劇場公開日 2018年10月6日

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「映画というより上質の文学」教誨師 N.riverさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0映画というより上質の文学

2021年11月28日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

本作で「きょうかいし」という言葉を知る。

幾人かの死刑囚と面談する主人公。
その中でも印象深いのが、読み書きのできない浮浪者だった。
人生を紐解けばそれこそ神かと与え、苦難を甘んじて受け、
それも垣間見える知的? 障害のせいだとして、
だからこそ文字を学びなおして再構築された純粋な思考の果てに得た
(と、わたしが理解したに過ぎないが)
聖書からの文言は、この人物こそ宗教家かと響いた。
次にあげるなら差別主義の若者だろうか。
否応なく、死刑制度の是非を考えずにはおれない。
他の囚人らも印象深く、だれもが己が命を守るためサバイブしている人の当然の姿を、
究極の環境におかれたせいでなおさらいかんなく発揮。
たとえ死刑囚だとしても健気でか弱く、憎み切れていない。

そこへ主人公の過去も絡んだ時、
その視点を通して自らを振り返った時、
甲乙も上下もなく、いずれも等しく哀れで救うべき命に過ぎないのだと考えさせられた。

脚本そのものが文学性に満ちており、
なぞる演者も全てが珠のごとく光る見ごたえたっぷりの1本だった。

N.river