貧困の中で生まれた少年は、絶望的な環境に自分を産んだ罪で両親を告訴する。子は親を選べない、誰も産んでほしいと頼むことはできない。生を受けることは素晴らしいことだと余人は言うかも知れないが、この過酷さを前に同じことを言えるのか。
主人公を演じる少年は、シリア難民だそうだ。10歳のころから家族のために働いていたところを監督にスカウトされ出演することになったそうだが、この少年の全身から発する、本物の過酷さを知るオーラがこの映画を支えている。少年は絶望的な状況でも生きることを諦めない。その瞳にはなんとしても生き抜くんだという強い決意が宿っている。
近年、レバノンから傑作映画がいくつか生まれているが、これはその中の最高峰の一本だ。

杉本穂高