劇場公開日 2020年3月6日

  • 予告編を見る

「この人生」ジュディ 虹の彼方に yukarinさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0この人生

2020年3月21日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

ホントに知らなかった、あの歌を歌っていた人の、この人生を。

だから、始めは生き方や、子供のことについて、全く共感出来なくて。
子供と暮らしたいなら、生活を安定させなくてはダメで、ホームレス状態で負債を抱えて、子供と暮らしたい、はないだろうって。
子供たちを本当に愛してるなら、そういう環境を自分が今作れないなら、元夫に託すのが、結果的には子供のためになると思えないかなって。
でも、観ていくうちに、そんなこと、彼女は、よく分かってるんだろうと。
まともな子供時代のなかった彼女自身こそ、誰よりそれを望んでいたはずで、でも、それを提供出来ないことへの苛立ち。
今なら確実に麻薬扱いで常習性のあるNGな薬を、子供の頃から服用し続けていた彼女。
心身ともに壊されてきたように思えた。
業界から離れたいと思ったとしても、それしかしてこなかった彼女にそれはとても難しくて。
プロ意識が足りないとすら思える仕事の仕方も、もうそのすべてが、彼女の混沌とした心身と、葛藤のさなかにあるようにしか見えてこない。

ラストは、とても胸を打たれるシーンで、思わず目頭が熱くなった。
その時、脳裏に浮かんだのは、私たちはジュディを「消費」し続けただけなのではないだろうかという考え。
歌を聴きたくて、その歌を絶賛し、でも、壊れかけた彼女の人生が表面に出て来ると批判する。
ステージでの瞬間瞬間の客席との化学反応は胸を打つし、彼女もそれに支えられてステージに立ち続けたのだろうけれど、それだけを与えて、あとはただひたすら消費しただけ。
そんな考えが頭をよぎった。

ロンドンのステージから、僅か半年後に彼女は他界する。
睡眠薬の過剰摂取によるもので、自殺なのかも分からないそうだ。

子供の頃から眠れなかった彼女
何度も自殺未遂を繰り返した彼女
その真実は彼女にしかわからない
もうどうでもよくなってしまったのかもしれないし、眠れるならなんでもよかったのかもしれない
でも、でも、もし、もしも、ただ、本当に、ただただ眠りたかっただけだったとしたら

あまりにも切ない

yukarin