劇場公開日 2020年3月6日

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「せつない」ジュディ 虹の彼方に 森のエテコウさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5せつない

2020年4月4日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

これを映画館で観てから13日。先週末には都心の映画館がついに休館になった。そして今週末も。これは戦時中よりひどい状況ではないか?!
そんな社会状況もあって、この作品の印象はとても重い。
非凡の才能。それがショービジネスに取り込まれる時、本人の尊厳と生活は後回しにされる。というか、ないがしろにされる人生。気がついたときには手遅れだ。
私は一時間だけ、○○○○を演じているのよ!そう言って自分を保ち、守るしかない才能豊かなタレント。

『オズの魔法使い』には明るい楽しいイメージしかなかったが、こんな裏事情があったなんて。これは現場からの内部告発、あるいは懺悔のような内容ではないか。ハリウッドが蓋をしてきた事実を元に書き下ろされたエンターテイメント。
それを体現したレニー・ゼルウィガーは捨て身の演技でアカデミーをもぎとった。
晩年のジュディ・ガーランドを全く知らなかった身としては、本編の本人役がどれ程似ているのか否か、判断のつかないところだが、鑑賞後日、動画サイトで本人の映像を観ると、そのイメージを作品は良く仕立て上げていると思った。

遥か昔、トム・クルーズの相手役に素人で抜擢されたレニー・ゼルウィガーは、今回とてもがんばった!

しかし、10台半ばでその才能を世の中に見初められ、タレント化されていく事の残酷さよ。
その才能は現金化され、然るべき大人によって搾取される。その才能が優れていればいるほど。
それはいつの時代にも起こり、ある意味その犠牲者によって、世の凡人は癒される。すべてのタレントがそうとは限らないが、世間を良く知らないうちに世に出される若者に、自己の意志で渡世をコントロールしていくことは、無理難題というものだ。
この作品は、ハリウッドが己を振り返り、罪を償おうとする聖なる面と、己のゴシップさえエンターテイメントにしてしまおうとする邪の両面を兼ね備えた一筋縄ではいかない奥行きを感じさせる。

しかし、ジュディ・ガーランドって、ライザ・ミネリのお母さんなんだよな。外野はどうあれ、やはり血は争えないということか。

これまでの、そしてこれからの数多のスターに乾杯!!

森のエテコウ