劇場公開日 2019年9月20日

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「人と人の幸せな出会い」アイネクライネナハトムジーク 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人と人の幸せな出会い

2020年4月7日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

楽しい

幸せ

萌える

原作は、斉藤和義と伊坂幸太郎の交流から生まれた恋愛小説。(原作は未読)
斉藤は音楽と主題歌も担当、脚本は伊坂作品を多く手掛けてきた鈴木謙一。
監督は、恋愛映画の俊英、今泉力哉。
まるで劇中さながらの交流や繋がり。それは本当に作品にも表れている。
ちょっぴり切なさ滲ませつつ、最後は心温まって幸せな気持ちに。
この“出会い”に、心から素直に見て良かった!

(尚、この覚えづらいタイトルは、ドイツ語で“ある小さな夜の曲”。モーツァルトのクラシック名曲の題にもなっている)

舞台は、仙台。
街頭アンケートをきっかけに出会った会社員の佐藤と就活中の紗季。
佐藤の大学時代の友人である一真と由美夫妻。
由美の友人で美容師の美奈子と、彼女の常連客の弟でボクサーの小野。
佐藤の先輩で妻に逃げられた藤間。

10年後。
高校生になった一真と由美の娘・美緒と、彼女と互いに密かに想いを寄せ合う同級生の久留米。
美緒の友達の藤間の娘、亜美子。
付き合い始めて10年。佐藤は紗季にプロポーズを決意する。
そして、各々の出会いが始まったあの夜と同じく、小野も再び世界タイトルマッチに挑む…!

出会い、一期一会。
小さな奇跡、幸せ。
それを表すのにぴったりな群像劇。
時を経て、幾つもの出会いと想いが、心地よいくらい紡ぎ、繋がっていく。

幸せを見出だすには、悩みや苦境もある。
とにかく不器用で、恋愛に縁がない佐藤。そんな時出会い、その後思わぬ所で再会。晴れて付き合う事となり、10年後プロポーズするが、紗季の応えは…。
佐藤も大学時代憧れていた美人の由美。何故かいい加減な一真と結婚。娘の美緒にはそれが謎。難しい年頃で、父親に反発。
同級生の久留米もまた同じく。相手にペコペコしてばかりの平凡な父親のようになりたくない。
かつてチャンピオンになった小野だったが、その後スランプに。もう一度返り咲く。これまで闘ってきた相手や大切な人、家族(=結婚した美奈子)の為にも。

なかなか相手に届かぬ想い。
それは切なく、胸苦しく。
でも、それを乗り越えた時、心底感謝する。
この想いと出会いに…。

どのエピソードも魅力的。
メインエピソードは勿論、その周囲のエピソードも。
佐藤の先輩や難聴の少年(クライマックスの小野の試合で繋がる)、「こちらのお嬢さん、どの方のお嬢さんかご存知で…?」(久留米がラストで父と同じ撃退法を)など、サブエピソードも効いている。
ミステリー作家ならではの巧みな展開、それを纏めた脚本。後々響く台詞やシチュエーションも見事。
斉藤和義の歌や音楽が温かく包み、勇気付ける。
今泉監督の恋愛描写はどうしてこうも、時に胸にヒリヒリ突き刺さり、時にしみじみ染み入るのだろう。

エピソードも魅力なら、それを演じたキャストとアンサンブルも魅力。
映画、TVドラマ、CMと4度目の共演となる三浦春馬と多部未華子は安定カップルだが、やはり周り。
一真役の矢本悠馬のウザいけどイイ奴キャラ。居酒屋で働くあるシーンは、家族を守るカッコいい男の姿。
冴えない先輩だけど、優しくいい人の藤間役の原田泰造の好演。
美緒役の恒松祐里の複雑なお年頃とキュートさ。
登場人物が皆、愛おしい。

素敵な出会いって、運命や自分に訪れた人生の事じゃない。
あの時、君に出会えて、君で良かったと心から思える出会い。
人と人の出会いって、何よりの奇跡、幸せ。
そんな出会いに出会いたい。

近大
marimariパパさんのコメント
2021年5月25日

近大さん
共感&コメントありがとうございます。近大さんのレビューしみます。とってもいい映画ですよね。ひとつあえて挙げると、このサイトの今泉監督の写真、もっとほかのなかったのかな⁈って感じです。

marimariパパ
CBさんのコメント
2020年4月7日

もう、言いたいことを全部書いてくれている(もちろん、それ以上のことまで教えてくれる)このレビュー、好きです!

CB