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◆告白小説、その結末

観客の中にある既視感に敢然と挑戦を試みる、終幕間際の"捻り技"
  創作意欲が枯渇した人気作家、デルフィーヌの前に、愛読者だと言って近づいて来た謎の女、エル。偶然なのか、向かいのアパルトマンに住まい、直後に家主から追い出しを食らったと説明し、同居するようになったエルは、やがて、デルフィーヌを執筆に向かわせるため、すべての雑音を遮断する。PCのパスワードを巧みに聞き出し、デルフィーヌのクライアントや大切な友人たちにまで、断りのメールを勝手に送りつけてしまうのだ。

  ロマン・ポランスキー監督の最新作は、そんな風に端から人物の背景とその目的が明らかに怪しげで、否が応でも観客の推理欲を掻き立てる。エル役のエヴァ・グリーンがデルフィーヌの前では笑顔なのに、彼女の視線が外れた途端、得意の"猟奇顔"に豹変する時の戦慄。まるでマネージャー気取りのエルが、デルフィーヌの次回作にまで口を出し、徐々に威圧的になって行くプロセス。エマニュエル・セニエ演じるデルフィーヌが、エヴァとは逆に鈍臭く、次第に彼女の支配下に置かれていく歯がゆさ。さては、作家と熱狂的ファンが対決する例のアレか? と思いきや。。。

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  そもそもなぜ、エルは向かい側に住んでいたのか? なぜ、都合よく越して来たのか? さらになぜ、デルフィーヌが落ち込むタイミングを見計らうように携帯を鳴らしたのか? そしてなぜ、映画の後半では自らのドラマチックな半生をデルフィーヌにさらさらと語り聞かせ、萎えた作家魂を刺激するのか?

  スランプに陥った作家の苦闘と再生を、デルフィーヌvsエルという関係性をベースに綴る映画は、同時に、クリエイティブの世界に便宜上引かれた、ノンフィクション(実話)とフィクション(創作)を分断する境界線の曖昧さを浮き彫りにする。

  そして、終幕間際には、大方の予想を裏切る究極の捻り技が待ち受ける本作は、かつて観たこの種のジャンル映画のどれとも異なる深い後味を残す。観客の中にある既視感に敢然と挑戦を試みた今年84歳のロマン・ポランスキーには、映画ファンとして、迷うことなく技ありを贈呈したいと思う。

(清藤秀人)


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