劇場公開日 2018年12月21日

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「オペラの世界に生きた歌姫」私は、マリア・カラス shironさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0オペラの世界に生きた歌姫

2018年12月15日
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鑑賞方法:試写会

情熱的で波瀾万丈な彼女の人生は、そのままオペラの題材になりそう。

歌の映像もふんだんにあり、普段あまりオペラを観ないド素人の私ですら、彼女のドラマティックな表現に感動しました。(T_T)
一曲聴くだけで魅了される歌声は、複雑で繊細な心の機微の表現が素晴らしく
愛する喜びを歌いあげるなかには、愛するがゆえの不安があり、愛するがゆえの嫉妬や怒り、愛するがゆえの狂気が垣間見える。
これは病みつきになります。

子供の頃、厳しい母親から歌の英才教育を受け、「反抗するなんて恐ろしい事は出来なかった。」とご本人が語っていましたが、
年齢を偽り、若くして入学した音楽学校の恩師のインタビューでは、誰よりも早く学校に来て、誰よりも遅くまで残っていた、努力家の姿が浮かびあがります。
頭が良く勘どころも良い彼女は、指摘されたところを翌日には完璧にマスターしてくる優等生。
貪欲にオペラを吸収していく彼女は、リアルな人生経験を積む前に、オペラを通して愛を知り、オペラを通して悲しみを知り、オペラを通して人生の喜怒哀楽を知ったのではないでしょうか?
だから彼女の人生は、オペラの主人公のように情熱的でドラマティック!そんな風に思えました。

オペラのような激しい生き方は、得るものが多いぶんだけ失うものも多く…
けれども彼女が感じた喜びと悲しみ全てが、また歌へと還元され、私達の心を震わせる。
不幸で幸せなスパイラル。
古今東西、歌姫と呼ばれる人達は皆、歌の女神のスパイラルにハマった生贄のように思えてなりません。

高みを目指して歌っていた若い頃の歌声も素晴らしいですが、
年を取ってからの“観客からの愛を感じて、歌で愛を返していく”ステージが素晴らしかった。
オペラと共に生きた人生で、彼女が欲していた愛は得られなかったかもしれないけれど、彼女は世界中の人々から愛された。
確実に愛し愛される人生だったと思えました。

そして、時代を超えて彼女の歌は生き続け、アジアに住む私なんかの心まで震わせています。

#マリアカラス#私は、マリア・カラス

shiron