劇場公開日 2018年12月21日

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「貴重な音源に感動」私は、マリア・カラス 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0貴重な音源に感動

2018年12月28日
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鑑賞方法:映画館

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 マリア・カラスと言えば、二十世紀最高のオペラ歌手という評判を覚えているが、流石に生の歌は聞いたことがなく、サラ・ブライトマンが一番上手いと思っていた。
 しかしこの作品でマリア・カラスの音源に触れ、その伸びやかで無理のない、しかも雑味のない声を聞くと、この人こそ最高の歌手だと認識を新たにした。彼女の歌声は高くても低くても、どこまでも人の声であり、歌詞を通じて語りかけてくるようである。
 コロラトゥーラで最近名前の出てきた日本人歌手の歌は、よくそんな高い声が出るものだと感心こそするが、感動するものは何もない。しかしマリアの歌は、まず感動がある。聞いていて心地がいい。表情も豊かで、これぞ本物のオペラ歌手の歌だと太鼓判を押したい気持ちになる。
 ドキュメントの構成もよくできていて、恋と芸術に命を燃やした彼女の人生と、歌と真っ直ぐに向き合うその姿勢がストレートに伝わってくる。大した女性である。こういう女性が生きた二十世紀という時代は、やはり人類全体が上り調子だったのだろう。
 二十一世紀は下り坂の時代である。マリア・カラスはもう出現しないだろう。不世出の大歌手だったのだ。

耶馬英彦